★筆者が選ぶ10万円株一覧は4ページに掲載しています。

株式市場の動きから目を離さない

 昨年春にコロナ禍で急落した株式市場は短期間で反発し、昨秋以降に一段高となりました。日経平均株価は今も約30年ぶりの高値水準に位置しています。コロナ感染拡大が世界経済に悪影響を与えたことに疑いはなく、まだ終息したわけでもありません。それでも株価は高くなっていったのです。

 高値に進んだ理由としては、まず「各国中央銀行による大規模金融緩和」により金融危機(大手金融機関の破綻など)を避けることができたこと、そして「各国政府による大規模財政支出(給付金含む)」によってコロナで失われた需要が補われたことが挙げられます。回復するまで多くの時間を要したはずの経済を、政策によってグイと引き上げた構図です。

 一方、コロナによってリモートワーク、ステイホームの実施など、生活様式は急変しました。デメリットを受けた業界・企業が多い半面で、メリットを受けることになった業界・企業も存在し、株式市場のけん引役となりました。

 そして昨年11月、ついに米製薬企業ファイザー社がコロナワクチンを完成させました。希望するすべての人にワクチンが行き渡るまでには時間がかかるものの、コロナに対する恐怖は低減していくと思われます。

 そう遠くない時期に経済活動が元の姿を取り戻すという期待が出てきました。先行して多くの企業の業績が回復軌道に入り、想定以上のことも見え始めています。「政策」がバネになり、コロナ前の水準を超える水準まで伸びを見せる企業が散見されているのです。

 東京市場において、先行して株価が回復したのは、もともと成長期待がある「グロース株」ですが、その後、景気回復→景気拡大期待を反映し、景気敏感株とされる「バリュー株」まで株価が上昇してきました。

 代表的な銘柄のここ一年の動きをチャートで示します。

【グロース(成長)株】

ファーストリテイリング(9983・東証1部)

 ユニクロ、GUの運営企業です。

日足チャート(2020年2月3日~2021年4月21日)

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

東京エレクトロン(8035・東証1部)

 半導体製造装置の大手企業です。

日足チャート(2020年2月3日~2021年4月21日)

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

エムスリー(2413・東証1部)

 医療従事者向け情報サイトを運営しています。

日足チャート(2020年2月3日~2021年4月21日)

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

サイバーエージェント(4751・東証1部)

 ネット広告はじめスマホサービス、ゲーム、メディアを多角展開しています。

日足チャート(2020年2月3日~2021年4月21日)

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

【バリュー(割安)株】

日本製鉄(5401・東証1部)

 鉄鋼生産で世界第3位の企業です。

日足チャート(2020年2月3日~2021年4月21日)

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

三菱ケミカルホールディングス(4188・東証1部)

 総合化学の国内首位企業です。

日足チャート(2020年2月3日~2021年4月21日)

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

日本郵船(9101・東証1部)

 海運の国内首位企業です。

日足チャート(2020年2月3日~2021年4月21日)

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

三井住友フィナンシャルグループ(8316・東証1部)

 三井住友銀行を中核とするメガ金融グループです。

日足チャート(2020年2月3日~2021年4月21日)

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

 振り返ると、コロナ・ショックによる底打ち後、グロース株を先行して手掛け、その後バリュー株に手を広げていたら、株式投資はかなりの成功を収めていたことがわかります。

 もちろん、その動きを事前に読むことは簡単ではありませんが、目の前の株式市場の動き、個別銘柄の動きをウオッチし、その動きに乗じることが結果を生みます。

「株式市場の先行きを読む」というのは、実際の投資家の行動から株価に先行する動きをキャッチする、という意味でもあります。株式市場の動きはあらゆる動きに先行していると理解するのが得策です。

 株価は投資家が売買をすることによって動いていきます。投資家は「できるだけもうかりやすいもの」、「できるだけ安全にもうけが出せるもの」に多くの資金を投じる性質を持っています。 

上がり始めたら買い、下がり始めたら売る

 東証1部市場だけで約2,200もの銘柄があります。その中から銘柄を選ぶことは難しいように思えますが、すべての銘柄が同じように投資家に売買されている(流動性がある)わけではありません。

 また、株式市場の大きな流れを作り出す、大きな資金を運用している「機関投資家(外国人投資家含む)」のほとんどは、あまり流動性がない銘柄や時価総額が数百億円しかない小型株を選んで手掛けることはまれです。どの銘柄でも手掛けられる個人投資家に比べ機動力がないとも言えます。

 しかし、大きな流れを作り出すのは機関投資家ですので、株式市場の流れに乗るということは彼らの動きと歩調を合わせることとほぼ同義です。売買対象となる銘柄、とくに初手においては「主力株」で問題がないのでしょう。

 上に挙げたグロース株とバリュー株の動きを見ると、株価上昇が目立つ時期が異なっています(=株価の流れ)。株価の流れを知るということ、売買のきっかけを表現する適当な言葉があります。それは「上がり始めたら買い、下がり始めたら売る」というものです。

 期間をあらかじめ設定する必要はなく、株価の動きから判断していきましょう。少なくともコロナ後の株式市場では、一日で風景が(悪い方向に)一変したことはありませんので、必要以上にハラハラドキドキすることもないでしょう。

 ただ、目論見違いはあり得ることから、全体相場の動きと大きく異なる動きをする銘柄を保有してしまった場合は、処分売りも含めて作戦を再考することもありえます。

10万円で投資できるバリュー株の代表選手「鉄鋼関連株」

 今のところ、日経平均株価に採用されているような主力株、なかでも寄与度が高い銘柄(上に挙げたグロース株などが一例)、そして鉄鋼、化学、海運、商社、金融など景気に敏感に反応するバリュー株を株式市場の動きに併せて切り換えて売買していく戦略が有効となりそうです。

 ここではバリュー株の代表選手「鉄鋼関連株」から10万円で投資可能な銘柄を参考として取り上げます。

 株価データは2021年4月21日終値ベース。

神戸製鋼所(5406・東証1部)

 鉄鋼(高炉)で国内3位の企業。アルミ・銅、建設機械も手掛けます。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

中山製鋼所(5408・東証1部)

 日本製鉄系の中堅鉄鋼(電炉)メーカー。圧延技術への評価が高いです。

・1年日足チャート 

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

三菱製鋼(5632・東証1部)

 建機・自動車向け特殊鋼、ばねが主力です。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

東京製鐵(5423・東証1部)

 鉄スクラップを原料とする電炉の国内首位企業です。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

日本高周波鋼業(5476・東証1部)

 神戸製鋼傘下の特殊鋼メーカー。金型素材の工具鋼が主力です。

・1年日足チャート 

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

初心者でもよく分かる!著者によるこの記事の解説音声はこちら(soundcloudサイト/10分27秒)。