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菅首相が所信表明演説で2050年にカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを表明するなど政府は脱炭素社会の実現に踏み出しました。こうした中、CO2排出量の多い『鉄鋼業界』では、鉄鋼連盟が2050年にCO2排出量を実質ゼロとする目標を発表しました。『鉄鋼業界』は電炉の拡充によるCO2削減策などに加えて、抜本的な削減策として水素還元製鉄の技術開発を進めるなど脱炭素を加速しています。
【ポイント1】鉄連はCO2排出量実質ゼロを発表
製鉄の基幹設備である高炉は石炭を原料としたコークスを使って鉄鉱石を還元して鉄を作るため、多くのCO2を排出します。国内でCO2排出量が製造業の約4割を占める『鉄鋼業界』はその削減が急務となっています。2月15日には鉄鋼連盟(鉄連)が2050年にCO2排出量を実質ゼロとする目標を発表しました。
鉄鋼大手は脱炭素を進めており、鉄スクラップを溶かして再生するため、CO2排出量が高炉を大きく下回る電炉の拡充やCCUS(二酸化炭素回収・有効利用・貯留)などに取り組んでいます。ただこれらの取り組みでは限界があり、鉄連が削減の切り札と期待する新技術がコークスを水素に置き換える水素還元製鉄です。
【ポイント2】鉄鋼大手は総力をあげて脱炭素に取り組む
日本製鉄は3月5日、2050年カーボンニュートラルを目指すと発表しました。CCUSに加え克服すべき課題は多いものの水素還元製鉄にチャレンジし、複合的なアプローチでカーボンニュートラルを目指します。また同社は年間の粗鋼生産能力400万トンと高炉に匹敵する規模の電炉を2030年までに国内の製鉄所に建設し、稼働させることも計画しています。
神戸製鋼は鉄鉱石の一部を、すでに酸素を除去した「還元鉄」に代替する手法を確立しました。石炭を蒸し焼きにしたコークスを使って鉄鉱石から酸素を取り除くのに比べ天然ガスを使って作るため高炉内でCO2を発生させず、実証実験でCO2の2割削減に成功しました。
【今後の展開】水素還元製鉄の開発には官民挙げた取り組みが必要
CO2の排出量の多い『鉄鋼業界』は他業態以上に脱炭素への取り組みが求められ、脱炭素への取り組みを加速しています。その成否が今後の競争力に直結するとみられています。2050年カーボンニュートラル実現に欠かせないのが水素を使い石炭を使わない水素還元製鉄です。ただ克服すべき課題は多く、全く新しい製法のため技術開発の難度が極めて高い上に、設備投資も巨額となります。このため水素還元製鉄の開発には『鉄鋼業界』をあげての取り組みと政府の支援など総力を結集した対応が求められます。
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