2020年の4月から1年間、あなたはどう動いたか

 2021年度が始まりました。時々、自分の投資状況を振り返ってみることは大切ですが、年末もしくは年度末を区切りとして考えるのは情報も多く入手でき、よいタイミングだと思います。

 そして、2020年度、つまり2020年4月から2021年3月までの投資環境を振り返り、そこで自分がどう投資行動を選択したか考えてみることはとても有意義です。

 何せ、この1年は極端な動きでした。2020年に入ってからの3カ月、まず市場は大きな下落に見舞われました。いわゆるコロナ・ショックです。3カ月で国内株(TOPIX[東証株価指数])は18.5%ダウン、米国株(NYダウ平均株価)は23.2%ダウンとなりました。2020年度は「もっと下がるのでは……」という恐怖から始まったわけです。

 しかし、マーケットはそこから反転、第1四半期末(6月末)には値下がり分の3分の2ほどを回収し、第2四半期末(9月末)までゆっくりと前年末の水準まで上昇を続けました。

 そして、第3四半期に入って以降上昇します。コロナ禍で国内外ともに難しい情勢が続く中、日経平均株価が約30年ぶりの高値を記録するなどし、3月末を国内株39.3%増、米国株50.5%増で終わらせた2020年度でした。

 簡単に振り返ってみると、「大きな下落」と「短期的な回復」があり、その後「横ばい」から「大幅に上昇」という動きが1年の間に起きたことになります。

 2020年度は、投資家としてなかなか得がたい経験をした1年間だったのではないでしょうか。

リスクを取った人、積み立て投資を続けた人が報われた1年

 この1年間は、「相場を読む難しさ」と「積立投資の有意義さ」を感じることのできる期間であったともいえます。

 何せ、米国が新型コロナウイルスの影響を大きく受け、また大統領選挙の混乱にありながら、株価は力強く値動きしたわけですから、この流れに乗ることはなかなか難しいことでした。

 普通に考えれば「またすぐ下がるに違いない。だから手を出さないほうがいい」と思います。これを責めることはできません。

 3月に損失確定させてしまった人も「こんな大変な事態だからもっと下がるに違いない」と考えてしまったわけですし、元本割れリスクを甘く評価していたのなら仕方のないことです。

 しかし、「長期的に考えてリスクを取り続けていこう」と考えたり、「資産の一定割合の投資は継続しよう」と積立投資を継続した人は、この1年で大きく報われることになりました。運用成績は良好なものとなっているのではないでしょうか。

 ただし、今回の市場は回復が早かったということは心にとどめておくといいでしょう。30%くらいの急落が生じたとき、5年以上の回復期間が必要になってもおかしくはないからです。今回はすぐ株価が戻り、幸運であったと思います。

これからどう投資を続けるか あなたのゴールを考えてみよう

 そしてもう一つ考えてみたいのは「これから」です。

 今年度以降、投資をどうしますか。少し自問自答してみましょう。

 ただ継続する、と決めておくだけでもかまいません。しかし、同様の相場が起きたとしても「続けられる」覚悟とスタンスを自分は持ち続けられるか確認をしてみてください。

 もし、怖いと思ったのなら、「投資金額を縮小して続ける」ことを提案します。預金額を増やし投資金額を減らすことは、あなたのリスクを小さくする一番有効な方法です。それでも投資金額については値上がりすればあなたの収益となります。

 投資を止めてみるのも構いませんが、一度止めた車をもう一度発車させるのにはエネルギーが必要になるように、リスタートを先送りするリスクがあります。できれば、投資の継続(毎月の購入金額は減らしてもいい)をおすすめします。

 こうしたマーケット経験を踏まえ、自分は投資経験が増したと自覚できるのなら、「ちょっと積立額を増額してみる」というアプローチもあります。ただし上昇相場に鼻息を荒くしての投資資金投入であれば冷静さを欠く心配もありますから、増額は慎重に行いましょう(高額入金ではなく、毎月の積立額の増額にとどめるなど)。

この1年はきっと、あなたの投資家としての財産となる

 投資を始めてまだあまり時間が経っていない方にとっては、この「2020年度」というのは「経験」という大きな財産となるはずです(正確には大きく下がった2020年1月から3月のマーケット経験も含め)。

 投資経験は、次のステップにおいてあなたの判断に余裕をもたらしてくれます。

 私も生まれて初めて購入した投資信託は、ITバブルの崩壊に直面し、大きく値下がりしました。相場の下落直後は売ることを我慢したものの、完全に回復することを待てずに最後は10%ダウンくらいで手放してしまいました。

 もし手放さずにいたら、今はその頃の水準を大きく上回っています。「値下がりすることもあること」「何もしないで待つこと」を実経験として理解したことは、リーマン・ショックの際に生かされました。

 私のiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)資産は年率8%くらいの成績となっていますが、これはひとえに「一度も売らずに国内外への分散投資を継続し続ける」を実践したからです。リーマン・ショックが来ても、日経平均株価が8,000円台に入っても、一度も投資を止めなかったことで、今の運用益の積み重ねがあります。

 これから先、何度も上昇相場がやってきて、何度も下落基調の時期もやってきます。相場の激しい騰落、特に下落の経験をしたことは得がたい財産となるはずです。

 みなさんもぜひ「2020年度」の成功体験あるいは失敗の経験を肥やしとして、投資の世界と向き合ってみてください。