出典:Motley Fool
世界一の投資家、ウォーレン・バフェットの会社であるバークシャー・ハサウェイのポートフォリオは常に注目されています。
その中で、保有額トップ10に入りながら、あまり話題に上らない、バフェットのポートフォリオには珍しい成長株が一つ入っています。しかも、米国株ではありません。
バフェットが保有する中国株「BYD」
それは、中国(上場は香港)のBYD(OTC:BYDDY)です。
因みに、外国株で二番目の保有は、17位に入っている日本の伊藤忠商事です。
このBYDを購入したのは2008年で、13年間保有を続けています。
保有株数を増やしてもいないのですが、減らしてもいません。
BYDは、充電池のメーカーとして出発し、今ではその技術を活かしてEVに軸足をシフトしています。
安定成長銘柄を割安で手に入れるというスタイルをとっているバフェットのポートフォリオに、創業13年の、しかも上場後6年程度しか経っていない中国の会社がなぜ入っているのでしょうか。
非常に特殊なケースなので、購入後しばらくは、株主総会のQ&Aセッションで何度も質問を受けています。
その質問が出ると、ほぼ毎回、「BYDについては、チャーリーが専門家なので彼に答えてもらいます」と、長年の相棒であり、バークシャーの副会長であるチャーリー・マンガーに振ります。
BYD購入の理由は、チャーリー・マンガーの勧めがあったからなのです。
おそらく、チャーリーのアイデアで、バフェット自身はあまり気乗りしていなかったのではないかと勝手に想像しています。
チャーリーの勧めなので、保有しているが確信度があまり高くないので、買い増しはしていないようです。
保有しているうちに、持っていても良いかなと思うようになったので売ることもしていません(もしかしたら、チャーリーに遠慮しているのかもしれませんが)。
BYDの値動き
2008年にBYDに投資した金額はUS$232mil(約250億円前後)です。
バフェットの購入としては、かなり少ない方だと思います。
それが、今や$5.3bill(約5,700億円)と22.7倍くらいになっています。
買い増しはしていませんが、株価の上昇でトップ10入りしてしまいました。
バフェットが購入したのは、上のチャートの左端よりも少し前で、株価としては$1.03くらいの時です。
成長株と言っても、購入後数年で10倍くらいになった後は下落し、なかなか2010年前後の高値を抜けられない時期が続いていました。
そして、2020年のコロナ禍の市場で急上昇しています。と言っても、2倍くらいですから、テスラなどには遠く及びません。
バフェットがBYDを保有する理由
チャーリーは、なぜこの会社をバフェットに勧めたのでしょうか?
実は、更にチャーリーにこの株を勧めた人物がいたのです。
それはHimalaya CapitalのLi Luという人物です。
このHimalaya Capitalというのは、バフェットやチャーリーの投資哲学を学び、それを継承してアジア株でそれを実践しようと、Li Luによって創立された投資会社です。
チャーリーは、この会社に魅了された理由を2009年に雑誌のフォーチュンで語っています。
BYDの創立者である王伝福(Wang Chuanfu、ワン・チュアンフー)は、1995年に携帯電話用の充電池の会社としてBYDを起業しています。
この王のビジョンに、チャーリーは魅了されたと言っています。
チャーリーは、この王について、「トーマス・エジソンとジャック・ウェルチを足し合わせたような人物」と評しています。
技術的問題の解決の時にはエジソンのようであり、ビジネス上の必要で何かをしなければならない時の執行能力はウェルチのようであると述べています。
上場した2002年には、中国トップで世界的な携帯用電池のメーカーでしたが、電池だけではいずれ成長に限界があるとして、2003年には秦川自動車(Tsinchuan Automobile)を買収し、自動車製造に乗り出しています。
そして、携帯用電池から自動車、EVへと軸足をシフトしていきます。
EVは電池技術の応用も効くため、EVへのシフトは自然な流れでもありました。
バフェットが投資を行った2008年の翌年、中国政府がNew Energy Vehicle政策・規制(NEV規制)を打ち出します。
国策でEV化を進めるというものです。
この規制のおかげもあり、中国のEVメーカーにバブルのような株価高騰が起きます。
技術力を持つBYDは乗用車だけでなく、バスやトラックなどのEVも開発し、一旦は世界一のEV販売を誇る企業になりました。
その後、EV専業メーカーであるテスラの躍進でその座を奪われ、現時点では、テスラ、フォルクスワーゲンに次いで世界第3位となっています。
テスラとの比較でよく引き合いに出されるNIOよりもかなりの差をつけて中国のトップでありながら、今一つ目立たないのは、そのブランド力などもあるかもしれません。
これまで、乗用車市場では、低価格帯の自動車を中心に販売を伸ばしてきました。
当初はこれで良かったのですが、中国市場においても、消費者の嗜好が低価格帯と高級車に二極化してきた傾向があります。
高価格帯はテスラを中心とした外国車中心になり、低価格帯は「宏光MINI EV」が50万円を切る価格で非常に売れています。
下の表は2021年1月の世界EV車種別ランキングです。
BYDのポジショニングは、技術力はあるがブランディングで若干中途半端な感じになってきてしまっています。
それを打開すべく、今年2月には、高級車ラインの構築を計画していることを発表しています。
そうした中で、イギリスのアストン・マーチン買収の噂が出たのを覚えている方も多いかと思います。
チャーリーの勧めとはいえ、バフェットが購入した理由はどこにあったのでしょうか?
バフェットが株の購入、企業の買収をする際に、シンプルな事業であることとか、財務に関するいくつかのポイントなどもありますが、最も重要だとしているポイントは、経営者にあります。
ビジネスの状況は、景気の動向など外部要因によって常に変わっていきます。
様々ことが起きるビジネス環境の中で、企業の舵取りをしていく経営者の質は、ビジネス成長の最大の鍵になります。
バフェットは、BYDの王の経営者としての質を気に入ったのではないかと思われます。(王の立身出世物語は、中国版太閤記という人もいます)
この原則にあてはめた時、市場に関する原則以外は、BYDは満たしているかと思われます。
バフェットは過去、王に20%の株式の購入を打診したそうですが、王はそれを拒否したとのことです。
そうしたやり取りを通じて、経営者としての王の資質に資金を託す気持ちになったのではないかと推測されます。
BYDの投資は、バフェットがEVの未来に掛けて投資したと誤解する人も多いですが、必ずしもそうではありません。
確かに、EVの将来性への期待も否定は出来ません。売らない理由ではあると思います。
EVをメインに考えた時に、なぜテスラ(イーロン・マスク)ではなくBYD(王)なのか、という質問が、バフェットにされたことがあります。
バフェットは、「テスラは確かに素晴らしい会社だが、イーロン・マスクは、自分たちにとって理想の投資ターゲットではない」と答えています。(2020年1月)
保有し続けることによって今や、時価ベースで9番目の保有になったBYDですが、まだ簡単に手放さないのではないかと思われます。EV化は中国の国策だからです。
そして、石油を輸入に頼っている中国としては、EV化、再生可能エネルギー化は、非常に重要な国策となっています。簡単には変わらない政策です。
転載元:モトリーフール
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