日経平均は2万8,000円をはさんで上下

 先週末5月21日(金)の日経平均株価終値は2万8,317円となり、前週末終値(2万8,084円)からは233円高、週足ベースでも反発して取引を終えました。

 3日間で2,000円を超える急落を見せた先々週の動きから、かなり落ち着きを取り戻してきた印象ですが、今週はこのまま戻りをうかがう展開となるのでしょうか?

 まずはいつもの通り、足元の状況から確認します。

■(図1)日経平均(日足)の動き(2021年5月21日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 あらためて先週の日経平均の値動きを振り返ると、週を通じて2万8,000円をはさんで上下する展開でした。同時に5日移動平均線とも絡み合いながら、週末の21日(金)に頭ひとつ抜け出す格好となっています。

 目先の焦点は、図1下段のMACDがシグナルを上抜けクロスできるか、そして2万8,500円台を回復できるかになります。

 順調に回復できれば、25日・75日移動平均線を目指す動きになりそうですが、反対に、2万8,500円の株価水準はここ2カ月間の下値ラインだっただけに、ここを回復できないと再び下方向への意識が強まることも考えられます。

今週の日経平均、おおよその目安は2万9,431円

 今週の具体的な価格の目安については、前回のレポートでも紹介した、25日移動平均線乖離(かいり)率のボリンジャーバンドで探っていきます。

■(図2)日経平均25日移動平均乖離率のボリンジャーバンド(2021年5月21日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡのデータを元に筆者作成

 上の図2の赤い線の動きは、日々の25日移動平均線乖離率の推移を示していますが、先週末21日(金)時点の値はマイナス1.86%でした。

 ボリンジャーバンド上では、中心線(25日移動平均線乖離率をさらに25日移動平均線したもの)まで戻してきたことが分かりますが、このまま+1σ(シグマ)まで戻せば、乖離率がちょうど0%となり、25日移動平均線水準と重なることになります。

 また、今年に入ってからの25日移動平均線乖離率は+2σ辺りで戻りが止まる傾向があります。

 21日(金)時点の+2σはプラス2%ですので、21日(金)の25日移動平均線の株価(2万8,854円)から計算すると、2万9,431円です。この株価水準はちょうど図1の上値ライン(1)辺りになります。

 もちろん、移動平均線乖離率やボリンジャーバンドの値は今後の値動きで変化していきますが、現時点での大体の目安としては参考になりそうです。

株価は順調に戻せるか:割安感による買い余地は十分

 では、「順調に株価は戻せるのか?」についても考えていきます。

 日本株は、新型コロナウイルスへの対応力の差によって、米国株と比べて出遅れ感が指摘されていますが、先週の国内では、モデルナ社とアストラゼネカ社のワクチンが特別に承認されました。

 ワクチン接種の動きが加速していくとみれば、日本株の出遅れ感が修正されていくことも考えられます。

 また、日経平均の予想PER(株価収益率)の動きを見てみると、4月下旬から大きく低下し、21日(金)時点では13.79倍となっています(下の図3)。

■(図3)日経平均と予想PERの推移(2021年5月21日取引終了時点)

出所:Bloombergのデータを元に筆者作成

 PERは「株価÷1株あたり利益」で計算されますが、PERの低下が意味するのは、株価が下がったか、利益が増えたかのどちらかです。上の図3を見ると、株価以上にPERが下がっているため、決算シーズンを経て、利益が増えたことによるPERの低下であることが分かります。

 そのため、日本株の割安感による買い余地は十分にあると考えられ、実際に、先週はトヨタ(7203)の株価が最高値更新するなどの動きも見せています。

今週はTOPIXの動きがカギに。注意点は?

 となると、個別銘柄物色の幅が広がるかが焦点になることが想定されるため、TOPIX(東証株価指数)の動きがカギになりそうです。

■(図4)TOPIX(日足)の動き(2021年5月21日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 TOPIXも日経平均と同じように、1,900pという株価水準を意識する展開となっていますが、株価と25日移動平均線との距離が日経平均よりも近いことや、下段のMACDがシグナルを微妙に上抜けクロスを達成しており、状況は日経平均よりも良いと言えます。

 4月にTOPIXが25日移動平均線を下抜けてから、抵抗として意識されてきただけに、早い段階で25日移動平均線を上抜けできるかが、週間のムードを左右するカギになりそうです。

 以上のように、「今週の相場は堅調になりそう」というのが基本シナリオですが、気を付けておきたい点もあります。

 その一つは、米株市場のムードです。先週の米株市場での出来事を整理してみると、(1)根強い金利上昇警戒でIT・ハイテク株の戻りに勢いが出てこないことや、(2)米4月住宅着工件数など、予想を下回る米経済指標が出始めて景気敏感株の物色が選別されはじめたこと、(3)仮想通貨ビットコインの値動きが荒っぽくなっていて、株式市場も影響を受けていることなど、値動きに不安定さがあります。

 二つ目は、月末の日本株が下げやすいという点です。あくまでも傾向であって、必ずしも歴史が繰り返されるわけではありませんが、特に今週は、国内で発動されている緊急事態宣言の期限延長の議論が注目されることもあり、注意しておく必要がありそうです。