よい投資信託選びの条件
よい投資信託を選ぶ条件として、「運用期間の長さ」が挙げられることがあります。ファンドアナリストの筆者も、実際にアクティブファンドの評価をする際は最低3年、理想としては5年程度の運用実績があることが望ましいと考えています。
これは、市場環境が不安定なときほど運用力が試されるため、このくらいの期間でファンドの実績を見ないと、本当の実力が見えにくいからです。相場が上昇して市場環境がよいときは、ほとんどのファンドが「げたを履かせてもらっている」状態です。
景気と市場の変動にはサイクルがあり、一定周期で好不況を繰り返すほか、いわゆる「バブル」や「大暴落」などもたびたび起きます。こうした一連のサイクルを経て、その投資信託がどのような投資判断を行い、結果として運用成績にどう反映されているかを、ファンドアナリストとして冷静に判断するようにしています。
では、運用期間は長ければ長いほどよいのでしょうか。
運用期間は長ければ長いほどよい?
運用期間の長さは、必ずしもファンドの良しあしを決定付けるわけではありません。前述した通り、一定の運用実績はあった方が望ましく、運用期間も長いに越したことはありませんが、「長ければ長いほどよい」というほど単純なものではありません。15~20年超の運用実績を持つ「長寿ファンド」が一律に優良なファンドかというと、残念ながらそういうわけではないのです。
その理由の一つが、運用体制の変更です。ファンドによっては、組成の段階から一貫して同じファンドマネジャーが運用を担うこともありますが、一般的にファンドマネジャーは、5~6年の周期で交代することが多くなっています。特定のファンドマネジャーが何らかの理由で担当から外れたとしても、ファンドそのものの運用に大きな影響が出ないよう、運用会社も、チーム制を取るなど体制を整えています。
しかし、ファンドマネジャーの交代によって、ファンドの成績が悪化したり、反対に、成績が大きく向上したりする、ということは実際に起きています。
「投信大国」米国の場合は?
「投信大国」米国の場合、運用会社がファンドマネジャーの交代や運用体制の変更について公表することが一般的です。
さらに、モーニングスターのような投信評価会社が、運用に携わる「人(People)」にまつわる情報としてデータを収集し、適宜更新しています。投信評価会社がこうした情報を集約しているのは、言うまでもなく、運用体制の変更がよい形でも悪い形でも投資信託のパフォーマンスに影響を及ぼす可能性があるためです。
しかし、日本の場合は、こうした運用体制の変更にまつわる情報公開の姿勢が運用会社各社で異なることもあり、追うのが難しいというのが実態です。
以上の理由から、投資信託のスクリーニングを行う際は、運用期間だけでなく、運用成績をはじめ、その他の項目も含めて絞り込みを行った方がよいでしょう。
ところで、楽天証券の投信スーパーサーチでは、検索条件に「運用期間」という項目を設けています。試しに確認してみると、「20年以上」の運用期間があるファンドは294本(2021年5月20日現在)ありました。
よい投資信託選びは、最初からこの294本ありきで絞り込むのではなく、まずは「5年以上~10年未満」「10年以上~20年未満」も含め、複数項目にチェックマークを入れてみましょう。効率的なスクリーニングは、まず候補を広げてから、少しずつ運用成績などを条件に加えて絞り込んでいくことがコツです。
ぜひご自分の好みに合ったファンドを見つけてください。
本コンテンツは情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘する目的で、作成したものではありません。銘柄の選択、売買価格等の投資の最終決定は、お客様ご自身でご判断いただきますようお願いいたします。本コンテンツの情報は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その情報源の確実性を保証したものではありません。本コンテンツの記載内容に関するご質問・ご照会等には一切お答え致しかねますので予めご了承お願い致します。また、本コンテンツの記載内容は、予告なしに変更することがあります。