3月決算の本決算発表が本格化
4月も終わりが近づき、決算発表シーズンも本格化してきました。この時期は、わが国で最も数が多い3月決算企業の本決算が発表となります。
早いところはすでに決算発表を終えましたが、多くはゴールデンウイークの連休明けから5月15日までの間に発表を行います。
本決算は、今期の決算の発表と同時に、来期の業績予想も発表することになっているため、四半期決算よりも圧倒的に重要度も注目度も高くなります。
決算の前に行われる「業績予想の修正」とは何か?
上場会社は、3カ月に1度の決算発表が義務付けられていますが、これ以外に「業績予想の修正発表」も行わなければならないとされています。
業績予想の修正発表とは、もともと会社が発表していた業績予想の数値から、売上高であれば10%超、利益であれば30%超のブレが生じたことが判明した段階で、決算発表時期を待たずに速やかに発表するというルールです。
この業績予想の修正発表は、3カ月に1度の決算発表の時期の直前になされることが多くなります。売り上げや利益が当初発表の予想と大きくかい離していることが分かるのは、会社側が決算発表の準備をしている途中であることが多いからです。
そして、本決算のときには、この「業績予想の修正」が個人投資家を惑わせる理由の1つとなるのです。
本決算前の業績予想の修正の重要度は?
例えば3月決算の会社で、2021年3月期の本決算の発表日が5月12日のケースで考えてみます。
本決算の発表日より前であっても、すでに発表している2021年3月期の業績予想の数値に比べて売上高や利益が大きくかい離することが分かった時点、例えば5月7日に、業績予想の修正発表を行います。また、未定だった配当金の金額が確定したような場合も、決算発表より前の段階で発表されることがあります。
この業績予想の修正発表にて、例えば2021年3月期の決算が予想よりかなり良いことが分かれば株価は大きく上昇する可能性が高いですし、逆に2021年3月期の決算内容がよくないと分かれば、株価は大きく下落する可能性が高くなります。
しかしこの株価の反応は、あまり意味がないことだと筆者は考えています。なぜなら、2021年3月期の実際の業績が本決算の直前に上方修正されても、それは過去の話だからです。
すでに投資家の関心は、2022年3月期の業績予想としてどれくらいの数値を会社側が出してくるかに移っているのです。
この時期に最も怖いパターンとは?
3月決算の会社の本決算が発表されるこの時期、最も怖いパターンがあります。それが「2021年3月期の業績は絶好調。でも2022年3月期は失速」というものです。
例えばこの例で5月7日に、「2021年3月期の業績は、当初予想よりはるかによいものでした。配当金も大きく増額しました」という2021年3月期の業績予想修正発表がなされ、これを好感して株価が大きく上昇したとします。
そして5月12日に本決算の発表日を迎えます。2021年3月期の業績は5月7日に発表されたものと、おおむね同じ数値が発表されます。
ここで問題になるのが、2021年3月期の業績と同時に発表される、2022年3月期の業績予想なのです。
もし2021年3月期の業績がどんなに絶好調であっても、2022年3月期の業績予想がよくなければ、株価は大きく値下がりする可能性が高くなります。
仮に5月7日の2021年3月期業績予想の上方修正を好感して株を買ったものの、5月12日に発表された2022年3月期の業績予想に投資家が失望して株が大きく売られたような場合は、大きな損失を被ってしまうことになります。
決算発表直前の実践的な対処法は?
このように、本決算発表の時期は、株価の思わぬ急変動に十分な注意が必要となります。株価というものは将来を織り込んで動くものですから、すでに終わった期の決算内容がどんなに素晴らしいものであっても、今後の業績予想がイマイチであれば株価は大きく値下がりしてしまう可能性があります。
無論、2021年3月期の決算も素晴らしく、2022年3月期の決算も引き続き絶好調、という予想が出るようであれば株価は大きく上昇することになりますから、決算発表直前に買うこと自体が誤っているというわけではありません。
それでも、2021年3月期の本決算発表時に発表される2022年3月期の業績予想がどのような内容か、そしてその内容を踏まえて株価がどのように反応するかは、実際にふたを開けてみないと分かりません。
したがって、決算発表後の株価急落のリスクを避けたいのであれば、本決算発表の直前における新規の買いは慎重にした方がよいでしょう。あくまでも本決算発表および2022年3月期の業績予想の発表がなされてからの株価の動きを踏まえ、買うかどうか決めるのが、決算発表による株価の急変動を回避するための実践的な対処法です。
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