1.米国の追加経済対策、誰が1,400ドルの給付対象?

 米国株式市場は引き続き神経質な展開になっていますが、先週は追加経済対策法案の署名という明るい材料もありました。同法案は当初12日に署名の予定でしたが、1日前倒しの署名となりました。最低時給水準の引き上げはありませんでしたが、個人への直接給付については早ければ週末から始まったもようです。直接給付金額は約1,400ドル(108円換算で約15万円)。これで3回目の給付となります(前回は昨年春の1,200ドルと、12月の600ドル)。

 1,400ドル給付の条件は、年間の収入が7万5,000ドル(約810万円)以下の場合。それを超えると支給額は減り、8万ドル以上になると支給されなくなります。共働きの場合は、年収15万ドル(約1,620万円)以下が条件です。子供にも支給されるので、二人子供がいる夫婦の場合、最大で5,600ドル(約60万円)が受け取れます(ひとり親の場合は別途条件の緩和あり)。

 法案には別途、低所得世帯の子供に関する税額控除施策の拡充なども盛り込まれており、バイデン氏が主張していた、子育て世代をサポートする施策も進めることができたと言えそうです。

2.恩恵が期待できる消費関連銘柄

 これを受けて注目が集まるのが、消費関連銘柄です。個人消費の盛り上がりが、どの企業に恩恵をもたらすのかが焦点になります。また、セクターローテーションの動きも想定されます。このところ上昇していた銀行株などのバリュー銘柄から、高バリュエーション銘柄への回帰が続くとみられます。ただし、物価高騰の懸念が払拭(ふっしょく)されることはないので、再び傾向が逆転する場合も想定しておきたいところ。高バリュエーション銘柄のみ保有している場合は、次のセクターローテーションに備えて、高配当バリュー株、ベライゾン・コミュニケーションズ(VZ)キンバリー・クラーク(KMB)などの組み入れが考えられます。キンバリー・クラークは紙おむつなどを展開しているため、子育て世代サポート関連銘柄の中にも入ります。

 消費銘柄で有望な企業はどれか。1月に前月比5.3%と急上昇した小売売上高の内容を参考にすると、伸び率が高かった家具・室内装飾品、電子・家庭用電化製品、百貨店、スポーツ用品が分類としては有望とみられます。

 そのなかで、今後の成長性も考慮すると、保有したい銘柄は家具系の銘柄の、ウィリアムズ・ソノマ(WSM)ウェイフェア(W)です。ウィリアムズ・ソノマはハイエンドのキッチン用品や家具を複数ブランドで展開しています。個人的には、超高級というラインではなく、まだ手が届く価格帯、デザインは都会的な印象です。店舗数は約614店ですが、他社よりも早い段階でオンラインを強化してきた成果が実っており、オンラインでも収益を伸ばしています。特需後に売上スピードが落ちる可能性がありますが、今後は海外への販売強化も目指しており、米国で拡大できた実績を考慮すると長期の成長ストーリーが描ける銘柄と言えます。ウェイフェアは、家具のオンライン販売大手。価格帯に値ごろ感があり、アクティブユーザー数は3,100万人まで拡大しています。利益の推移はまだ不安定ですが、トップラインの成長に期待できる銘柄です。

 このほか、スポーツウェアのナイキ(NKE)、テーマパークの回復も期待できるウォルト・ディズニー(DIS)にも注目しています。ナイキは、子供の給付金需要獲得に期待。ウォルト・ディズニーは、単にテーマパークの回復だけではなく、「ディズニープラス」という新しい成長軸を打ち立てた点が魅力です。「ディズニープラス」はディズニー公式の動画配信サービスで、米国では2019年の秋、日本では去年スタートしたばかりの新しい事業ですが、足元で急速に拡大しており、会社側は、利用者が2024年までに、2億3,000万~2億6,000万人まで増加する見通しを公表しています。また、外食ではチポトレ・メキシカン・グリル(CMG)に注目。昨年、オンライン販売を急速に伸ばした企業で一巡感があると捉えられている可能性がありますが、足元では、宅配メニューの値上げを実施しています。最後に、このところ株価が堅調なペイメント関連銘柄も、消費関連のトレンドに乗る可能性があります。この観点からは業界最大手のビザ(V)に注目しています。