今週の予想

2万8,000円台で戻りを試しても上値は限定的か

 今週の日経平均株価の動きは、第一に米国市場の戻りがどこまで続くかに、影響を受けることになります。ただし、米国市場の戻りが続くには気がかりがあります。米10年債利回りの上昇によるインフレ懸念です。

 先週末は米小売売上高が予想を下回り、米10年債利回りが低下したことで、株価は反発となりましたが、この利回り低下がいつまで続くかは、不透明なままです。

 国内では、緊急事態宣言が5月末まで延長され、追加で宣言が出される県も出ており、これで新型コロナウイルスの感染状況に改善が出るか注目です。しかし、一方で経済活動の停滞懸念が、株価の重しとなる部分もあります。

 また国内企業では、製造業を中心に3月期決算で業績改善への期待は高まっていますが、現状では株価全体への影響は限定的となりそうです。その理由は、日経平均のチャートが三角保ち合いの下放れとなって崩れてしまったことで、大きな戻りがあっても、注意が必要です。

 チャート(柴田罫線)では、3月24日の2万8,379円を安値の基点とし、4月6日の3万208円を高値の基点とする三角保ち合いを形成していました。これが煮詰まってきたところで5月10日(月)にザラ場では、2万9,685円まで上昇したものの、終値では三角保ち合いを上放れしませんでした。

 逆に11日(火)には、▲909円の2万8,608円と柴田罫線では売り転換と同時に、三角保ち合いの下放れが確定しました。その後、13日に▲699円の2万7,448円と3日続落し、3日間の下げ幅は2,070円に達し、完全に三角保ち合いを下放れし、日足チャートでは3月5日の安値2万8,308円を大きく下回り、5月13日(木)に2万7,385円の安値をつけて、先週末の14日には2万8,084円となりました。

 週足チャートも26週移動平均線(2万8,391円、13日時点)を割り込み「調整入り」を暗示しています。

 短期(3日間)で2,000円以上も急落していたため、いったん下げ止まって反発し、14日(金)には+636円の2万8,084円で終わっています。当面の下値メドは、2万7,000円大台の水準から200日移動平均線の位置する2万6,300円近辺となります。

今週の指標:日経平均株価

 週末の14日(金)の米国市場では、4月小売売上高が予想を下回ったことで、長期金利が低下し、これを受けて株式は2日連続の大幅反発となっています。

 シカゴの日経先物は戻りを試すことになり2万8,000円台での値固めとなりそうです。この流れが続けば、今週の日経平均は戻りを試すことになり、2万8,000円台での値固めとなりそうです。

 目先は2万8,000円台でもみ合うことになっても、チャートが崩れてしまったことは、相場の基調としては「戻り売り」を意味します。

 「戻り売り」を意味するということは、目先の上値の抵抗ポイントは、3月5日の安値2万8,308円、その上は、一目均衡表の遅延線の雲の下限2万8,538円(柴田罫線では5月11日に売り転換となった2万8,608円より少し下)となります。この水準を抜けずに時間が経過すると、再び下値模索となります。

 日経平均は、4月21日に75日移動平均線を割り込んで2万8,419円まで下落。その後、5月10日に2万9,685円まで戻りを見せましたが、ザラ場での高値に終わって、今回の2段下げ(三角保ち合いの下放れ)につながりました。

 2度目の注意信号となりますので、先行きの展開には注意が必要です。欲張らずに戻りで利益がとれる場合は確実に取っていくスタンスがよいでしょう。

今週の指標:NYダウ平均株価

 今週の予測は、先週は売られ過ぎとの見方も多く、景気敏感株が再び買われて株式市場に資金が流入する可能性があります。米国内のワクチンの普及は予想以上の速さで進み、経済活動の正常化期待で上昇しそうという見方もあります。さらに今週は小売企業の決算も注目となり、オンライン販売が好調で好決算が期待されています。

今週の指標:ドル/円

 FRB(米連邦準備制度理事会)の緩和政策の長期化方針は堅持されており、引き続きドルに下押し圧力がかかりやすく、ドルの上げ渋りが予想されます。経済指標が市場予想を下回った場合、大規模緩和策の維持を想定したドル売り・円買いが強まる可能性もあります。

先週の結果

週始め三角保ち合いの上放れ不発で、逆に翌日から三角保ち合いの下放れへ

 先週の予測では、緊急事態宣言延長や5月12日から福岡県、愛知県の2県が追加されたこともあり、経済停滞懸念から2万9,000円台でのもみ合いとなるのかとしました。

 しかし、日経平均のチャート(同時に柴田罫線のチャート)は、3月24日の2万8,379円を安値とし、4月6日の3万208円を高値とする三角保ち合いとなっており、この中で煮詰まって、25日移動平均線(2万9,411円、6日時点)に差し掛かったところとしました。

 3万円を回復して高値に向かうには、まず25日移動平均線を確実に突破して、4月6日の3万208円を抜く必要があるとしました。

 これが実現するためには、NYダウの高値更新が続く堅調な動きになることや、ナスダックが調整を終えて出直ることとしました。このシナリオだと、まだ先行きは不透明感があるため5月相場は強気にならず打診買いから入るのはよしとしました。

 結果的には、週明けの5月10日(月)は、前週末のNYダウが3日連続の最高値更新となったことで、日経平均は、前場は一時+327円の2万9,685円とザラ場では三角保ち合いを上放れする形となりましたが、後場になると上げ幅を縮小し、+160円の2万9,518円となり、柴田罫線の三角保ち合いの中で上放れできずに終わりました。

 結局、柴田罫線で暗示していたかのように、前日の上放れがザラ場の形で終わり、翌日の11日(火)は柴田罫線では一気に下放れとなり、▲909円の2万8,608円と売り転換となりました。

 結果的には、3日間の急落で▲2,070円の大幅下落となって、13日(木)には、2万7,385円の安値をつけました。週末の14日(金)は、大幅下落の反動や米国の主要3指標の反発、アジア株の反発もあり、+636円の2万8,084円と2万8,000円台を回復して引けました。

 日本市場の引け後の週末の米国市場は、前日に続き2日連続で主要3指標とも大幅続伸となりました。その背景は、4月小売売上高が予想を下回ったことで長期金利が低下し、また、前日のマスク着用のガイドラインが緩和されたのを受け、経済活動正常化期待が高まり、景気敏感株が軒並み上昇しました。

 NYダウは前日の+433ドル高に続いて、+360ドル高と2日連続し、3日間で▲1,188ドルの下げでしたが、2日間で+794ドル戻しました。週間では▲1.4%の反落ですが、S&P500種株価指数は、▲1.39%と3週間ぶりの反落、ナスダック総合指数は▲2.34%と4週続落となっています。

 ハイテク株中心のナスダックの回復が弱いままの状況で、ここから先は、長期金利の方向性が注目されます。