バイデン政権の次の施策として注目が集まるインフラ投資。同氏は大統領選時に、クリーンエネルギー関連を含むインフラ投資に4年間で2兆ドルを投入すると公約しました。民主党はこの施策の実現に動き出しており、夏ごろの法規制定を目指しているもようです。インフラ投資の内容はまだ不明ですが、過去の演説では、電気自動車や高速鉄道への投資を示しました。それに加え、国民の要望が大きいと考えられる、道路や鉄道などの刷新も盛り込むとみられます。今回はこのインフラ投資施策からの恩恵が期待できる銘柄を5つ取り上げます。
【インフラ投資関連銘柄5選】
予想PER(倍) | 予想EPS増減率 | ||||
ティッカー | 銘柄名 | 事業内容 | 今期 | 今期 | 来期 |
CAT | キャタピラー | 建機・鉱山機械 | 27.7 | 25% | 29% |
TRN | トリニティ・インダストリーズ | 鉄道車両のリース | 43.5 | 77% | 70% |
UNP | ユニオン・パシフィック | 鉄道 | 22.2 | 16% | 12% |
PWR | クアンタ・サービシーズ | 特殊工事請負 | 20.4 | 12% | 13% |
VMC | ヴァルカン・マテリアルズ | 建築骨材 | 33.4 | 8% | 17% |
出所:ブルームバーグ、予想はブルームバーグコンセンサス(調整後EPS、3月16日取得) |
1.キャタピラー(CAT)
・何の会社?
世界首位の重機メーカー。建設や鉱業に使う掘削機やトラクターや、ディーゼルのエンジンを製造しています。米国の売上は約44%(2020年12月期)。
・業績は?
世界の鉱山の開拓需要や建設需要に業績が大きく左右されます。2020年度の調整後EPS(1株当たり利益)は、前期比41%減と苦戦しました。ただし、キャッシュフローは比較的安定しており、2020年の営業キャッシュフローは8%減にとどまっています。長期債務の急増もなく、増配も継続できている優良企業です。
・なぜ注目?
今期以降はコロナ禍が過ぎ去り、世界経済が回復に向かうなかで業績が回復する見込みです。バイデン政権のインフラ投資が実現すれば、さらにトップラインが伸びる可能性があります。世界首位の実力と収益力を備えていることから、シクリカル銘柄のなかで保有したい代表的な銘柄です。なお、足元の予想配当利回りは2%弱あります。
2.トリニティ・インダストリーズ(TRN)
・何の会社?
鉄道車両のリース大手。貨物列車やタンク型車両を、鉄道会社、輸送業者に貸し出すほか、第三者が保有する車両のリース管理も行っています。自社保有、第三者保有、合わせて12万5,000両以上の車両を展開。その他、鉄道に利用する機材や、高速道路のガードレイルなども製造しています。
・業績は?
鉄道車両のリースは、マクロ環境の影響を大きく受けます。レンタルではなくリースであるため賃貸借の期間が長く、鉄道会社、輸送業者側の需要は読みづらいです。需要と一致できないと、車両在庫の積み上がりや老朽化、稼働率の低下といったリスクが顕在化します。
・なぜ注目?
マクロ環境の急回復によって、同社の業績も急改善する可能性があります。2020年度は調整後EPSが56%減と大苦戦しましたが、足元では農業や消費関連の輸送に回復の兆しがあります。バイデン政権の経済刺激策やインフラ投資によって、回復傾向が今後もサポートされる可能性があります。会社側は今期の明確なガイダンスを公表していませんが、各種のコスト削減を進めており、2021年後半の収益性改善に自信を示しました。長期保有には向いていない銘柄ですが、この局面では投資妙味がある銘柄と言えます。
3.ユニオン・パシフィック(UNP)
・何の会社?
鉄道会社の一角です。米国の西海岸やメキシコ湾などの西部から、中部、東部につながるゲートウェイを結ぶルートを展開しています。輸送の対象は建設資材、食品、自動車など多岐にわたります。
・業績は?
鉄道会社は石炭や原油関連の需要に左右される面がありますが、比較的安定した業種です。2020年度は2%の減益にとどまりました。会社側は2021年度の見通しについて、輸送数量の増加と(プラス4~6%)、生産性の向上などにより、営業利益率が1.5%から2%改善する見通しを示しました。輸送数量は、バイデン政権の施策によって上振れする可能性があります。
・なぜ注目?
今年の経済回復の恩恵を受ける可能性が高いうえに、収益規模が鉄道会社の中でも大きく、収益性が高く、キャッシュフローを着実に生み出す企業であるためです。2020年は営業利益率が40%強、ROE(自己資本利益率)が30%強でした。配当も増配傾向で、足元の配当利回りは2%弱ほどあります。
4.クアンタ・サービシーズ(PWR)
・何の会社?
電力会社の変電設備、再生可能エネルギー施設、通信会社の設備の設計やメンテナンスを手掛ける特殊工事請負会社です。また、原油や天然ガスのパイプラインも手掛けます。
・業績は?
ここ数年の利益は右肩上がり。調整後EPSは二桁増益が続いており、2020年度も15%増で着地しました。顧客である電力会社の設備の老朽化などが追い風になっています。今後も、電力会社のクリーンエネルギーへのシフト、並びに、電力会社の技術者の高齢化を背景にしたインフラ設備のアウトソーシング化(同社への委託増加)により、事業が拡大する可能性が高いです。
・なぜ注目?
バイデン政権のクリーンエネルギー推進に後押しされた電力会社が、火力発電所から風力発電所などへのシフトを強める可能性があります。その場合、同社への設備設計の委託増加が期待できます。
5.ヴァルカン・マテリアルズ(VMC)
・何の会社?
建築骨材大手です。建造物に使う骨材(モルタルやコンクリートの調合に必要な砂や砂利)や、アスファルト混合物を販売しています。
・業績は?
調整後EPSは、2013年度以降右肩上がりに増加しています。2020年度は利益が微減となりましたが、足元では、住宅建設の需要が堅調に推移しています。コロナ禍を受けたコスト削減を進めており、市場予想では今期以降利益の拡大が続く見通しです。
・なぜ注目?
政府のインフラ投資が実現すれば、各種設備の建設や高速道路の改修などから恩恵を受けると考えられます。
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