運用会社は投資信託の心臓部

 投資信託は、「運用会社(委託会社)」「販売会社」「受託会社」の各機関が役割を果たすことで成り立つ金融商品です。

 この中でも、投資信託を組成し、投資家から集めたお金をどこにどのように投資するかを考え、受託会社に指示する運用会社は、投資信託運用の心臓部として重要な役割を担っています。

 運用会社の名称は、「○○アセットマネジメント」や「○○投資顧問」などが一般的で、目論見書の表紙に「委託会社(ファンドの運用の指図を行う者)」として記載されています。投資信託の具体的な銘柄が紹介されるときは運用会社名が併記されることが多く、ファンド名に運用会社の名称を冠した商品も展開されているので、「見覚えがある」という方もいるでしょう。

 では、ここで早速クイズです。次の内容が正しいか、○か×でお答えください。

クイズ運用会社は、必ず自社だけで運用を完結させなければいけない。

運用会社は、必ず自社だけで運用を完結させなければいけない?

解答:×

 投資信託の目論見書に「委託会社(ファンドの運用の指図を行う者)」として記載されている運用会社は、外部の機関に運用を委託=アウトソースすることが認められています。つまり、Aアセットマネジメントの商品として展開されているAファンドが、実際にはB投資顧問によって運用されている、というようなイメージです。依頼元であるAアセットマネジメントは、委託先のB投資顧問に対して相応の報酬を支払います。

 このように、外部の機関に運用の指図に関わる権限を委託することを「外部委託運用」といいます。

なぜ運用会社なのに、外部委託するの?

 では、なぜ費用を負担してまで、わざわざ別の会社に運用を委託するのでしょうか。

 運用会社には各社で得意とする領域があります。そこで、特定の市場や資産の運用に精通している別の会社に運用を委託することで、より効率的な運用を実現するというわけです。外部委託運用が多く活用されている例としては、専門的な調査力が必要とされる新興国株式や中小型株式のほか、特定のテーマに特化した株式やREIT(リート:不動産投資信託)などもあります。

世界中の運用力を外部委託で取り入れる

 外部委託運用は、1998年施行の投資信託法の改正により可能となりました。運用を委託する先は、投資信託委託業者か投資顧問業者に限定されていますが、必ずしも国内に拠点を構える会社である必要はありません。日本に拠点を持たない、海外の運用会社の運用ノウハウを外部委託運用の形で取り入れることもあります。投資家としても、世界中の運用会社の運用力を、自身の資産運用に取り入れることができるというメリットがあります。

 また、依頼元の運用会社は、委託先がきちんと運用業務を行っているかについて絶えずチェックする受託者責任を負っています。一般的に、運用会社の中の「外部委託運用部」と呼ばれる部署が、外部委託運用に関する一連の業務を担っています。新しい運用会社やファンドの発掘、前述のチェック業務(これをデューデリジェンスといいます)の実施のほか、運用を委託しているファンドのモニタリングなども含まれます。このように、運用会社には、「目利き」としての機能もあるのです。

 なお、外部委託運用と似た方法として、運用会社は、外部の機関から「投資助言」を受けることも認められています。外部委託運用と投資助言の大きな違いは、実際に運用の指図を行うのがどの会社か、という点です。外部委託運用では、外部委託先の会社が自ら投資判断を行い、実行に移すことができるのに対し、投資助言はあくまでも依頼元の運用会社が投資判断を行います。

外部委託運用の例

外部委託を依頼する運用会社 三菱UFJ国際投信
外部委託先 ベイリー・ギフォード・インベストメント・マネジメント(ヨーロッパ)リミテッド
対象ファンドの例 ベイリー・ギフォード世界長期成長株ファンド
ベイリー・ギフォード インパクト投資ファンド

投資助言の例

投資助言を受ける運用会社 日興アセットマネジメント
投資助言を行う会社 アーク・インベストメント・マネジメント・エルエルシー
対象ファンドの例 グローバル・フィンテック株式ファンド
グローバル・スペース株式ファンド(1年決算型)