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 気候変動サミットにおいて日本政府は温暖化ガスの排出量を2030年度までに2013年度比で46%減らす『削減目標』を発表しました。その他の国も『削減目標』を相次いで打ち出しています。脱炭素社会の実現などの技術で先行する企業や、既存のビジネスモデルを環境に貢献するように転換できる企業は、中長期的に利益を大きく伸ばす可能性があり、民間企業の取り組みにも注目が集まります。

【ポイント1】各国が温暖化ガスの『削減目標』を発表

 4月22日から23日にかけて気候変動サミットが開催され、日本政府は温暖化ガスの排出量を2030年度までに2013年度比で46%削減すると表明しました。これまでの『削減目標』だった26%から大幅な目標の積み増しとなります。米国は2030年までに2005年比で50~52%減、英国は2035年までに1990年比で78%減、カナダは2030年までに2005年比で40~45%減、中国は2030年にかけて石炭消費量を徐々に減らしていくと表明しています。EUは2030年までに1990年比で55%減の『削減目標』を掲げています。

【ポイント2】『削減目標』達成のために補助金、減税が拡充

 日本、米国、EUは2050年まで、中国は2060年までに温暖化ガスの実質排出量をゼロにするカーボンニュートラルを目指していますが、今回表明された2030年までの温暖化ガス『削減目標』はそれに向けた中間目標となります。また、ブラジルはカーボンニュートラルの達成時期を2060年から2050年に10年前倒ししました。

 米国は上記の目標を達成するため、発電部門の温暖化ガス排出を2035年までに実質ゼロにする『削減目標』をかかげています。そのために、太陽光や風力といった再生可能エネルギーを補助金や減税で支援する方針を打ち出しています。欧州も、温暖化防止に向けた企業・投資活動の判定基準である欧州タクソノミーを発表しました。カナダも、グリーンテクノロジーに特化した企業への投資や、温暖化ガス排出実質ゼロを実現した企業の法人税を50%軽減するなど、各国で目標達成に向けた産業政策が策定されています。

【今後の展開】『削減目標』達成に寄与する企業の利益は大きく伸びる可能性

 民間企業でも、アマゾンやネスレ、ボストン・コンサルティング・グループなどの企業は、世界の熱帯雨林保護を目的とした官民プロジェクトの立ち上げを発表しています。今後も、温暖化対策を効果的に実施した企業は短期的には補助金や減税を通じてメリットがある他、脱炭素社会の実現などの技術で先行する企業や、既存のビジネスモデルを環境に貢献するように転換できる企業は、中長期的に利益を大きく伸ばす可能性があり、民間企業の取り組みにも注目が集まります。

※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。