日経平均は金曜に一段高。株価上昇に弾みがつきそう

 先週の国内株市場ですが、週末3月12日(金)の日経平均は2万9,717円で取引を終えました。前週末終値(2万8,864円)からは853円高、週足ベースでも3週ぶりに上昇へ転じています。

■(図1)日経平均(日足)とMACD(2021年3月12日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 あらためて先週の日経平均の値動きを振り返ってみると、週初の8日(月)の陰線と、週末12日(金)の陽線の二本のローソク足が特徴的となっています。

 まず、8日(月)についてですが、前週末から大きく反発し、2万9,000円台を回復してスタートしたものの、25日移動平均線が上値を抑える格好で上げ幅が縮小していき、結局この日は前週末終値を下回ったことで長い陰線が形成されました。その後の9日(火)や10日(水)、11日(木)の取引もこの陰線の範囲内で推移しました。

 こうした動きがガラリと変わったのが週末の12日(金)です。株価が一段高となり、長い陽線を形成しました。これにより、25日移動平均線を上抜けたほか、これまでのレポートでも指摘していた、「上値ライン」も超えていて、今後の株価上昇に弾みがつきそうな格好となっています。

 このまま、下段のMACDもシグナルを上抜けて上昇に勢いが出てくれば、12日(金)の終値(2万9,717円)の株価水準を踏まえると、3万円台が視野に入ってもおかしくはないと言えます。

ボリンジャーバンド、TOPIXの状況も改善

 では、日経平均3万円台乗せについて、別のテクニカル市場でも見ていきます。下の図2は日経平均(日足)のボリンジャーバンドです。

■(図2)日経平均(日足)のボリンジャーバンド(2021年3月12日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週の値動きをボリンジャーバンドで見つめ直してみると、日経平均は▲1σ(シグマ)の辺りで下げ止まり、中心線である25日移動平均線を超えてきたところまで反発してきたことが分かります。

 このまま+1σを目指せるかが今週の焦点になりますが、12日(金)時点での+1σ(3万47円)はちょうど3万円台水準でもあるため、多くの相場参加者が意識しそうです。

 ちなみに、同じ12日(金)時点の+2σ(3万602円)は、2月16日の直近高値(3万714円)のちょい手前の株価水準です。この水準で株価上昇が止まり、いわゆる「ダブルトップ」を形成するのか、それとも通過点となるのかはまだ分かりませんが、現時点で想定できる上昇余地になります。

 また、TOPIX(東証株価指数)の状況はさらに改善していると言えます。

■(図3)TOPIX(日足)のボリンジャーバンドとMACD(2021年3月12日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 TOPIXも25日移動平均線や「上値ライン」を超えてきましたが、日経平均がまだ達成していない、ボリンジャーバンドの1σ超えや、MACDのシグナル上抜けも達成しています。

FOMC・日銀会合と米国株市場の動きに注意

 以上のように、足元の相場を日足ベースのチャートで捉えると、「かなり前向きで上方向を目指していく」というのが基本的なシナリオになりそうですが、それでも気をつけておきたい点がいくつかあります。

 1つ目は、FOMC(米連邦公開市場委員会)が今週の16日(火)~17日(水)、日銀金融政策決定会合が18日(木)~19日(金)に予定されていることです。とりわけ、今回の日銀会合ではETF(上場投資信託)買いを含めた緩和的な金融政策の見直し・点検の結果が公表される予定となっており、結果が出る19日(金)の後場の初期反応に注目が集まりそうです。FOMCについても、直近の金利上昇に対するパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の見解と今後の動きについての示唆が注目されます。

 そのため、日銀会合を前にして、(1)「ひとまず行けるところまで戻りを試し、会合の直前に利益確定売りに押される展開」、(2)「結果を見極めるまで様子見のもみ合いが続く展開」、(3)「警戒モードで売り優勢の展開」の3つが今週の値動きとして想定されることになります。現時点では(1)と(2)の可能性が高そうですが、相場のムードが改善しているとはいえ、いざ取引となるとタイミングが難しくなるかもしれません。

 2つ目は、米国株市場の動きです。

■(図4)米NYダウ(日足)とRSI(14日間) (2021年3月15日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週の米NYダウ平均株価は連日で史上最高値を更新するなど、上値を伸ばす展開となりました。NYダウについても「上値ライン」を超えたあたりから上昇に勢いが出ていることが分かります。

 ただ、株価が高値を更新する一方で、下段のRSIの値は切り下がっており、いわゆる「逆行現象」のように見えるなど、気になる点も出てきています。

 足元の株式市場は、先月末からの米長期金利(米10年債利回り)上昇に対する警戒の余波がくすぶる中、IT・ハイテクなどのグロース(成長株)がさえない一方、新型コロナウイルスワクチンの接種進展をはじめ、経済指標や企業業績の改善、米追加経済対策への期待感で、景気敏感株などのバリュー(割安株)が選好されている構図ですが、先週は米金利上昇への不安が落ち着き始めたことにより、グロース株にも買いが入って全体として強い動きを見せました。

 とはいえ、期待の追加経済対策は先週に成立しましたし、今週はFOMCの金融政策イベントも通過することになるため、これまでの株高材料が一巡することになります。一巡後も米国株が継続的に上昇できるかが焦点ですが、日本株は米国株から一足遅れでこれから上昇しようとしている状況だけに、米国株の失速には注意です。

 この他にも、「政治的な動き」や「新型コロナウイルスの状況」という伏兵も存在します。

 政治的な動きについては、今週17日(水)に、1月下旬に株式市場に荒れ模様をもたらした「ゲームストップ」株の取引をめぐる問題についての公聴会が米議会で開かれるほか、日本国内でも、15日(月)に総務省への接待疑惑でNTT社長が参議院で参考人招致される予定です。

 また、日本国内の新型コロナウイルス感染者が思うように減少していない点も注意です。首都圏を中心に延長となっている緊急事態宣言の再延長の議論もなされていますが、日本政府は五輪開催を視野に入れている以上、慎重に対応していくものと思われます。開催に伴う経済効果よりも、開催のために経済活動を抑制させるマイナス面が目立ってしまうことも考えられ、新規感染者の動向に敏感になっていきそうです。

 そのため、今週は株価が上を目指していくのがメインシナリオではあるものの、失速への警戒感も残されており、「相場は不安の崖をよじ登っていく」ことができるかが試される週になりそうです。