自分の価値を底上げ!資格取得は自分力を上げる絶好の機会

 コロナ禍で収入が下がったり、ボーナスが期待できないなど、業種や職種によっては景気の悪化が取りざたされています。当事者はもちろん、そうでない人も、もはや他人ごとではないという漠然とした不安があるのでは? 

 コロナショック後の新しい日常に焦らないためには、いつの時代でも使える、応用できるスキルや能力を磨いておくことが重要です。

 今回取り上げる、資格にまつわるマネーハックは、単に年収アップのためだけではなく、資格取得の過程で身に着けられる、知識や情報、仕事への活かし方など、自分の価値向上につながります。不測の事態に動じないための、ビジネスパーソンとしての力を伸ばす一端として、取り組んでみてはいかがでしょうか?

「まず大前提として、この資格をとれば万事解決! という資格はありません。資格を生かせるかどうかはその人自身がどう働きたいか、さらに言えばどう生きたいか、という意思に紐づいているからです」と語るのは、キャリアコンサルタントとしてこれまで多くの人のキャリアアップについてアドバイスをしてきた西村英貴氏。生涯使えるスキルが身につく資格について、お話を伺いました。

※下記で紹介している資格概要/受験資格/取得費用などは記事作成時調べです。資格取得を検討する際は、必ず現状についてご確認ください。
 

お話を伺った人

西村英貴氏
弁護士ドットコム
キャリア事業責任者/LECキャリアコンサルタント養成講座講師

▼Profile
株式会社インテリジェンス・株式会社リクルートキャリアを経て、弁護士ドットコム株式会社に入社し、2016年より弁護士ドットコムキャリア事業部の責任者として従事。15年超、個人のキャリアと企業の採用に関わる。
保有資格:2級キャリコンサルティング技能士(国家資格)、米国CCE,Inc.認定GCDF−Japanキャリア・カウンセラー、一般社団法人 日本産業カウンセラー協会認定 産業カウンセラー

【1】リモートワークで役立つ有望資格!

資格概要ː個人情報の保護に精通し、適正な取扱や安全管理を身に付けたエキスパートの証明。専門的見地から運用・管理、またはその方面でのアドバイスを行う。個人情報保護法に対する正しい理解と知識が必要であり、「個人情報保護士認定試験」に合格する必要がある。
受験資格:国籍・年齢等の制限なし
取得費用:10,000円(受験料)

西村さんからのアドバイス

「コロナ禍をきっかけにリモートワークやオンライン会議を取り入れる企業が増え、家庭からの企業システムへのアクセス増加など、情報漏洩の危険度も高まっています。個人情報の持ち出しが増えてきた背景から、個人情報保護法に関する意識が高まっていることも確か。基礎的な法律や、情報の活用方法や制限など、個人情報管理の基礎的なリテラシーが学べる「個人情報保護士」は、コロナ禍はもちろんのこと、コロナ終息後の社会でも役立つと思います」(西村氏)

自分自身の業務においても、法規範逸脱が防げるため、配慮のある慎重な仕事ぶりをアピールすることも可能。職場からの信頼獲得にも役立ちそうです。

リモートワークで差をつける!ワンモアアドバイス

「ZOOMやオンラインの非対面コミュニケーション下では、対面時以上に、“相手に自分の意図を正確に伝える技術”が必要となります。「話し方に関する講座」など、一見資格とは違う分野の口座でも、受講することで日々の自身のコミュニケーションを見直すきっかけとなり、オンラインでも、双方誤解がなく、短時間で意図を伝えることができ、結果として業務効率もアップします」(西村氏)

【2】職場衛生の安全守護神!

資格概要ː常時50人以上の労働者を有する事業場では、衛生管理者免許保有者の中から労働者数に応じて一定数以上の衛生管理者を選任し、安全衛生業務のうち、衛生に係わる技術的な事項を管理させることが必要です。第1種と第2種に分かれており、前者は全ての業種において衛生管理者となることが可能です。後者は有害業務と関連の少ない一定の業種においてのみ衛生管理者となれる資格です。
受験資格:規定あり。受験資格の詳細は、公益財団法人 安全衛生技術試験協会 の試験情報ページへ。
取得費用ː6,800円(受験料/第1種、第2種とも)

西村さんからのアドバイス

「通常、企業の中にあって労働衛生管理を担う資格なのですが、新型コロナウイルス感染症の拡大によって、小規模の企業や店舗、施設、あらゆる場所で衛生管理は必須のファクターになりました。店舗設計を行う人、接客業に携わる人、旅行業に携わる人などにとっても、アフターコロナのニューノーマルとして、衛生管理の知識をしっかりと身に付けることは、自身の活躍の場をひろげることにつながるかもしれません」(西村氏)

【3】オンライン主流時代!ITの基礎固め

資格概要ː Word、Excelなど、マイクロソフト オフィス製品の利用スキルを証明する資格です。学校でも企業でも必ず必要となるパソコンスキルを習得し、業務や作業の効率化を実現できます。Word、Excel、PowerPoint、Access、Outlookと試験科目が個々に独立しており、WordとExcelにはエキスパートと呼ばれる上級レベルも用意されています。
受験資格:国籍・年齢等の制限なし(未成年者は保護者の同意が必要)
取得費用:1科目受験料:10,780円(学割価格:8,580円)

西村さんからのアドバイス

「多くの企業でリモートワークが採用されるようになって、これまで使ったことのないツールやソフトを覚えた、という人も多いはずです。今後は、「伝えたい相手や情報に合わせて使うツールを選べる人」が、円滑なコミュニケーションを実現できる時代になります。例えば、エクセルとスプレッドシート。似たようなツールでもその設計思想は違いますし、相手が必ず自身と同じツールを常用しているとは限りません。特に非対面で相手を説得する際には、プレゼン資料の完成度はより重要になるでしょう。適切な資料を効率よく相手のニーズに合わせて過不足なく作れる力を身に付けて、より柔軟なコミュニケーションが出来るようになると思います」(西村氏)

オンライン業務に強くなる!ワンモアアドバイス

「IT企業の新入社員などに取得が奨励される「ITパスポート」もMOS同様、ITの基礎知識を学ぶ土台になるものです。これを取得することですぐに昇給や昇進に結びつくというものではありませんが、オンライン業務が急激に増えている今、この基礎固めこそ、早いうちに手をつけておきましょう!例えば、ZOOMの背景の変え方、なんていう細かいことでも、今の時代知っているだけで重宝されたりします」(西村氏)

【4】コンプライアンスは全企業人の必須教科!

資格概要:あらゆる職種で必要とされる、ビジネスにまつわる法律知識を習得する資格です。3級~1級まで設けられており、1級については、ビジネス全般にわたって法務知識を保有し、その知識に基づいて多面的な観点から高度な判断と対応ができることが条件となります。
受験資格:国籍・年齢等の制限なし(2級・3級の併願可能。ただし1級は2級合格者のみ受験可能)
取得費用:約17,930円(1級の公式テキスト代+受験料)

西村さんからのアドバイス

「企業内で法務、労務に関わる人が取得しようとされる資格です。しかし、ビジネスにおいて契約締結やリスク管理を適切に行うことは、どの職種においても重要なこと。特に近年はコンプライアンス遵守が必須条件です。このような時流にすぐに対応し、それをブーストする資格を持っていることはとても有利。仕事の質を上げ、社内での信頼を獲得できることでしょう」(西村氏)

【5】専門資格獲得で本業と二毛作も視野に

資格概要ː 高度な商業簿記・工業簿記(原価計算を含む)を修得し、財務諸表の数字から、経営内容を把握できるなど、企業活動や会計実務を踏まえた適切な処理や分析を行うための資格です。企業の経営管理、経理担当者に求められます。
受験資格:国籍・年齢等の制限なし
取得費用:約6,230円(2級の公式テキスト代+受験料)

西村さんからのアドバイス

「知識ゼロの段階から勉強して修得するには、やや難易度が高く、時間もかかりますが、経理系の転職活動では、応募前提として求められやすい資格ですし、数字から企業を読み解けるという強みがあります。難易度の高い資格について効率的に学ぶには、講座などを受けるのが有効ですが、費用も気になるところ。しかし近年、従業員の生涯学習を支援してくれる企業も多くあります。まずは自分の会社の福利厚生の制度などをチェックしてみてはいかがでしょうか」(西村氏)

副業としても退職後のキャリアとしても有効!ワンモアアドバイス

「お勤めの傍ら、専門知識を生かした仕事をしたい、人の役に立ちたいといった方におすすめなのがファイナンシャルプランナー、キャリアコンサルタントといった国家資格です。資産や人生に関わる専門家の需要はなくなることはありません。本業以外に、自分の強みを生かしながら「もうひとつのお財布」を持つことは、キャリアの幅を広げることはもちろん、生活の安心感にもつながると思います」(西村氏)

資格で自分力アップを目指す人に!

 最後に、これから資格取得を考える人に対して、西村氏からメッセージをいただきました。

「どんなに難易度の高い資格を持っていても、その前提として、自身がどういうビジネスパーソンでありたいか、どう生きていくのかという観点がなければ「宝の持ち腐れ」になってしまうリスクがあります。

 自分のどんなスキルや特性を活かすことで、どのようなニーズをもった顧客や対象者に、どんな価値を提供するのか。言ってしまえば、自らがサービスの提供者である、その当事者であるという認識、意欲を持てることが一番重要なのだと思います。その延長線上に、自らのそのスキルを公に証明することが可能な資格があるのであれば、目指すのは当然ですし、そのための勉強はきっと「やらされ感」はないはずです。

 企業内でも、自身の仕事に当事者意識を持ち取り組めている人は、評価もされていると思います。独立すれば、なおさら残酷なまでに市場評価を受けます。

 ひとつの財布で生きていくことが難しくなるかもしれない今、有効な資格は人生のリスクヘッジにもなりますし、生き方の選択肢を増やすことにもつながります。

 この新型コロナウイルス感染症の拡大は、間違いなく社会の価値観を大きく変えました。まだ変えている途中なのもしれません。当然不安になることの方が多いと思います。

 一方で、それは私達の働き方、生き方を変えるチャンスになる側面も持っているのだろうとも感じています。

 資格取得は、手段でしかありません。しかし、これからの人生をどう生きるかというコアを取得動機としてとった資格は、きっとこれからの自分に自信をつけてくれると思いますし、セルフプロモーションをする上で大きな武器になってくれるはずです」(西村氏)

 単なるスキルアップだけでなく、自分の可能性を広げ、人生の支えにもなる存在という視点で、資格を見直してみるのはいかがでしょうか。