債券の金利が明確に上昇してきた

 経済ニュースなどで最近、よく話題に上るのが「金利上昇」です。確かに、米国の10年国債の金利は、コロナ・ショック時の2020年3月には0.5%ほどでしたが、現在は1.6%ほどまで上昇しています。

 米国ほど日本の金利は明確な上昇となってはいませんが、それでもゼロ%近辺に貼り付いていた日本の10年物国債の金利も、2月末には0.17%まで上昇、その後はやや反転するも0.1%近辺で推移しています。

 そして金利が明確に上昇してくると気になるのが、金利と株価の関係です。投資の教科書でも証券会社のサイトでもみな同様に、金利が上昇すると株価は下落する、と書かれていますから、心配になる方も多いのではないでしょうか。

金利が上昇すると株価が下落する理由

 なぜ金利が上昇すると株価が下落するのでしょうか。これにはいくつかの根拠がありますが、代表的なものをご紹介します。

より安全資産へ投資資金が移動するため

 まず、金利が低いと債券に投資しても少ない金利しか手に入らないため、債券への投資は控えられ、株式に投資資金が向かいやすくなり、株価が上昇するといわれています。

 一方、金利が上昇すると、逆に債券投資への魅力が増すため、値下がりリスクのある株式を売却して債券へ投資する流れができ、株価が下落するのです。

株価の理論値が下がるため

 また、株価の理論値を計算するとき、その会社が将来得るであろう利益やキャッシュ・フローを現在価値に割り引いて理論値を出します(割引現在価値)。

 金利が上昇すると、利益やキャッシュ・フローは変わらなくても割引率が大きくなるために、株価の理論値が下がります。そのため株価が下落するといわれています。

本当に金利が上昇すると株価が下落するの?

 投資の教科書ではみんな「金利上昇=株価下落」と書かれています。また、インターネットで検索しても、同様に金利が上昇すると株価が下落する、という説明ばかりです。

 でも、これをうのみにすることが、大きな失敗につながりかねません。

 例えば、2016年7月に1.4%だった米国10年物国債の利回りは、2018年11月には3.2%まで上昇しています。かなりの上昇幅だったといえるでしょう。

 ではこの間、米国株は下落したかといえば、そんなことはありませんでした。NYダウ平均株価も、ナスダック株価指数も、多少の上下はあるものの順調に上昇を続けていたのです。また、日経平均株価も多少の変動はありましたが、この間、同様に上昇しました。

 このように実際は、教科書とは正反対の動きとなることもあります。教科書に書いてあることや、ネットで調べたことをうのみにするのではなく、ご自身で過去の金利と株価を調べて、本当に教科書通りの動きなのか、必ず確認するクセをつけることをお勧めします。

金利が上昇しても株価が上昇しているならば問題なし

 もし、2016年7月~2018年11月の金利上昇局面において、教科書に書いてある通りのことを信じてしまったら、おそらく「金利が上昇しているから株を持っているのは危ない!」と思うはずです。そして、株を買わずにいた結果、株価の大きな上昇により利益を得る機会を失ったことになってしまったことになるのです。

 金利と株価の関係だけではなく、教科書に書いてあることは決して間違いではありませんが、マーケットにおいては例外的な動き、教科書とは異なる動きが往々にして起きます。そのため、「教科書に書いてあるから」ではなく、教科書に書いてあることと違うことが起きるかもしれない、と常に用心して行動すべきです。

 では筆者はどうしているかといえば、このコラムでも散々お伝えしていることですが、「株価のトレンドに従って動く」ことを徹底しています。要は、金利が上昇しようが下落しようが、株価が上昇トレンドになったら買い、上昇トレンドが継続する限り保有を続けるということです。

 これを行うだけで、株価が教科書通りの動きにならなくても対応することができます。

 次回は、業種ごとに見た金利上昇局面での対応策について、過去の経験則も踏まえてご説明したいと思います。