過去3月の推移と今回の予想値 

※矢印は、前月からの変化

2月雇用統計の予想

 3月5日、BLS(米労働省労働統計局)は2月雇用統計を発表します。市場予想によると、失業率は1ポイント上昇して6.4%。NFP(非農業部門雇用者数)は前月より10万人超上回る15.0万人増加。平均労働賃金は、前月比0.2%増、前年比5.3%増となっています。

 失業率は昨年4月に14.7%を記録してからは毎月順調に低下しています。しかし、一時解雇者や就職をあきらめた人を含めると、実際の失業率は、雇用統計の6%よりむしろ10%に近いと、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長は指摘。ブレイナードFRB理事やイエレン財務長官も同じ懸念を口にしています。

「隠れ失業」は所得水準によって異なり、所得の下位4分の1の失業率はさらに悪く、約23%に上ります。状況が改善されなければ「米国の経済成長に長期的な影響を与える」とFRBは警告しています。

1月雇用統計のレビュー

 米労働市場の動向は、引き続き新型コロナ感染とその拡大を食い止めるための努力(ロックダウン)に影響を受けています。

 1月の雇用は、専門職やビジネスサービス、教育部門で顕著な増加が見られましたが、レジャー、接客業、小売業やヘルスケア、そして運輸業部門の減少によって相殺されました。

 1月の失業率(6.7%)は0.4ポイント下がり6.3%になり、失業者は1,010万人まで減少。失業率、失業者数ともに昨年4月よりも大幅に改善していますが、コロナ流行前(失業率3.5%、失業者580万人)に比べると依然として高水準にあります。

 1月の失業者のうち、一時解雇者(レイオフ)は270万人。昨年4月の1,800万人に比べ大幅に減少しましたが、2月時点よりもまだ200万人多い状況。永続解雇者(パーマネント・レイオフ)は350万人と横ばいで、2月時点よりまだ220万人多い。労働参加率はほぼ変わらず61.4%で、2月時点に比べると1.9ポイント低い状況。

 平均労働賃金は、前月比0.2%増、前年比5.3%増。現在は低賃金労働者の雇用変動が激しく、傾向分析はまだ困難。

新しい仕事スタイル「WFH」が定着

「WFH」という働き方について、耳にしたことはあるでしょうか。WFHとは、「Work From Home(ワーク・フロム・ホーム)」の頭文字をとったもので、日本語でいえば「在宅勤務」と同じ意味です。新型コロナの大流行が契機となって、米国では今、WFHが新しい働き方として定着しつつあります。

 WFHの是非については多くの議論があります。在宅勤務によって、長時間の通勤や窮屈な仕事場環境から解放されるというメリットがある一方で、孤独感にさいなまれたり、健康上の不安を訴えたりする人が増えています。

 米アトランタ連銀のレポートによると、米国では現在、会社員の35%以上が平均して週に1日WFHを行っています。WFHによる勤務日数は増加傾向にあり、現在では週の25%を占めるまでになっています。また、今後も週に1日以上のWFHの継続を望んでいる人は、コロナ感染拡大中だった約1年前からほとんど減っていません。

 このようなことから、WFHは緊急対策というよりも、一般的な仕事スタイルとして定着しつつあるといえます。アフター・コロナになっても、平均して週の10%はWFHになると予想。米経済全体でWFHが占める割合は、ビフォー・コロナに比べて約3倍に増加することになります。

アフター・コロナは「ハイブリッド型」でいこう!

 しかし、ここに興味深い調査結果があります。

 約1年前、多くの企業は、アフター・コロナの仕事の10%は完全にリモートに切り替わるだろうといわれていました。ところが今年の1月時点の調査によると、その割合は6%にとどまっています。イメージよりも「少ない」印象です。

 多くの企業経営者がアフター・コロナの仕事スタイルとして、「ハイブリッド型」を推進しています。ハイブリッド型とは、WFHとRTOを組み合わせる仕事スタイルで、従業員は少なくとも週に1回は会社に出勤する一方、在宅勤務のみの割合は徐々に減らしましょうというもの。RTOは「Return To Office、リターン・トゥ・オフィス」の頭文字をとったもので「会社に戻る」という意味。働き手がどこにでも住める、あるいは会社がどこからでも雇用できるといったスタイルよりも現実はかなり限定的になりそうです。WFHの偏在化が企業文化を滅ぼしてしまうと危機感を抱く経営者がそれだけ多くいるということでもあります。

「銀座で飲み会」は平成のメモリー?

 NY市のマンハッタン空き室率は、過去20年間で最悪の15%に上昇しています。これは米国に限ったことではなく、日本でもハイブリッド型の仕事スタイルが主流になれば、(たとえ週1回は出社するとしても)都心部に通勤するサラリーマンの総数は大きく減ることになります。

 オフィス街のレストランやコーヒーショップの需要は低くなります。銀座のような場所で仕事帰りにショッピングや食事を楽しむ機会も減っていきます。都心部の繁華街での支出は、コロナ前に比べ5%から10%減ったという調査結果が出ています。WFHが仕事スタイルとして根付くなかで、都心部での消費縮小は今後も続くことになり、その地区の税収や不動産価格にも長期的な悪影響を及ぼすことになります。