過去3月の推移と今回の予想値 

※矢印は、前月からの変化

4月雇用統計の予想

 BLS(米労働省労働統計局)が5月7日に発表する4月の雇用統計は、失業率は5.7%に低下、NFP(非農業部門雇用者数)は97.5万人増加という市場予想になっています。

 5日(水曜)に発表された民間の雇用統計であるADP雇用データは+74.2万人。予想(+80.0万人)には届かなかったですが、市場の拡大傾向は継続。今回のNFPは100万人を超えるとの強気の予想もでています。

 新規失業保険申請数はレイオフ中の労働者の減少を示し、景気指数であるシカゴ購買部協会の4月のPMIは37年ぶりの高水準。ワクチン接種展開とコロナ感染者数の抑制で米国では夏に向けて経済再開が進み、失業中の人々が労働市場に復帰する動きも加速しています。雇用市場の力強い回復で、FRB(米連邦準備制度理事会)が金融政策の正常化を前倒しで進める可能性が高まっています。

3月雇用統計のレビュー

 前回3月の雇用統計では、非農業部門雇用者数(NFP)が+91.6万人に増加。コロナウイルス感染の大流行によって縮小していた米国の経済活動が、徐々に再開していることを示しました。

 3月の失業率は6.0%。昨年4月の最悪期に比べて著しく改善しましたが、コロナ流行前の2月時点(失業率3.5%)よりも、まだ2.5パーセントポイント近く下回っています。失業者は970万人で減少基調であるものの、昨年2月時点(580万人)より依然400万人多いです。失業率は米国の州によって違いがあり、例えばハワイ州は9.2%、NY州は8.5%もある一方、サウスダコタ州は2.9%と低いです。観光・レジャー産業の依存度が高い地域は失業率が高止まりしています。

 NFPは91.6万人増加。コロナによるダメージが最も大きかったレジャー・サービス業を中心に、教育、建設業など幅広い分野で雇用が増加する明るい兆しが見えました。とはいえ、昨年2月のピーク時に比べて840万人(5.5パーセントポイント)少ないです。

 3月の失業者のうち、一時解雇者(レイオフ)は20.3万人減って200万人。一時解雇者は1年前よりもまだ130万人多いものの、2020年4月時点の1,800万人に比べると大幅に減少。一方、永続解雇者(パーマネント・レイオフ)は340万人でほぼ横ばい。前年比ではまだ210万人多いです。労働参加率は61.5%で前月とほぼ変わらず。

 コロナ流行を理由に在宅勤務をした被雇用者の割合は21.0%で、前月の22.7%から減少。また新型コロナ流行による会社の休業や倒産を理由に働けなかった人は1,140万人いましたが、1月の1,330万人からは減少。

景気が良くなると失業率は高くなる?

 景気が良くなれば、「給料が増える! 仕事もたくさん見つかる!」そんな明るい時代は、残念ながら終わったのかもしれません。これからの社会では、景気が良くなるほど「給料が減らされるか、あるいは失業する」リスクが高くなるといわれています。

 最近の米雇用統計では、平均労働賃金が大きく伸びています。給料が上がっても喜んではいけません。なぜなら、英国のシンクタンクによると「インフレ率を超える最低労働賃金の上昇は、仕事のロボット化を急加速させる」。米国の3月のインフレ率は前年比+1.6%、それに対して平均賃金は+4.2%。米国は、まさにその状態になっているわけです。

 企業は、労働力確保のために人間の給料を増やすよりもAI投資へお金をつぎ込んでいます。数年のうちに、ホテルの受付や銀行の窓口、コンビニや居酒屋の従業員が全員ロボットに代わっていても不思議ではありません。雇用の大きな変化は、新型コロナ前から始まっていました。しかし感染流行が終息する気配を見せないなかで、スピードが加速しているのです。

 米アマゾンの無人コンビニ「Amazon Go」がオープンしたのは2018年1月。日本でも同様の試みが2020年1月頃にスタートしています。しかし、当時日本では「人とのふれあいがなくなる」という理由で、無人店舗に懐疑的な意見も多かった。「目をみて『ありがとうございます』」と言ってくれるのか?」、「お釣りを渡すときに丁寧に手をそえてくれるのか?」というサービスが大切とされていたのです。

 しかし、わずか1年で人間の行動様式は180度変わってしまいました。これからのサービスとは、「人と人とのふれあいをできるだけ避けること」。会計のときに話す必要があったり、電子マネーが使えなかったり(お札のウイルスは1週間生存)するような店は、それだけコロナ感染率が高いという理由で敬遠される時代になったのです。

 コンビニや居酒屋の無人化は、たとえコロナ大流行がなかったとしても、いずれは日常の風景となっているでしょう。しかし、問題は変化ではなくそのスピード。経済システムは、急激な変化に対応できるように設計されていません。数年以上かけて変えていくべきことがわずか1年足らずのうちに起きています。その結果、いろいろな問題が起きているのです。