明らかに景気敏感株・割安株が強い状況に

 2012年末からのアベノミクス相場は、スタートから8年以上が経過していますが、この間の株価上昇の中心は成長株でした。中には株価が30倍、50倍、100倍と上昇したものもありました。

 しかし、その成長株がここ数カ月は元気がなく、代わりに海運株、鉄鋼株、機械株、商社株、銀行株といった景気敏感株・割安株の上昇が目立つようになっています。

 成長株500銘柄の指数である「TOPIX500グロース」と、割安株500銘柄の指数である「TOPIX500バリュー」を比べ、どちらが強いかを測る「グロース・バリュー比率」という算出方法があります。

 グロース・バリュー比率=TOPIX500グロース÷TOPIX500バリュー

 これを見ると、2019年に1.15だった比率が大きく上昇、特に2020年のコロナ・ショック後に急上昇し、2020年11月末には1.7に達し、成長株が優位になりました。しかし、その後は4カ月で1.4前後まで急速に下落していて、最近の「景気敏感株・割安株の優位」をよく表しています。

グロース・バリュー比率

出所:tradingview

 筆者は株式投資をスタートさせて23年になりますが、景気敏感株や割安株が成長株より買われる状況を、実は何度も経験しています。2012年末から2013年5月ごろまでの、アベノミクス相場の初期段階もそうでしたし、2003~2007年にかけては鉄鋼株や海運株、銀行株などが大きく上昇し、景気敏感株や割安株が優位となる展開が長期間にわたり続きました。

景気敏感株・割安株の株価上昇はまだ続くのか?

 このように、短期間に景気敏感株・割安株へのシフトが起こり、これらの株の株価は大きく上昇しています。昨年来高値・年初来高値を更新する銘柄も目立ちます。

 しかし個人投資家の方に話を伺うと、特にこれまで成長株メインで投資銘柄を選択してきた方ほど、成長株から景気敏感株・割安株へうまくシフトできなかったという声を聞きます。

 そして筆者の元にも、「今から景気敏感株・割安株を買っても間に合いますか?」という問い合わせが数多くきます。

 これに対しての筆者の回答は「分かりません」としか申し上げられません。もし景気敏感株や割安株がいつまで買われるのかが分かるなら誰も苦労はしません。将来のことは誰にも分からないのです。

 ただ、景気敏感株や割安株は、確かに足元の数カ月、特に2月下旬以降を見ると短期間に大きく上昇していますが、月足チャートで見るとまだまだ上昇の初動で、ようやく頭を持ち上げつつある、という程度の上昇にとどまっているケースが多いのです。

 したがって、景気敏感株や割安株が強い相場がいつまで続くかは分かりませんが、長期間の株価チャートを見る限り、この動きがもうしばらく続く可能性も十分ある、というのが現時点での筆者の見解です。

これから選ぶ景気敏感株・割安株の注意点

1:業績の数値そのものよりも、よい方向へ変化しているか

 景気敏感株や割安株が上昇するときは、例えば「鉄鋼株なら何でも上がる」とか「銀行株が一斉に上がる」など、同じ業種であれば業績に関係なく同じ方向に株価が推移することが多いのです。とはいえ、そんな中でもやはり業績が全く好転しない銘柄よりは、業績がよくなっている銘柄の方が上昇率も大きくなりやすいのも確かです。

 その際、特に景気敏感株の場合に注意すべきなのは「業績が明らかによいかどうか」ではなく「業績はまだまだイマイチでも、よい方向へ変化しているかどうか」に着目すべきという点です。

 例えば前の年に比べて増収増益になっているか、というよりも、「3,000億円の赤字がプラスマイナスゼロにまで改善」とか、「赤字だった来期予想が黒字に転換」といったような、よい方向への変化が起きているだけで、実は株価には大きなプラスインパクトをもたらすことが多いからです。

 逆に、業績が誰の目から見ても明らかによくなるのを待ってから買おうとすると、すでに株価は底値からかなり上昇していて、下手をすると天井間近という可能性すらあります。

 景気敏感株はたとえ赤字継続だったり、まだまだ黒字の額が少なくても、業績がよい方向に変化しているならば積極的に投資対象とすべきというのが筆者の考えです。

2:目標株価の設定は「過去の高値」を参考に

 景気敏感株や割安株の場合、成長株のように業績が年々伸びるというわけではないことと、将来の利益予想が景気次第で大きくぶれるので、目標株価の設定は難しいものです。

 割安株であれば、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)の変化を見て、割安度が解消されたら売却(例えばPER20倍以上、PBR1倍以上)、ということもできますが、景気敏感株ではPERが高い中を株価が上昇することが多いのです。

 したがって、筆者が景気敏感株や割安株の目標株価を設定するときには、過去の株価チャート(特に月足のチャート)を見て判断します。

 景気敏感株や割安株の場合、2018年前後、2015年前後、2006年前後に高値を付けている銘柄が多く、もしそれらの中で2006年高値が最も高く、次いで2015年高値、2018年高値となっている場合は、まず2018年高値が目標株価となります。それをクリアしたら次は2015年高値が目標株価、というように目標株価を順に高くしていきます。

 そして、株価が短期間に上昇して目標株価に到達した場合は、利益確保のため保有株の一部を売却することを検討します。上昇スピードがそれほど速くない場合は売却しないこともあります。

3:売買の基本ルールは25日移動平均線を割り込んだら売却

 ただ、マーケットの環境によっては、過去の高値を大きく超えて上昇することもありますから、売買の基本ルールは筆者であればいつも通り25日移動平均線を割り込んだら売却、再び超えたら買い直し、という形で株価上昇が続く限りついていけるようにはしています。

 くれぐれも高値づかみには十分気を付けながら、上昇トレンドに素直についていくことが、成功の近道です。