金融株の決算とは対照的に、さえない決算結果も出てきている米国企業の決算。しかし、ヘルスケア関連では、市場予想を大幅に上回り、今後も利益成長が期待できる銘柄があります。今回はその5銘柄(ISRG、HCA、DOV、UNH、DHR)を紹介します。このうち、HCAやUNHは製造業ではないため、今後懸念される原材料の不足や高騰から、直接の影響を受けにくい点でも魅力があります。不透明な部分が多いものの、バイデン政権の施策から、UNHは健康保険拡充の面で、DOVは環境保全推進の面で、追い風を受ける可能性があります。

1.インテュイティブサージカル(ISRG)

・何の会社?

 アーム型の医療用ロボット「da Vinci(ダ ヴィンチ)」の製造企業。取り換えや洗浄が必要なメスの販売が定期的な収益の柱。ロボット販売台数はインストールベースで6,142台(3月末時点)。ここ数年でインドや中国の販売を強化し、現在では中国が米国に次ぐ販売規模に成長。

・業績は?

 2021年1Qの業績は、売上高が18%増、調整後EPS(1株当たり利益)が31%増に拡大。市場予想を売上高で16%、調整後EPSで33%上回った。中国の需要が引き続き堅調に推移したほか、コロナ禍の環境改善で米国の手術需要が改善した。

・今後は?

 市場予想の2021年通期調整後EPSは28%増。2022年通期も20%増益が予想されている(日本時間4月22日時点)。次世代機「da Vinci SP」、検査手術ロボット「Ion」の投入など医療ニーズに沿った製品を展開できているほか、長期的には中国での拡大ポテンシャルがある。

・株価チャート(4月22日まで)

出所:楽天証券ホームページ

2.HCAヘルスケア(HCA)

・何の会社?

 同社は186の病院を運営。それに加えて、2,000の医療施設(手術センターやクリニックなど)も運営している(3月末時点)。

・業績は?

 2021年1Qの業績は、売上高が9%増、調整後EPSが78%増に拡大。市場予想を売上高で2%、調整後EPSで24%上回った。3月は外来患者数が回復傾向に。総入院患者数に占める新型コロナウイルス罹患者の比率は3月にかけて減少傾向で、徐々にではあるが病院運営が通常化に向かっている印象。

・今後は?

 市場予想の2021年通期調整後EPSは15%増。2022年通期は12%増益が予想されている(日本時間4月23日時点)。新型コロナ禍の一巡に加え、ホームケア・ホスピス事業を展開する企業の買収計画も公表しており、来期も堅調な業績推移に期待できる。

・株価チャート(4月22日まで)

出所:楽天証券ホームページ

3.ドーバー(DOV)

・何の会社?

 産業廃棄物処理車両の機材メーカーとしてリーディングカンパニーのポジション。他にも多様な製品を製造しており、ガソリンスタンドの給油機や洗車機関連、各種ポンプ、バーコードの印刷機、小売り・飲食用の冷蔵庫関連製品を展開。時価総額は約214億ドル(4月21日時点、出所:ブルームバーグ)。

・業績は?

 2021年1Qの業績は、売上高が13%増、調整後EPSが30%増に拡大。市場予想を売上高で7.9%、調整後EPSで25%上回った。業績をけん引した製品は、バイオファーマ向けのコネクター及びポンプと、飲料向け冷蔵製品。環境意識の高まりから、冷媒装置、熱交換器の需要も急増した。

・今後は?

 会社側は需要が加速していると述べており、受注と在庫を積み上げていることから、今後も業績は拡大する見込み。市場予想の2021年通期調整後EPSは20%増。2022年通期も10%前後の増益が予想されている(日本時間4月22日時点)。

・株価チャート(4月22日まで)

出所:楽天証券ホームページ

4.ユナイテッド・ヘルス(UNH)

・何の会社?

 大手健康保険会社。雇用主に対して、従業員の福利厚生プログラムとしての保険サービスなどを提供している。また、Optumというブランドで、薬局給付管理やデータ分析サービスも展開している。

・業績は?

 2021年1Qの業績は、売上高が9%増、調整後EPSが43%増に拡大。市場予想を売上高で1%、調整後EPSで21%上回った。コロナ禍の影響が軽減したほか、保険加入者数の増加などが業績拡大に寄与した。

・今後は?

 市場予想の2021年通期調整後EPSは10%増。2022年通期は15%増益が予想されている(日本時間4月23日時点)。ヘルスケア向けのデータ分析サービスを提供するOptumに成長余地があるほか、バイデン政権の健康保険加入推進が同社にとって追い風になる可能性がある。

・株価チャート(4月22日まで)

出所:楽天証券ホームページ

5.ダナハー(DHR)

・何の会社?

 医療関係者向けの試薬関連製品、分析機器、各種消耗品のほか、水質分析機器なども展開。

・業績は?

 2021年1Qの業績は、売上高が58%増、調整後EPSが140%増に拡大。市場予想を売上高で8%、調整後EPSで43%上回った。事業別では、主力のライフサイエンス事業が115%増収。診断関連の事業も34%増収と大きく伸びた。ライフサイエンス事業は買収と新型コロナウイルスのワクチン開発が増収率を押し上げたが、同ワクチン開発の効果を除いたベースでも、バイオファーマ向け製品は20%前半の成長率となったもよう。診断関連では新型コロナウイルスに関連した需要が追い風となった。

・今後は?

 市場予想の2021年通期調整後EPSは34%増。2022年通期は5%増益が予想されている(日本時間4月23日時点)。来期は新型コロナウイルス関連の需要が一巡するとみられるが、利益は堅調に推移する見込み。

・株価チャート(4月22日まで)

出所:楽天証券ホームページ