日経平均はグロース株主導で調整幅広げ、一時は4カ月ぶり安値水準に

 直近1カ月(4月20日~5月14日)の日経平均株価は5.4%の下落となりました。4月中旬にかけて一時大幅続落となり、その後は一旦持ち直しました。

 ただ、5月に入って、ゴールデンウイーク明け直後こそ安心感が先行しましたが、その後に再度大きな調整場面が訪れました。5月11日から13日まで3日間の下落率は7.0%にまで達しています。3月以降の下値支持線を一気に割り込んで、5月13日には1月7日以来の安値水準にまで沈みました。

 4月中旬にかけての下落は、新型コロナウイルスの感染再拡大によって、首都圏における再度の緊急事態宣言発令が意識されたものとみられます。その後は、堅調な米国株動向や本格化する企業決算で良好なものが目立ったことから、下げ渋る動きになりました。

 大型連休中に目立った外部環境の悪化が見られなかったため、ゴールデンウイーク明け直後まで買い安心感が優勢でしたが、その後、商品市況の上昇や米消費者物価指数の大幅な上振れによって米国のインフレ懸念が再燃し、グロース株を中心に売り圧力が強まっていきました。

 また、12日にはMSCIのリバランスが発表され、日本株は新規ゼロ、除外29銘柄と発表されたことで、海外投資家の日本株への関心の低下につながるとも受け止められました。

 この期間の主力株の動きとしては、商船三井(9104)日本郵船(9101)などの海運株、日本製鉄(5401)JFEHD(5411)などの鉄鋼株といった、景気敏感セクターが買い優勢となりました。

 日本製鉄(5401)に関しては、新年度の想定以上の業績見通しなども買いインパクトにつながりました。決算発表が本格化する中で、アシックス(7936)ローランド(7944)などが個別に好業績が評価材料視され、西松建設(1820)など大幅増配が好感される銘柄も散見されました。

 一方、中小型のグロース株で下落率の高いものが多くなりました。エムスリー(2413)ブイキューブ(3681)など好決算発表直後に急落するものも見受けられました。

 ほか、NEC(6701)なども決算内容が嫌気されました。米ナスダックの急落場面ではソフトバンクG(9984)などもツレ安しました。

地合い悪化に押された好決算発表銘柄などに見直し余地大きい

 米国のインフレ懸念は一旦落ち着いてきましたが、米国では新型コロナウイルスワクチンの接種が順調に進んでおり、今後も経済指標の改善が続くとみられます。これにより、折に触れてインフレ懸念が高まる場面は到来しそうです。

 ワクチン接種の進展でコロナ禍からの脱却が進めば、FRB(米連邦準備制度理事会)が大規模緩和を継続する必要性は薄れます。金融緩和策の出口を意識するべきタイミングも近いと判断されます。

 5月27日にはMSCIリバランスが実施され、日本株からは8,000億円程度の資金流出といった試算もあります。27日にかけては需給懸念が高まる余地もありそうです。

 MSCIに関しては、昨年11月のリバランスでも日本株では除外が目立っていました。グローバルで見た日本株の重要性の一段の低下につながらないか懸念されるところです。

 2021年3月期の決算に関しては、前半の発表では今期業績見通しが市場コンセンサスを上回ったか下回ったかで、株価の反応が分かれる形となっていました。大幅増配や自社株買い発表銘柄などは総じて注目度が高まりやすかったですが、こうした銘柄は業績も想定を上回っているものが多かった印象です。

 後半は、地合いの悪化が重なったため、ポジティブな株価の反応は総じて乏しくなったとみられます。これらは、今後の株価の見直し余地が大きいと考えられます。10日以降に好決算を発表したもののなかで、株価の好反応が乏しかった銘柄などに注目したいところです。

 前年度の第1四半期は緊急事態宣言発令によるネガティブな影響が最も大きかった決算期です。その反動からも今第1四半期の業績変化率は高いものが予想され、今回の好決算銘柄評価の動きは持続化する公算が大きいでしょう。

 米国のインフレ懸念が完全には拭えず、グロース株の不透明感も残ることから、景気敏感型のバリュー株などが期待されます。

 今後は東証再編に向けた動きなども徐々に活発化が見込まれます。流通株式比率の引き上げに向け、個人投資家の保有を促すような施策が多く打ち出される可能性は高いとみます。

 親子上場解消などもあらためて重要な物色テーマとなっていきそうです。

コロナ禍も連続増配で乗り切った銘柄には当面増配基調の持続が想定される

 2021年3月期の決算発表がほぼ一巡しました。事業環境の改善が見込まれる中で、今期は期初の段階から増配をアナウンスする企業が多いようにも感じます。

 配当計画も出そろったことで、今回は連続増配銘柄にスポットを当てます。コロナ禍の事業環境悪化のなかも増配で乗り切った銘柄群となるため、当面は増配基調が続く可能性が高いと判断できるでしょう。

 なお、連続増配銘柄の増配ストップはネガティブインパクトが強まりやすいですが、今期は全般的にこうした懸念は小さいと言えるでしょう。

 下表は、今期の配当計画が18期以上連続での増配となっている銘柄群です。前期まで連続増配を続けていても、サンエー(2659)サンドラッグ(9989)など、現時点での今期計画が未公表や前期並み見込みのものは除外しています。

 ちなみに、1年前のリスト上位銘柄において、前期実績で連続増配が途切れたのはシスメックス(6869)が見受けられる程度です。以下では、リスト内で3%以上の高利回り銘柄のなかから5銘柄を選定しています。

平均利回り3.2%、18期以上連続増配銘柄

コード 銘柄名 配当利回り 株価 時価総額 連続増配期間 決算期 予想配当金
9433 KDDI 3.54 3,532 81,383 20期 2022.3 125.00
8566 リコーリース 3.34 3,440 1,074 22期 2022.3 115.00
9436 沖縄セルラー 3.31 4,950 1,353 20期 2022.3 164.00
8425 みずほリース 3.23 3,405 1,668 20期 2022.3 110.00
7504 高速 3.07 1,434 300 18期 2022.3 44.00
4732 USS 3.04 1,918 6,008 22期 2022.3 58.40
7466 SPK 3.03 1,318 137 24期 2022.3 40.00
2784 アルフレッサ 3.03 1,782 4,188 18期 2022.3 54.00
配当利回り平均(%) 3.20
注:配当利回りの単位は%、時価総額の単位は億円、予想配当金の単位は円。株価は2021年5月14日終値、単位は円。
注:連続増配期間には今期予想(決算期)含む。

SPK(7466・東証1部)

どんな銘柄?

 自動車部品の専門商社で、国内では業界トップの実績です。設立は1917年になります。クラッチ、ブレーキ、電装品などの機能部品、車検パーツなどを取り扱い、自社ブランドも展開しています。

 取扱点数は約3万点、国内販売先は1,500社以上で、海外も80カ国、300社に輸出しています。

業績見通し

 2021年3月期経常利益は20.4億円で前期比5.7%増益、従来の2ケタ減益計画を上回って一転増益着地となり、11期連続での増益を達成しています。新型コロナウイルスの影響で海外販売が伸び悩む中、国内販売が堅調に推移して、増益を確保する形になっています。

 2022年3月期は21億円で同2.7%の増益見通しとしています。買収した米国会社のフル寄与が見込めるほか、経済活動の正常化に伴う売上増も想定しているとみられます。下半期は前年同期比営業減益の前提となっており、利益予想は保守的とも受け止められます。

ここがポイント

 2022年3月期年間配当金は前期比3円増配となる40円を計画しています。配当性向は30%未満であり、業績が上振れた場合は、その分増配の余地も残ります。

 株式の流動性が乏しい点はネックとなりますが、今後、アナリストのカバレッジが拡大することにより、連続増益・増配基調への評価が高まることとなれば、0.7倍台と割安なPBR(株価純資産倍率)水準の底上げも期待されるでしょう。

USS(4732・東証1部)

どんな銘柄?

 中古車オークション会場運営のトップ企業で、全国に19会場を有しています。市場シェアは2020年実績で約37.7%となっています。

 会員数は、現車オークション会員4万8,058社、衛星TVオークション会員2,197社、インターネット会員3万2,538社、中古自動車買取店143店舗などとなっています。

 2021年3月期実績で出品台数は約266万台、成約台数は約168万台です。また、中古車買い取り専門店も手掛けています。

業績見通し

 2021年3月期営業利益は362億円で前期比0.6%増益となりました。オークション出品台数が減少したものの、中古自動車等買取販売は好調なオークション相場に支えられて大幅増益となり、リサイクル事業も資源相場の上昇で増益となりました。

 足元でオークションも回復傾向にあり、1-3月期は過去最高益を更新しています。

 2022年3月期は384億円で同6.0%増益の見通しです。オートオークション市場の回復基調が続く見込みのほか、のれん償却の減少なども寄与する見通しです。

ここがポイント

 株式上場以来連続増配を続けており、2022年3月期も前期比2.9円増配となる58.4円を計画しています。ちなみに、2020年3月期からは連結配当性向を50%から55%に引き上げています。

 安定的な増配傾向とともに、機動的な自己株式の取得も行っています。前期は実施されませんでしたが、その前の15年間のうち11年は自社株買いを行っています。

 オークションのDXへの取り組みとして、車両検査の新システム導入、出品票のデジタル化に向けた展開を開始しています。

リコーリース(8566・東証1部)

どんな銘柄?

 リコー系のリース会社で、みずほリースと資本業務提携を行っています。オフィス関連機器などのファイナンス・リース、オペレーティング・リースのほか、法人向け融資や住宅ローンなどの貸し付けも行っています。

 また、請求書発行や売掛金回収などの代行サービス、再生エネルギーや不動産分野などへの投資事業も手掛けています。取引先企業40万社のうち98%が中小企業という顧客基盤に特徴があります。

業績見通し

 2021年3月期営業利益は175億円で前期比2.7%増益となりました。リース事業において資産利回りが改善したほか、インベストメント事業の伸長なども収益増に貢献し、貸倒引当金の増加などを吸収しました。

 2022年3月期は185億円で同5.9%増益の見通しです。全セグメントで売上総利益の増加を見込んでいますが、特にインベストメント事業における住宅賃貸や不動産関連の伸長を想定しています。

ここがポイント

 2022年3月期年間配当金は前期比15円増の115円を計画しています。配当性向は28%であり、業績上振れ次第では増配の余地もありそうです。市場の期待値が高いインベストメント事業の収益貢献拡大傾向には評価余地が高まりそうです。

 また、みずほリースとの連携効果も、前年度の案件25億円から今期は100億円にまで拡大を想定しているようです。連携効果の高まりが確認されるに伴って、業界再編への動きなども思惑視される可能性があるでしょう。

アルフレッサ(2784・東証1部)

どんな銘柄?

 医療用医薬品卸で国内トップ企業です。医療用医薬品製造なども手掛けています。取引先企業数は約1,000社、取扱商品数は約35万アイテムとされています。

 製造から卸売、調剤薬局での薬の提供までサプライチェーンを構築するなど幅広い事業領域、強固な流通体制などが強みとなっています。

 医薬品卸入札で談合防止、ガバナンス強化に努めています。ロボット技術を特徴とするベンチャー企業と資本業務提携を行っています。

業績見通し

 2021年3月期営業利益は207億円で前期比56.6%減益となりました。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、医療機関における外来受診抑制、入院患者・手術件数減少が響きました。医薬品製造事業も同様の影響からセグメント赤字に転落しました。

 2022年3月期は283億円で同6.1%増と増益転換の見通しですが、一部営業外収益を売上高に変更したことで、67億円の押し上げ要因があります。経常利益は減益を見込むなど、入札指名停止などの影響もあって引き続き業績は実質的に伸び悩む見通しです。

ここがポイント

 前期は大幅減益決算にもかかわらずに増配を実施、増配へのこだわりは意識されるところです。株価は足元で安値圏にあり、PBR水準は0.7倍台にまで低下してきています。

 5月27日にはMSCIからの除外に伴う売り需要の発生が見込まれますが、その後は短期的なあく抜け期待などが高まる余地もあるでしょう。

「超低温保管・輸送設備」の全国展開、医療支援プラットフォームへの取り組み、スマホアプリを使った頭痛管理プログラム共同開発など、新展開も積極化させています。

高速(7504・東証1部)

どんな銘柄?

 食品向け軽包装資材の専門商社で国内トップです。仕入れ先は1,600社以上、取扱品目は14万点以上となっています。全国52カ所の営業拠点など地域密着型の物流ネットワークを誇ります。

 国内トップ企業としてのスケールメリットを生かして、顧客への企画・提案営業なども積極的に行っています。2025年度までの中期計画を策定、最終年度売上高1,000億円超を目指しています。

業績見通し

 2021年3月期経常利益は35.4億円で前期比5.7%増益となり、4期連続での増益となっています。従来計画は2ケタの減益計画でした。

 巣ごもり消費に伴う内食需要の増加で、主力の食品容器などが堅調に販売を伸ばしたようです。

 2022年3月期は36億円で同1.8%増と連続増益が続く見通しです。安定した需要の増加が見込める分野であり、業績悪化リスクは乏しいと考えられます。

ここがポイント

 2021年3月期年間配当金は創立55周年記念配当11円を含んで42円配当、前期比12円の増配となっています。2022年3月期はさらに2円増配の44円を計画しています。

 中期計画においても、連続増配の継続による株主価値の向上を目指すとしており、今後も安定した増配が続く期待は高いでしょう。

 業績面でのディフェンシブ性も高く、PBR水準からの割安感も強いため、長期投資の有力銘柄とも位置付けられます。