先週のドル/円、108円台後半まで上昇

 先週のドル/円は107円半ばまで円高が進み、上値の重たい展開が続きました。米国の経済指標は住宅やPMIなど強い指標が発表されていましたが、米長期金利が上がり切らず、ドル/円も上昇圧力は弱い動きとなっていました。

 細かくみると、108円台前半からの円高は米国要因よりも欧州の要因に引っ張られたようです。つまり、欧州の経済回復への期待が強まり、ユーロが上昇し、ユーロは2カ月振りに1.21台に上昇しました。このユーロ買い・ドル売りの流れがドル/円にも波及し、ドル/円は107円台半ばまで下落しました。そしてユーロのドル売りが一巡すると、ドル/円も下げ止まり、その後はユーロの利食いや米株堅調、強い経済指標に支えられドル買い円売り優勢となり、108円台に上昇しました。

 しばらくは108円を挟んで主体性のない動きとなっていましたが、27日に発表された米国の4月消費者信頼感指数が強かったため、米10年債利回りが1.60%を超えたことから、ドル/円は108円台後半まで上昇しました。

 今週は月末や日本の、ゴールデンウィーク(GW)を控え、かつGW前後を挟んで緊急事態宣言が発出されたため、日本の経済活動が鈍ることが予想されます。そのため、もし、その期間中に仕掛けられた場合、ドル/円は一方向に走る可能性があり、また、GWで東京市場が休場のためアジア時間は流動性が乏しく、値が飛びやすいため警戒する必要があります。

 加えて今週は日米の中央銀行の金融政策委員会や欧米のGDP発表、米国のGAFAなどの四半期決算など重要イベントが目白押しのため、注意が必要です。下記が今週の重要イベントです。

【 今週の重要イベント 】

4月26~27日  日銀金融政策決定会合、「展望リポート」発表
4月27日    (決算発表)マイクロソフト、アルファベット
4月27~28日  FOMC(連邦公開市場委員会)
4月28日    バイデン大統領の施政方針演説
4月28日    (決算発表)アップル、フェイスブック
4月29日    (決算発表)アマゾン
4月29日    米国1-3月期GDP速報値
4月30日    ユーロ圏1-3月期GDP速報値
5月7日     米国4月雇用統計

 この中で特に注目されるのは、27~28日のFOMC、28日のバイデン大統領の施政方針演説です。

注目はFOMCとバイデン演説

 市場で浮上している早期の量的緩和縮小観測(テーパリング)については、3月のFOMC後の記者会見でパウエル議長は、「まだ、議論していない」と 一蹴しました。しかし、その後米国の経済指標は住宅や個人消費で強い指標が相次いで発表されているため、今回のFOMCでテーパリングの時期に関する議論がなされるのかどうか、あるいは記者会見で方向性などに触れるのかどうか注目です。

 もし、触れれば、金利は上昇し、株は下落し、ドル高となりますが、しかし、雇用が完全に回復していない状況では、パウエル議長としては3月に続き触れたくないところです。雇用以外の指標が回復している中で、パウエル議長はどのように収めるのか注目です。

 同じく28日のバイデン大統領の施政方針演説では、バイデン大統領の政策「アメリカン・ファミリーズ・プラン」の財源としてのキャピタルゲイン課税や所得税増税への言及によって米株式市場が再び下落するかどうか注目です。

 22日に増税について報道された時は、株式市場は嫌気して大きく下落しましたが、上院では法案は通らないだろうとの見方から、翌日には株式市場は上昇しました。米株式市場における個人投資家の比率は4分の1程度であり、その中で富裕層は更に限られているため、影響は限定的との見方もあります。このような状況の中で株式市場がどのような反応をするのか注目です。今週発表されるGAFAの好決算が、テーパリングの議論や増税を跳ね返してしまうのかも注目です。

 今週はそれ以外に29日には米国の1-3月期GDP速報値、30日にはユーロ圏1-3月期GDP速報値が発表予定です。GWで静かな日本のマーケットに対して、欧米のマーケットは騒がしくなりそうです。

GWは円高か?

 日本は今週から来週にかけてゴールデンウィークに入ります。日本のGWは円高に警戒との見方があり、毎年このコラムでも話題に上げていますが、実際には円安の年もあり、やや円高の年の方が多いという程度です。ただ、円高に行った時に値幅が大きい年があり、その印象が強いため「GWは円高に警戒」との見方になっているのかもしれません。

 ちなみに昨年は、GW期間中の高値安値でみると、4月30日の107.50円近辺を付けた後は、トランプ大統領(当時)の中国に対する報復関税示唆を受けて6日に106円を一瞬割れたことから、値幅は約1円50銭でした。終値ベースでみると、GWに入る前の4月28日の終値は106.90円近辺、GW最終日の6日の終値は106.10円近辺となっているため、4月から5月のGW期間中の円高は終値ベースで約80銭でした。この程度の値幅なら、通常の値動きの中でもみられますので、特にGW中だから円高に動いたということではないと言えます。

 今年は、4月に入ってから110円台から107円台まで円高が続いたため、ひと相場が終わったという感じです。ここから、更に円高になるためには相当のドル安の力が必要です。むしろ、様々なイベントの中で円安への反転力がどの程度あるかを見極める期間になるかもしれません。もし、反転の力が弱ければ、そこから円高への第2ステージが始まるかもしれません。

 ワクチン接種の進展が通貨の強弱の序列になっているのならば、これ以上円が買われる力は乏しいのではないかと思われますが、日本の極めて低い接種状況の中でも円安への力が弱ければ、接種が進展する6月、7月には経済回復期待が高まり、円高が強まるかもしれません。逆にその頃に先行した欧米の接種のピーク感が漂っていれば、円高を後押しするかもしれません。

 いずれにしろ相場の方向性とは別に、GW中の東京時間帯は、「プライスの悪さ」や「値が飛ぶリスク」には特に注意する必要があります。