日経平均:米国株市場の堅調を受け5週ぶり反発

 大型連休明けで迎えた先週の国内株市場ですが、週末5月7日(金)の日経平均株価は2万9,357円で取引を終えました。前週末終値(4月30日)の2万8,812円からは545円高、週足ベースで5週ぶりの反発へと転じています。

 米NYダウ平均株価が連日で最高値を更新するなど、連休中の米国株市場が堅調だったことを受け、波乱のない市場再開でした。

■(図1)日経平均(日足)とMACD(2021年5月7日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 まずは、いつもの通り足元の状況から整理していきます。

 先週の国内株市場は週末にかけての2営業日のみでしたが、6日(木)の日経平均は前日比で518円と大きく上昇し、翌7日(金)は26円高の小幅高となりました。

 株価と移動平均線との絡みを見ると、6日(木)に5日と75日移動平均線を上抜け、25日移動平均線水準まで値を伸ばし、翌7日(金)は25日と75日移動平均線のあいだに挟まれる格好でしたが、いずれにしても、目先は25日移動平均線を上抜けできるかがカギとなります。

 同様に、直近高値どうしを結んだ線の上抜けや、下段のMACDでも、MACDによるシグナル上抜けクロスなど、「ここを突破できれば株価上昇に弾みがつきそう」なサインが複数出現しています。日足のチャートを見る限りでは、2営業日しかなかった割には意外と状況が改善した印象です。

 もちろん、再び株価が下向きになる可能性もありますが、こうしたサインを突破できた場合には、少なくとも、3万円台の節目や、これまでのレポートでも何度か紹介してきた「上値ライン(2月16日と3月18日の高値を結んだ線)」を目指す展開が想定できます。

 では、そこからさらに上値を目指せるかと言えば、少し難しいかもしれません。

 日経平均は2月16日の高値をつけて以降、もちあいを形成しながらの推移となっています。

 下落局面での下げ止まりの位置を確認すると、最初の下落(3月上旬)が25日移動平均線割れ、続く下落(3月下旬)では75日移動平均線、そして直近の下落(4月中旬)では75日移動平均線割れのところとなっており、下げ止まりの位置が徐々に後退しています。

 一方の上値も切り下がり傾向であるため、この状況を打破するには、このままもちあいを続けてエネルギーを蓄積していくか、相場の見方を刺激するような新たな材料が必要になると思われます。

TOPIX:反発の兆し?決算を手掛かりに持ち直せるかが焦点に

 また、TOPIX(東証株価指数)についても見ていきます。

■(図2)TOPIX(日足)とMACD(2021年5月7日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週のTOPIXも日経平均と同様に、5日と75日移動平均線を上抜けたものの、25日移動平均線をこれからトライしに行くような状況です。また、4月20~21日にかけて空けた「窓」を時間をかけて埋めに行き、反発の兆しを見せつつあるようにも見えます。

 今週は、2,500銘柄を超える国内企業の決算発表が相次ぐラッシュとなります。TOPIXのウエートが比較的高いトヨタやソフトバンクGなども予定されているため、決算を手掛かりに株価を持ち直せるかが焦点になります。

NYダウ:NYダウは連日で最高値を更新、3万5,000ドル台も視野に

 続いて、米国株市場の状況も整理しておきます。

■(図3)米NYダウ(日足)ボリンジャーバンドとMACD(2021年5月7日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 冒頭でも触れた通り、日本が連休期間中だったNYダウは連日で最高値を更新する展開を見せていました。上の図3を見ても、25日移動平均線をサポートに、いったん崩れたボリンジャーバンドの「バンドウォーク」が再始動し、3万5,000ドル台も視野に入りそうな格好になっています。

 とはいえ、連休中の米株市場が必ずしも順風満帆ではなく、軟調な場面があったことには注意が必要かもしれません。結果として25日移動平均線がサポートとなった5月4日のNYダウは、前日比で一時300ドルを超す場面がありました。

 その背景として、米国の物価上昇への警戒が高まったことが挙げられます。イエレン米財務長官がインタビューで、「米経済が過熱しないように金利を少し上昇せざるを得ないかもしれない」と述べたことで、FRB(米連邦準備制度理事会)が利上げ時期を早めるのではという見方が意識されました。

 もっとも、FRBの金融政策について財務長官がコメントするのはどうなのかという声があることや、イエレン氏自身も発言を修正したこと、そして、週末7日(金)に公表された米4月雇用統計で、非農業部門雇用者数の伸びが当初の予想を大きく下回るサプライズとなったことで、早期の利上げ懸念を打ち消す格好となりました。

NASDAQ:7日(金)にグロース株が買い戻されたことで持ち直す

 最近の株式市場では、金利上昇の観測が高まると、IT・ハイテクなどのグロース株や中小型株に資金が向かいづらくなる傾向がありますが、実際に、米雇用統計の結果を受けた週末7日(金)の取引ではグロース株が買い戻され、米NASDAQが持ち直しを見せています。

■(図4)米NASDAQ(日足)とMACD(2021年5月7日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 NASDAQは75日移動平均線をサポートに反発し、5日移動平均線を超えてきました。下段のMACDのクロスはまだ意識されるほど改善はしていませんが、引き続き今週も買いが入り続けることができるかがポイントになります。

 トレンドとしては、下値を切り上げる線と上値を切り上げる線との範囲内が当面の想定レンジです。とりわけ、上値の線については、チャートをさかのぼると、2月までの上昇局面でのサポートラインとして機能していたため、サポートから抵抗の線へと意味合いが変化していることが分かります。

 このように、先週の米国株市場の動きからは、経済回復の強さと金融緩和継続期待の「いいところ取り」が再び強まりそうなムードが感じられます。

 ただし、物価の上昇やそれに伴う金利上昇懸念は、今後も株式市場の材料となる場面が増えそうですし、その場合、物価上昇が金融緩和と共存可能な範囲にとどまるのか、一時的なものになるのかが焦点になります。

 確かに、物価の上昇は米国経済の強さの証左ではありますが、経済の急回復によって、あらゆるものが供給不足になり、実際に、足元では原材料価格が上昇しています。

 米国では需要増による「ディマンドプル」型の物価上昇のため、最終商品の値上げなど価格転嫁である程度の対応が可能と思われる一方、出遅れている日本などでは、需要が増えない中で原材料価格上昇の影響を受ける「コストプッシュ」型の物価上昇となり、悪影響が懸念されます。

 また、これまでは「グロース株からバリュー株」へという資金の流れがありましたが、企業決算が一巡しつつあるタイミングでもあることや、株式市場の割高感もあり、資金がコモディティ(商品)や仮想通貨などへ流れる可能性があります。「リスクが取れるうちはよりもうかりそうなところへ資金が向かう」というリクツです。

 出遅れている日本株も資金が向かう対象として考えられるため、ある程度の株高を演じるかもしれませんが、国内の新型コロナウイルスの感染状況や、7月に都議会選挙が控えていることもあり、高値を更新するほどの勢いが出てくるには新たな買い材料が必要になってくると思われます。