いま米国では1日平均249万回、新型コロナワクチンが投与されています。これまでの累計投与回数は1.3億回で、1回でも接種を受けた人は8,550万人に上っています。これは3.28億人の国民のうち、26%が1回目の接種を済ませた計算になります。

 一方、ユーロ圏に目を転じると1回でも接種を受けた人は人口の9.3%にとどまっています。

 つまり新型コロナワクチン接種のスピードに地域差が出てきているのです。そのことは「今年は欧州への観光旅行はムリだ」ということを意味します。この事情は他の国でも似たり寄ったりです。

 米国の国民は今年、海外旅行は諦め、国内の行楽・レクリエーションで我慢するしかないのです。そこで今回は、このようなトレンドで恩恵を受ける銘柄を紹介します。

恩恵に期待株1:デイブ&バスターズ

 デイブ&バスターズ(PLAY)は1982年に創業されたゲームセンターとスポーツバーとレストランを合体させたエンターテインメント・レストランです。

 同社は米国の40州で139店舗を展開しています。そして、カナダとプエルトリコにも店舗があります。

 同社のターゲット顧客は21~39歳の若者です。ゲームセンターやスポーツバーと聞くと「男性客が中心かな」と想起しますが、来店客の男女比は半々です。

 同社の1店舗当たり売上高は1,050万ドルで、これはチーズケーキファクトリー(CAKE)と並んで、レストランチェーンでは最も高くなっています。

 同社店舗の売上高が大きい理由は、単にレストランを運営しているだけでなく、ゲームセンターとスポーツバーを併設していることによります。つまりゲーム、ビールなどの売上高が多いということです。

 ゲーム、ビールは粗利益率が高いため、同社の粗利益率は82.8%とレストラン業界で最も高くなっています。EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)マージンも27.2%で業界最高です。

 同社の施設は店内で楽しんでこそ意味があるので、新型コロナウイルスで「3密」を避けなければいけなくなった時、大打撃を受けました。ところが、同社の会計年度は2月2日締めで、新型コロナで外出禁止令が発令される直前に会計年度が終わったため、その悪影響は2020年の決算にはいっさい現れていません。

デイブ&バスターズの1株当たり業績(2月2日締め)

出所:同社年次報告書より筆者作成
【略号の読み方】
DPS:1株当たり配当
EPS:1株当たり利益
CFPS:1株当たり営業キャッシュフロー
SPS:1株当たり売上高

 しかし、2021年度のEPS(1株当たり利益)はコンセンサス予想によると▲4.88ドルくらいに落ち込むとみられています。

 今年の夏ごろまでには若者層にも新型コロナワクチン接種の順番が回ってくるので、それ以降、来店客が急増することが予想されます。

恩恵に期待株2:キャンピングワールド

 キャンピングワールド(CWH)は1966年に創業された全米最大のRV(キャンピングカー)の小売店です。2020年末の店舗数は171でした。

 同社の店舗は高速道路沿いにあり、広い敷地にたくさんのキャンピングカーをそろえています。店員はキャンピングカーに関する専門知識を持っています。これらの店舗には整備工場も併設されています。

 同社はコロラド州デンバー、ケンタッキー州ボウリンググリーン、ノースカロライナ州グリーンビルにコールセンターを設置し、得意客から問い合わせがあれば、すぐに応えられる体制を整えています。2020年には260万回、顧客からの電話問い合わせに応えました。

 同社の「グッドサム」プログラムに加入するとキャンピングカーが故障したとき、すぐに救援が駆けつけます。車両の定期整備、点検、メンテナンスなども同社の店舗でできます。

 2020年度の売上高は54.4億ドル、粗利益は17億ドルでした。売上高に占める新車販売の割合は52%です。粗利益に対得る貢献という意味では新車販売は30%に過ぎず、ファイナンシング、サービスなどの比率が増えます。「グッドサム」の故障保険プラン加盟者数は68万人です。

 新型コロナで国立公園が閉鎖されたときは、RVの利用率が下がりました。

 同社のRVのうち69.3%はソア・インダストリーズから、27.9%はフォレストリバーから購入しています。これらのRVメーカーの経営が傾くと同社も影響を受けます。

 2月25日に発表された同社の第4四半期決算はEPSが予想22セントに対し48セント、売上高が予想10.8億ドルに対し11.3億ドル、売上高成長率は前年同期比+17.5%でした。

 キャンピングワールドの1株当たりの業績は、下のチャートのようになっています。

キャンピングワールドの1株当たり業績

出所:同社年次報告書より筆者作成
【略号の読み方】
DPS:1株当たり配当
EPS:1株当たり利益
CFPS:1株当たり営業キャッシュフロー
SPS:1株当たり売上高

恩恵に期待株3:セントジョー

 セントジョー(JOE)はフロリダ北西沿岸部で集合住宅、団地、ホテル、ショッピングモール、工業団地などを展開している不動産開発業者です。

 同社は17万ユニットのマンション、2,200万平方フィートの商業施設、工業団地、3,000室のホテルを展開しています。

 この地域はエメラルド・コーストと呼ばれ、全米で最も美しい白い砂浜が続いています。このため春から秋までは海水浴客が、冬はカナダなどの寒い地域から豪雪を避けるスノーバードと呼ばれる季節移住者が訪れます。また、フロリダは高齢者のリタイアメント・コミュニティーとしても人気があります。

 同社は1936年に創業され、もともと広大な松林を所有し林業に従事していました。しかし林業の採算性が悪化したため、その土地を利用してリゾート・アパートメントやバケーション・ハウスの開発に乗り出したというわけです。

 売上高の47%は集合住宅から、30%はホテルから、23%は商業施設と工業団地から上がっています。

 同社の旗艦ホテルはウォーターカラー・インとザ・パール・ホテルです。これらの中核ホテルの周りに、景観に配慮したマンションを建設し、全体としてバケーション・コミュニティーを形成するわけです。この「街づくり」のプロデュース力が開発案件の収益性や投資リターンを大きく左右します。

 2020年は新型コロナの影響で旅行産業は大打撃を受けたのですが、セントジョーの資産が集中しているウォルトン郡は逆に新型コロナで恩恵を受けました。その理由は、同地域を訪れる観光客の87%はマイカーで近隣のジョージア、アラバマ、テキサス、テネシー、ルイジアナ、ミシシッピなどの州からビーチに来るので、公共交通機関が使えなくなっても何の支障もないからです。

 ウォルトン郡に行楽に来る宿泊客の多くは家族全員で訪れ、66%はバケーション・レンタルや滞在型コンドミニアムを使います。そのことも「3密」を避けることを可能にしているわけです。滞在日数は6日間です。またビーチは広大で人混みはひどくありません。

 このため、2020年のウォルトン郡への観光客は、前年比+3.7%の446万人でした。観光客の支出は前年比+2.6%の36億ドルでした。客室平均単価は前年比+5.7%の292ドルでした。

 いま米国の空の旅は新型コロナに対し、いろいろ措置が講じられている関係でチェックが厳しくなっており、いまだ旅行しにくい状況です。そのことはマイカーで行ける行楽地が今年も大人気になることを示唆しています。

 セントジョーの1株当たり業績は下のチャートのようになっています。

セントジョーの1株当たり業績

出所:同社年次報告書より筆者作成
【略号の読み方】
DPS:1株当たり配当
EPS:1株当たり利益
CFPS:1株当たり営業キャッシュフロー
SPS:1株当たり売上高

恩恵に期待株4:MGMリゾーツ

 MGMリゾーツ(MGM)は1986年に設立されたカジノ、ホテルの持ち株会社です。同社はネバダ州ラスベガス、マカオなどで営業を展開しています。主なカジノはMGMグランドラスベガス、マンダレーベイ、ルクソール、エクスキャリバー、ベラジオ、ニューヨークニューヨーク、MGMコータイなどです。

 新型コロナの影響で2020年3月は全てのカジノを1カ月間、閉鎖しました。その後6月ごろから部分的に営業を再開していますが、劇場でのアトラクションなどは中止されたままです。

 2020年の同社のラスベガスに所在するカジノのテーブルゲーム収入は4.7億ドルにとどまりました。ちなみに前年は7.89億ドルでした。スロットマシン収入は6.49億ドル、前年は11.9億ドルでした。客室売上高は6.6億ドル、前年は18.6億ドルでした。レストラン売上高は4.7億ドル、前年は15.2億ドルでした。エンターテインメント売上高は3.8億ドル、前年同期は11.5億ドルでした。

 MGMコータイのVIPテーブル収入は2.12億ドル、前年同期は12.4億ドルでした。メインフロア・テーブルゲーム収入は4.7億ドル、前年同期は19億ドルでした。

 このように同社のカジノは新型コロナの影響でとても苦しい状態にあります。しかし、コロナワクチンが行き渡り、経済が再開されると客足が戻ってくると期待されます。

 MGMリゾーツの1株当たり業績は下のチャートのようになっています。

MGMリゾーツの1株当たり業績

出所:筆者作成
【略号の読み方】
DPS:1株当たり配当
EPS:1株当たり利益
CFPS:1株当たり営業キャッシュフロー
SPS:1株当たり売上高

恩恵に期待株5:ポラリス

 ポラリス(PII)はORV(オフロード車)、スノーモービル、オートバイ、ボートを作っています。

 売上高に占めるORVとスノーモービルの比率は64%です。オートバイは8%、ボートは9%です。

 また同社は売上高の82%を米国から売り上げています。

 休日にORVを乗り回すライフスタイルは米国でだんだんポピュラーになっています。ORVは人影の少ない荒地までトレーラーで運んでゆき、そこで楽しむ関係で、コロナでもほとんど影響を受けません。

 2020年の売上高は前年比+4%の70億ドルでした。2021年の売上高は前年比+13%から16%の79.5億ドルから81.5億ドルを見込んでいます。

 ポラリスの1株当たり業績は下のチャートのようになっています。

ポラリスの1株当たり業績

出所:同社年次報告書より筆者作成
【略号の読み方】
DPS:1株当たり配当
EPS:1株当たり利益
CFPS:1株当たり営業キャッシュフロー
SPS:1株当たり売上高