日経平均の戻り基調はまだまだ続きそうな印象
先週末5月28日(金)の日経平均株価終値は2万9,149円となり、節目の2万9,000円台を回復して取引を終えました。前週末終値(2万8,317円)からは832円高、週足ベースでは2週連続の上昇です。
今週の株式市場は、「月またぎ」で6月相場入りとなりますが、引き続き日本株の戻りをうかがう相場展開となるのでしょうか?
早速、いつもの通り、足元の状況から確認します。
■(図1)日経平均(日足)とMACD(2021年5月28日取引終了時点)
あらためて先週の日経平均の値動きを振り返ると、週を通じて戻り基調となりました。
株価水準的には、2万8,500円の攻防から、週末のいわゆる「窓」空けによって一段高となり、2万9,000円台に乗せたほか、上値の目安とされていた25日移動平均線も一気に上抜けたことになります。
また、微妙ではありますが、5日移動平均と25日移動平均線による「ゴールデン・クロス」も出現しています。
さらに、ローソク足の並びを見ると、5月18日から陽線が9日連続で続いています(途中にある十字線もわずかに陽線になっています)。それだけ、買い意欲の根強さを示しているわけですが、実は陽線がここまで続くのは約22年ぶりです。
こうした値動きによって、株価は急落前の水準を取り戻しつつあるわけですが、次の焦点となるのは、射程圏内に捉えた75日移動平均線を超えることができるかです。順調に超えることができれば、直近の高値どうしを結んだ線をトライしていくことになります。
下段のMACDも、シグナルを上抜けるクロスが出現し、0円ラインを目指すような格好ですので、戻り基調は「まだまだ」続きそうな印象を与えています。
上昇がそろそろストップしそうなサインも
その一方で、戻りの「そろそろ」感も顔をのぞかせています。
■(図2)日経平均25日移動平均乖離率のボリンジャーバンド(2021年5月28日取引終了時点)
上の図2はここ何回かのレポートで紹介してきた、25日移動平均線乖離(かいり)率のボリンジャーバンドです。
上の図2の赤い線の動きは、日々の25日移動平均線乖離率の推移を示していますが、先週末28日(金)時点の値はプラス1.74%となり、図2の+2σ(シグマ)であるプラス1.67%も超えてきました。
今年に入ってからの25日移動平均線乖離率は+2σ辺りで戻りが止まる傾向があり、これまでの傾向を踏襲するのであれば、目標達成によって上昇がストップする可能性があります。
また、週足チャートで見ると、日経平均は13週移動平均線でいったん上値が抑えられているようにも見えます(下の図3)。
■(図3)日経平均(週足)とMACD(2021年5月28日取引終了時点)
また、下段のMACDについても、下方向への意識がまだ強い状況です。
そのため、今週は2万9,000円台回復による戻り待ち売りをこなして、買い上がれるかが注目され、日本株の出遅れ修正の強さが試されることになりそうです。
中期的な株価の目安はどうなる?
出遅れ修正の強さが確認されれば、図2の25日移動平均線乖離率のボリンジャーバンドの向きが変わり、プラス2σや1σに沿って、乖離率が上昇していくことになりますが、それに伴い、中期的な株価の目安も修正していく必要が出てきます。
■(図4)日経平均75日移動平均乖離率のボリンジャーバンド(2021年5月28日取引終了時点)
上の図4は75日移動平均乖離率のボリンジャーバンドです。図2の25日移動平均線よりも中期的な視点で捉えようとするわけです。
足元の75日移動平均線乖離率は▲1σのあたりに位置していますが、今年の2月以降、75日移動平均線乖離率は▲1σと▲2σを往来しながら水準を切り下げてきたことが分かります。
今後も戻り基調を描くのであれば、株価は3カ月ぐらいの時間軸で、MAや、+1σ、+2σをめざしていくことになります。先週末28日(金)時点で計算すると、75日移動平均線は2万9,246円ですので、MAで3万61円、+1σで3万1,340円、+2σで3万2,618円となります。
反対に、下落に転じた場合は▲2σへ向かうことになり、こちらも28日(金)で計算すると、2万7,502円になります。
もちろん、これまでのレポートでも指摘してきたように、移動平均線乖離率やボリンジャーバンドの値は今後の値動きで変化するため、あくまでも現時点でのざっくりとした目安です。
順調に見える米株市場、雇用統計の結果には要注意
以上のように、今週の日本株も前回と同様に戻り基調をうかがう相場展開がメインシナリオと考えて良さそうですが、その一方で気をつけておきたいのが米国市場です。
■(図5)米S&P500(週足)とMACD(2021年5月28日取引終了時点)
米株市場はS&P500やNYダウが高値圏で推移しています。上の図5を見ても、S&P500は長い「バンドウォーク」が継続していて、順調に中長期の上昇トレンドを形成しているように見えます。
「死角」がないように見える米株市場ですが、長期金利や仮想通貨の動きの影響を受けやすい状況に変わりはなく、不安定さものぞかせています。
また、今週は月初恒例の米雇用統計が予定されていますが、最近は米経済指標で弱いものが散見されるようになっています。
こうした指標の弱さについては、今のところ「慌ててテーパリングの議論を進めなくてもよくなる」という感じで、ポジティブに受け止められていますが、今回の雇用統計や他の指標の結果が悪かった場合、「もしかしたら、思っていたよりも景気回復が遅れているのではないか?」という見方が浮上する可能性もあり、金融緩和の継続性と、実際の景気の強さとの間で、市場心理が揺れ動く展開も考えておく必要がありそうです。
ちなみに、相場のサイクルでは、コロナショックで底打ちしてからの上昇トレンドが先週末で62週を経過しましたが、前回の底打ちから天井をつけて、バンドウォークが崩れるまでの期間も62週でした。
相場は一定のリズムや法則で動くわけではありませんが、ムードが弱気になった際には、こうしたサイクルが意識されて思ったよりも下げ幅が大きくなるかもしれないことは、一応、頭の片隅に置いておいた方が良さそうです。
本コンテンツは情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘する目的で、作成したものではありません。銘柄の選択、売買価格等の投資の最終決定は、お客様ご自身でご判断いただきますようお願いいたします。本コンテンツの情報は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その情報源の確実性を保証したものではありません。本コンテンツの記載内容に関するご質問・ご照会等には一切お答え致しかねますので予めご了承お願い致します。また、本コンテンツの記載内容は、予告なしに変更することがあります。