1-3月期の決算発表を控えて徐々に様子見ムード強まる

 直近1カ月(3月16日~4月19日)の日経平均株価は0.3%の下落となりました。3月18日には一時2月16日の高値水準に急接近しましたが、その後は失速する形となりました。

 一方、調整場面では75日移動平均線レベルが下値支持線となって下げ渋りました。4月初めに再度3万円の大台を突破しましたが上値は重く、4月中旬にかけては3万円をやや下回る水準での狭いボックスレンジでの動きを続けています。

 3月中旬にかけての上昇は、FOMC(米連邦公開市場委員会)において政策金利の据え置きが決まり、2023年末までゼロ金利政策を続ける可能性が示唆されたことで、早期の金融引き締めへの警戒感が後退したことが背景になりました。

 その直後からの株価調整は、長期的な金融緩和策継続表明にもかかわらず米長期金利が上昇したことに加えて、日本銀行がETF(上場投資信託)購入対象から日経平均型を外すと決定したことが要因となりました。

 3月後半から4月前半は、米長期金利の上昇一服が買い安心感につながりましたが、一方で、国内での新型コロナウイルス感染者数が再拡大するなか、本格化を控える1-3月期の決算発表を前に、徐々に様子見ムードが広がる状況となっています。

 この期間の主力株では、レーザーテック(6920)SCREEN(7735)アドバンテスト(6857)東京エレク(8035)など半導体製造装置関連銘柄の上昇率が目立ちました。

 米国のインフラ投資計画が半導体関連の追い風につながるとの見方が強まったほか、米インテルの半導体工場新設、台湾TSMCの向こう3年での1,000億ドル投資計画表明なども期待材料視されました。米長期金利の上昇一服なども、グロース株として支援材料になったようです。

 アナリストから「次のレーザーテック」銘柄と指摘された日本電子(6951)なども急伸しました。半面、新型コロナウイルス感染再拡大による経済活動の抑制が懸念されて、電鉄株や空運株、小売株の一角などで軟調なものが目立ちました。

1-3月期決算発表が焦点、前半は出尽くし感が優勢になりやすい

 国内株式市場の当面の焦点は、主力企業の1-3月期決算発表となります。とりわけ、今回は年度末の決算となるため、新年度の業績見通しに株価は反応することになります。

 現在の東証1部のPER(株価収益率)水準は過去比較で相対的に割高なように、2022年3月期の業績回復期待は相当程度期待材料として織り込まれています。

 実際に好業績見通しが示される可能性は高いと考えられますが、それを受けて、あらためて好感されるのか、織り込み済みとして出尽くし感につながるのか、株価の反応が現在では読み切れない状況です。2月期決算である安川電機(6506)や主力の小売株の状況から見ると、少なくとも前半に発表される銘柄には、出尽くし感が先行しやすいような印象があります。

 決算発表におけるリスク要因としては、新型コロナウイルス感染拡大に伴う首都圏での緊急事態宣言再発出も視野に入るため、極めて保守的な業績予想が示されることです。

 コンセンサスを下回る業績見通しには売りの反応が強まるとみられるので、こうした企業が増えると、全般的に決算発表に向けた先回り売りの流れも強まりやすくなります。ただ、このような下落場面は、中期的な買い場になると判断されます。

 一方、米国株式市場の堅調な動きは下支えとなります。通常、5月にかけて米国株は需給的に上昇しやすいタイミングでもあり、堅調相場は目先継続する可能性は高そうです。

 しかし、足元の経済指標では、4月のフィラデルフィア連銀製造業景気指数が48年ぶりの⾼⽔準となり、3⽉の⼩売売上⾼も過去2番⽬の増加率となっているように、先行きインフレへの警戒感は拭い切れません。

 物色的には、決算発表を受けた個別物色の動きが強まるものとみられます。半導体不足の状況が鮮明化してきていることからも、半導体関連株の業績モメンタム低下は想定しにくい状況です。米国株堅調も支えとなり、過熱感を伴いながらの上昇基調は続く見通しです。

 単に業績回復見通しを示すだけでなく、増配や自社株買いなどの株主還元策を同時に発表する銘柄などには、水準訂正余地が広がる公算は大きいでしょう。

 また、新型コロナウイルス感染拡大の悪影響が相対的に乏しいDX(デジタルトランスフォーメーション)関連なども、好決算銘柄は素直に買い進まれそうです。こうした銘柄が相対的に多い新興市場銘柄などは選好されやすいともみられます。

収益性の高い低位のバリュー株(高配当利回り株)に注目

 2022年3月期は、コロナ禍からの回復で総じて大幅な増益が期待できる状況とみられ、それに伴う増配の動きも増加すると想定されます。

 とりわけ、高配当利回り銘柄の増配は他の増配銘柄と比較して評価余地が高まりやすいと考えられ、引き続き高利回り銘柄の注目度は高めたいところです。

 足元で伸び悩んでいる米長期金利も、好調な経済指標が相次ぐ状況下で、再度騰勢を強める可能性は高く、バリュー株と位置付けられる高利回り銘柄の追い風となるでしょう。

 下表は、10万円未満で買える配当利回り3.0%以上の銘柄の中から、直近実績の売上高営業利益率が10%以上の銘柄をスクリーニングしたものです。

 新興市場のパフォーマンスが良化して個人投資家の投資マインドが一段と好転すれば、中小型の低位株などにも短期資金は集まりやすくなりそうです。また、収益性の高い銘柄は、景気改善で売上高が回復した際に、配当の原資となる利益水準の回復幅がより大きくなる可能性があるでしょう。

収益性良好・10万円未満で買える高配当利回り銘柄(2021年4月16日時点)

コード 銘柄名 予想
配当利回り
株価 時価総額 売上高
営業利益率
8934 サンフロンティア不動産 4.43 948.0 462 22.63
8628 松井証券 4.28 935.0 2,424 36.89
9412 スカパーJSAT 3.63 496.0 1,474 10.94
1605 INPEX 3.48 776.0 11,348 32.23
6345 アイチ 3.43 846.0 662 10.04
7722 国際計測器 3.40 735.0 104 15.83
7775 大研医器 3.40 589.0 188 14.01
7030 スプリックス 3.25 953.0 166 15.09
配当利回り平均 3.66
注:予想配当利回りの単位は%、時価総額の単位は億円、売上高営業利益率の単位は%。株価は2021年4月16日終値、単位は円。

銘柄選定の要件

  1. 予想配当利回りが3.0%以上(2021年4月16日終値ベース)
  2. 株価が1,000円未満(同)
  3. 実績(2020年度)売上高営業利益率が10%以上

サンフロンティア不動産(8934・東証1部)

どんな銘柄?

 稼働率の低い収益不動産やリニューアルを要する建物を取得、顧客視点での付加価値創出など高収益の不動産に再生し提供するリプランニング事業が主力となっています。

 売買・賃貸仲介やホテル運営なども手掛け、ベトナムやインドネシアなど海外にも進出しています。東京都心部の中小型オフィスビルに特化した展開が特徴となります。

業績見通し

 2021年3月期営業利益は76億円で前期比54.1%減益の見通しです。リプランニング事業における販売棟数の減少、新型コロナウイルス感染拡大の影響によるホテル運営事業の収益悪化が減益決算の背景となります。

 ただ、想定よりも賃料下落や空室率上昇を抑制できたとして、3月29日には従来予想の69.3億円から上方修正しています。2021年3月期は大幅減益ながら前期比並みの年間42円配当を計画しています。

 2022年3月期はコロナ禍による悪影響一巡で収益の回復が想定されます。2020年3月期まで増配傾向となっていたため、収益の回復幅次第では配当計画の引き上げ余地もありそうです。

ここがポイント

 コロナ禍を契機とした働き方改革に伴い、企業のオフィスニーズも多様化することが想定されます。全般的にオフィス空室率は高止まりする可能性もありますが、「不動産再生」ニーズは逆に広がる公算も大きいとみられます。

 また、同社では、その地域ならではの魅力や特長をテーマにした地方創生事業に進出しており、現在は佐渡島で展開中です。地方創生関連銘柄としての側面もあります。

INPEX(1605・東証1部)

どんな銘柄?

 石油や天然ガスの探鉱・開発・生産という上流事業が中核になります。国内上場企業の中では最も、原油価格の動向による影響が大きい銘柄といえます。2006年4月に、国際石油開発と帝国石油が統合して現体制となり、2021年4月より現社名に変更しています。

 イクシスLNGをはじめ、世界約20カ国でプロジェクトを推進しています。原油換算の生産量は日量58.6万バレル、確認埋蔵量は40.9億バレル(ともに2019年12月期)のもようです。

業績見通し

 2020年12月期営業利益は2,485億円で前年同期比55.6%減益となりましたが、2021年12月期は3,190億円で前期比28.4%増益の見通しです。

 年間配当金も前期比3円増配の27円を計画しています。海外天然ガスの販売量増加を見込むほか、原油価格の前提を前期の43.21ドル/バレルから53ドル/バレルに引き上げていることが収益増加の要因となります。

 なお、当面の配当方針は配当性向30%以上で、24円を下回らないような安定配当を実施するとしています。

ここがポイント

 足元の原油相場の状況から見て、会社側の今期業績計画の上振れ余地は大きいとみられます。それに伴って、年間配当金の上振れ余地も大きく、株価の評価材料につながる可能性が高いとみられます。

 基本的に株価は原油価格の上昇と連動しやすいですが、米国のインフラ投資によるプラス効果期待、世界的なワクチン接種拡大による需要増期待から、当面の原油相場は堅調な推移をたどる公算が大きいと考えられるでしょう。

アイチ(6345・東証1部)

どんな銘柄?

 トラック式高所作業車で国内シェアトップのメーカーです。自走式高所作業車、橋梁点検作業車なども扱っています。電力、レンタル、通信、鉄道業界などが主要ユーザーとなっています。

 製品販売後のメンテナンスなども収益源となります。海外売上高比率は約1割のもようです。無借金経営で自己資本比率は80%超と好財務内容を誇っています。

業績見通し

 2021年3月期営業利益は62億円で前期比5.9%増益の見通しです。上半期決算時に上方修正を行っていますが、第3四半期まででは前年同期比23.1%増と大幅増益となっており、通期業績にはさらなる上振れ余地もあるとみられます。電力業界や通信業界向けの売上が堅調に推移しているもようです。

 年間配当計画も期中に27円から29円に引き上げられていますが、現在は配当性向50%を目安としていることで、業績上振れはストレートに増配へとつながる見込みです。2022年3月期も配当性向は50%となります。

ここがポイント

 豊田自動織機が50.9%を保有する筆頭株主となっています。今後は親会社のフォークリフトとの協業による海外市場の開拓などが期待できるでしょう。

 また、親子上場の解消が叫ばれる中で、同社にも再編思惑などが高まるタイミングが到来する可能性もあるでしょう。

国際計測器(7722・JASDAQ)

どんな銘柄?

 振動計測技術をベーステクノロジーとする試験計測装置の専門メーカーです。バランシングマシンが主力で売上の約7割を占めます。バランシングマシンとは、部品を回転させることにより発生する回転振動を計測して質量の最も重い(または軽い)位置とその量を検出し、その計測データを解析することによって、「釣り合い良さ」の可否を判定する計測装置です。

 主要業界は自動車関連分野で、とりわけ、ダイナミック型タイヤバランシングマシンでは世界トップシェアを獲得しています。

業績見通し

 2021年3月期第3四半期累計営業利益は2.9億円で前年同期比80.3%の大幅減益となっています。2021年3月期通期でも、10億円で前期比51.0%減益となる見通しです。

 新型コロナウイルス感染の世界的な拡大に伴う顧客からの納期調整や海上輸送船舶およびコンテナ不足に伴う輸出待ち案件の増加で、アジアのタイヤメーカーを中心としたバランシングマシンの売上や、日本・アジア向けの電気サーボモータ式振動試験機の売上が減少したもようです。年間配当金も前期比10円減配の25円となる見込みです。

ここがポイント

 主力の自動車業界の生産正常化によって、2022年3月期は売上の回復が見込めるでしょう。高シェアを誇るニッチ分野に特化していることで収益性は高く、売上高回復に伴う利益改善効果は大きいとみられます。

 配当性向40%を目標にしていることで、業績改善に伴う配当水準の回復も期待できます。自動車業界は電動化や自動運転化など変革期に入っていますが、こうした研究開発の過程で同社製品の需要は拡大すると考えられ、業績急拡大のタイミングなども近いと判断されます。

大研医器(7775・東証1部)

どんな銘柄?

 高度医療分野に特化した研究開発型の医療機器メーカーで、多くの製品が市場シェアトップやトップに迫る位置を確保しています。

 主力分野は、麻酔関連、病院感染防止関連製品となっており、真空吸引器関連、加圧式医薬品注入器関連、注射筒輸液ポンプおよび輸液ポンプ関連、殺菌水製造装置関連などが主要な製品群です。

 国内トップシェアを誇る医療用吸引器「フィットフィックス」に代わる次世代吸引器「クーデックバイロン」などに注力しています。

業績見通し

 2021年3月期第3四半期累計営業利益は8.5億円で前年同期比11.7%減益となっています。新型コロナウイルス感染症の影響による手術件数の減少で、主力製品の吸引器、注入器関連製品の販売量が減少していることが業績悪化の背景です。

 第3四半期決算発表時に通期予想を下方修正、営業利益は従来の11.6億円から9.6億円、前期比19.6%減に引き下げています。

 ただ、年間配当金は20円計画を据え置いています。2022年3月期は新型コロナウイルス感染も沈静化し、手術件数の回復による業績改善が望めるでしょう。

ここがポイント

 グロース色の強い医療機器メーカーの中では、配当利回りの面から見た割安感が強い、数少ないバリュー株となっています。この点を考慮すると株価の水準訂正余地は大きいと言えるでしょう。

 また、今回の新型コロナウイルス流行を受け、国内外で病院感染防止関連製品の必要性が高まっているとみられ、中期的にこうした潜在ニーズの表面化が期待できることになりそうです。