先週4月2日に発表された3月の米雇用統計は、NFP(非農業部門雇用者数)が予想65万人を大きく上回る91.6万人、失業率が前月の6.2%から6.0%に低下したことから、ドルが買われ、米長期金利は上昇しました。が、平均時給の賃金の伸びが前月比マイナス0.1%となったことから、上昇は限定的な動きとなりました。
欧米がイースター休暇のため、米国の株式市場は休場。金利市場が半日しかオープンしていなかったことも影響していたのかもしれませんが、ドル/円の動きとしては期末のドル買い需要で付けた直近高値の1ドル=110.97円近辺を上回らなかったことから、上昇圧力が鈍ってきているような動きをみせています。
3月のFOMC議事録に注目
今週は、先週発表されたバイデン政権のインフラ投資と、好調な雇用統計が、どのようにマーケットで消化されるのか、あるいは、材料出尽くしや四半期初め・年度初めで調整から入るのかに、注目です。
特に相場の波乱材料になりそうなのが、7日に発表される3月のFOMC(連邦公開市場委員会)議事要旨です。FOMCメンバーが予想した金利見通しでは、中央値は2023年末までゼロ金利の見通しですが、細かくみると、前回12月のFOMCよりも早期の利上げを主張するタカ派が増えています。2023年の利上げ見通しは、12月の5人から7人に増えています。そして、それよりも早めの2022年の利上げを主張するFOMCメンバーが、12月の1人から4人に増えているのです。この2022年の利上げを支持したタカ派4名がどのような背景で主張しているのか、非常に注目されます。
また、利上げの前段階であるテーパリング(資産縮小)開始に関する議論が白熱したのかどうかも注目されます。マーケットは、雇用統計を受けてテーパリングの早期開始期待が高まってきています。議事録がタカ派的な内容だった場合、一段とその期待が高まって長期金利が上昇し、111円を上抜けるのかどうか注目です。上抜けなかった場合、調整がしばらく続きそうです。
米国の雇用者数は、ワクチン普及と感染拡大ペースの鈍化による経済規制の緩和によって、今年に入って増加してきています。昨年の3月、4月の雇用喪失の約2,200万人が、あと850万人でもとに戻るところまで雇用が回復してきました。3月の雇用増91.6万人ペースが続くとすると、850万人は9カ月で回復する計算になります。
FRB(米連邦準備制度理事会)が利上げ開始の条件としていた労働市場の改善が確認されれば、来年早々には金融引き締めの期待が高まってきます。また、直近3カ月の平均増加数53万人だと、16カ月で回復となり、来年初秋に金融引き締めという計算となります。
いずれにしてもパウエルFRB議長の見通し(2023年末までゼロ金利)よりも1年以上前倒しとなります。マーケットはパウエル議長にこのギャップを埋めさせるため、催促相場を仕掛けるのかどうか、注目です。毎月、米雇用統計の雇用者数が発表される度に、この計算をしてみて下さい。利上げ開始時期を推測するひとつの目安になります。
ユーロやポンド、豪ドルやNZドルの動きも要チェック!
また、もう一つ、4月以降の相場の流れで注目したいのは、ユーロやポンド、豪ドルやNZドルの動きです。これら通貨はドル高やそれぞれの通貨の固有の要因によって、3月は下落し、3月末が近づくにつれて、月末・期末要因からか買いがみられ、下落一服となっている状況です。
この3月の下落は、月末・期末月だから調整されただけなのか、4月に入っても、引き続き下落し、これまでの上昇局面の調整が続くのかどうかにも、注目したいと思います。これら通貨の流れの変化が始まったばかりで続落となれば、これら通貨のクロス円も続落し、ドル/円の下落圧力となることが予想されます。
米国におけるワクチン接種者は急スピードで増えています。一回の接種者は1億回を超えたそうです。このままでいくと、数カ月後には、WHO(世界保健機関)が示している、「人口の70%を超える人がワクチンを接種すれば、『集団免疫』状態になる」可能性が高まってきました。そして4月2日、CDC(米国疾病対策センター)は、「ワクチン接種を終えた人は国内外の旅行ができる」と新たな指針を発表しました。接種が所定の回数を終えた者は、自主隔離や検査なしに国内旅行ができるという新指針です。
これによって米国経済はますます上向きそうですが、国内の移動者が増えると感染者が増える恐れもあります。また、旅行や飲食だけで、失われた雇用が3月のような増加ペースで戻ってくるのかどうか、マーケットはまだそこまで楽観的には読み切れていないようです。ここからは毎月の雇用統計の注目度合いがますます高まりそうです。
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