株式投資で利益を上げるとはどういうことか?

 本コラムをご覧の方の中には、株式投資をこれから本格的に始める、もしくは始めて間もない、という方も多くいらっしゃると思います。

 そんな皆さんに意識していただきたいことの一つが、「株式投資でどうやって利益を上げることを目指すのか、明らかにしておく」という点です。

 利益を上げることでご自身の資産を増やすのが、株式投資の目的です。ですから、どうやって利益を上げることができるのかを知っておかないと始まりません。

 株式投資で利益を上げるためには、以下の二つの方法があります。

(1)キャピタルゲイン:株価の値上がりにより利益を得る
(2)インカムゲイン:配当金や株主優待により利益を得る

 なお、信用取引で株を空売りして、その値下がりによって利益を得ることも、キャピタルゲインの一つですが、これについては今回割愛いたします。

 実は、キャピタルゲイン(値上がり益)を狙うのか、インカムゲイン(配当金など)を狙うのかで投資方法が全く異なります。この事実に気づいていない方が意外と多いのです。

キャピタルゲイン狙いの魅力と注意点は?

 キャピタルゲイン、つまり値上がり益狙いで株式投資をする魅力は、何といっても「大きな利益を得ることができる」点です。

 業績が大きく伸びていて、今後も向上することが期待できる成長株であれば、株価が5倍、10倍、中には100倍になることも珍しくありません。

 例えば、昨今の海運株を見ても分かるように、業績が景気に大きく左右される景気敏感株も、株価が底を打ってから早期に買うことができれば、株価が1年足らずで数倍に上昇することもよくあります。

 ただし、業績が伸び悩んだり悪化すると、株価が逆に5分の1、10分の1以下に下がったり、最悪の場合は倒産したりしますから、「ファンダメンタルズ分析」による銘柄選びが重要になってきます。

 特にキャピタルゲイン狙いの場合は損益計算書の売り上げと利益が重要です。業績が大きく伸びれば伸びるほど、株価も大きく上昇する可能性が高まります。

 また、あまりに割高な株価水準で株が買われていると、早晩天井をつけて大きく下落するリスクも高まります。そこで、PER(株価収益率)などの指標を使って、できるだけ割安な株を選ぶということも有用です。

インカムゲインを狙うならここに注意!

 もう一つの投資の利益であるインカムゲインを狙う場合、注目すべきは「配当利回り」です。そのため、銘柄選択の基準がキャピタルゲインを狙う場合と全く異なってきます。

 キャピタルゲインを狙う場合は、主に成長株(業績の伸びが顕著で将来を期待できる株)を探すことになりますが、成長株の多くは配当金の額が少額だったり、そもそも配当金を出していないところもあります。

 でも、インカムゲインを狙う場合は、別に会社が急速に成長している必要はありません。現時点で満足いく水準の配当金を支払っていて、その水準が今後もキープされるなら問題ないからです。

 そこで、まずは「配当利回り」に着目します。このとき、あまり配当利回りが高すぎる会社は、将来配当金が減らされるリスクを株価が織り込んでいる可能性が高いので、例えば3%くらいの会社を選んだ方がリスクは軽減できます。

 その次に、その配当利回りが今後もキープできるかどうかについて、二つの点で確認します。

 一つは業績が安定していて、過去10年間で配当金が横ばいか増加傾向なら合格とします。

 もう一つは配当性向(利益に対し株主に配当する割合)です。これが高いと業績が少し落ち込んだだけで配当金が減らされる可能性が高いので、できれば50%以内の会社にするのが無難です。

最もやってはいけないパターンとは?

 このように、キャピタルゲインを狙うのであれば会社の業績の伸びや割安度に着目しますし、インカムゲインであれば配当利回りや業績の安定性、配当性向などに着目します。

 そのため、どちらの利益を狙うかにより、選択される銘柄は大きく異なります。

 このとき、最もやってはいけないパターンは、キャピタルゲインからインカムゲイン、もしくはインカムゲインからキャピタルゲインへの「すり替え」です。

 例えば、キャピタルゲイン狙いで選んだ株の株価が値下がりを続け、含み損を抱えてどうにもならなくなったとき、「長期保有してインカムゲイン狙いに切り替えよう」というのはよくありません。

 逆に、インカムゲイン狙いで選んだ株の配当金が減らされて株価が大きく下落したとき、「長期保有してキャピタルゲイン狙いに切り替える」というのもお勧めできません。

銘柄選びは、何の利益を狙うかによって異なる!

 このように、インカムゲインを狙うときに選ぶ銘柄と、キャピタルゲインを狙うときに選ぶ銘柄とは異なります。したがって、インカムゲイン狙いで失敗したなら潔く売却するなりして仕切り直しをすべきですし、キャピタルゲイン狙いの場合も同様です。

 銘柄選びをして、実際に投資したらそれで終わりではありません。売却ルールについてもしっかりと決めておき、大きな損失を被らないようにするのもとても重要なことです。