2020年秋、『10万円から始める!割安成長株で2億円』(ダイヤモンド社)という投資本を出版した弐億貯男さんインタビュー、後編をお届けします。

 今回は、株式投資を始めるにあたっての心構えや、銘柄選びなどについてアドバイスをいただきました。さらにはご自身の今後についても伺いました。

証券会社の口座には常に現金を残しておくこと

──前回、弐億さんの投資術についてお伺いしましたが、ここからは株式投資を始める人に具体的なアドバイスをお願したく思います。
 まず投資資金ですが、どれくらいあればいいですか。

 10万円でも20万円でもいいと思います。とにかくまずは証券会社に口座を作り、買ってみることです。

──やはり始める前に、少しは勉強したほうがいいですか。

 PER(株価収益率)などの用語を知らないと困ることがあるので、入門書の1冊くらいは読んでおいたほうがいいでしょう。でも、最低限の勉強でいいと思います。

 僕も、前に言ったように勉強らしき勉強はしていません。それより何より実戦経験を積むことが大切だと思います。実戦を通して得た学びのほうがはるかに実になります。

──財務諸表が読めなくても大丈夫でしょうか?

 読めるに越したことはないですが、読めなくても問題ないと思います。僕は、銘柄選びの際、財務諸表を読み込んで分析するといったことはほとんどしていません。せいぜい売上げや利益の推移をチェックするくらいです。

 もちろん投資スタイルなどによっては、より専門的な知識が必要かもしれませんが、僕が実践している中長期投資なら基本的なことを理解していれば大丈夫です。

──必要になったら勉強すればいい、ということでしょうか。

 はい、そう思います。

──実際に購入するときにはどんなことを心掛けるべきですか。

 最初から全額投じるのはやめたほうがいいでしょう。

 例えば証券口座に100万円入れたとします。普通はめいっぱい買いたくなるものですが、そこを我慢して50万円にとどめて、残りの50万円はそのまま口座に入れておきます。

──それはなぜですか。

 1つは、最初から勝つのは難しいからです。僕もそうでしたが、たいがいは失敗すると思います。

 ビキナーズラックで勝てたとしても、どこかでつまずくと思うので、いきなり全額投じるのはリスクが大きすぎます。

──半分残しておけば、もし大きく負けても再チャレンジできますね。

 そういうことです。1度失敗したら反省するので、次は勝てる確率が高まるはずです。

 投資資金が少ない場合は半分というわけにはいかないかもしれませんが、ある程度は残したほうがいいと思います。

──もう1つの理由は何でしょうか?

 株式相場はいつ何が起こるかわからないので、何が起こっても瞬時に対応できるよう、自由に使えるお金を持っておく必要があります。

 リーマン・ショックやライブドア・ショックのようにある日突然、暴落することもあれば、突如、回復して株価が急騰することもあります。そういうとき、自由になるお金がないと身動きが取りにくくなります。

──なるほど、緊急時に対応するためですね。

 実は僕には苦い経験があります。僕自身、昔はめいっぱい投資していたのですが、2011年の東日本大震災のとき、そのせいで痛い目にあいました。

 保有銘柄が軒並み下落して含み損を抱えたため、別の銘柄を買いたいと思ったときに買えなかったんです。それ以来、どんなときも現金を残しておくようにしています。

──投資初心者に限らず、誰にでも言えることかもしれません。

 そうだと思います。とくにコロナ禍の今は、誰も想像できないような事態を迎える可能性もあります。

 ですから、普段にも増して現金の比率を高めたほうが安全だと思います。僕も現金の割合をかなり多くしています。

IPOセカンダリー狙いで6,000万円稼いだ

──銘柄選びに関して、アドバイスをいただけますか。

 前に話したようにPERが低い銘柄を探すことを勧めますが、その際、着目してほしいのがIPO(新規上場)セカンダリー銘柄です。

 IPOは非常に人気が高く、申し込みが殺到するため、簡単には購入できません。しかし、上場した後であれば、誰でも買うことができます。それを狙うのがIPOセカンダリー投資です。

──上場直後は、株価が高いのではないですか。

 はい。ですが上場後しばらく経って人気が下火になり、割安になることも多いんです。僕はそのタイミングを狙います。

──上場後、どれくらいで割安になるものですか。

 一概には言えません。すぐに株価が下がることもあれば、1年、2年後に下がることもあります。ですから、上場後、しばらくの間、株価の推移を追うようにしています。

──IPOセカンダリー狙いで成功したエピソードを教えてください!

 前に、1つの銘柄で6,000万円稼いだことがあると話しましたが、それもIPOセカンダリー銘柄です。近畿地方を中心に介護つき有料老人ホームを展開するチャーム・ケア・コーポレーションです。

 この会社は2012年4月に上場したのですが、当時、介護関連株はあまり人気がなく、PERは10倍前後でした。いろいろ調べたら、ビジネスモデルが非常に優れていて、間違いなく成長すると思いました。そこで、その年の8月に3,300株購入し、その後も買い増ししました。

 最初のうちはあまり動きがありませんでしたが、2016年くらいからぐんぐん上がり、最終的には10倍になりました。

──上場直後は人気がなくても、4、5年後に化けることがあるんですね。

 はい、けっこうあります。今もブリッジインターナショナルやバリューデザインなどIPOセカンダリー銘柄をいくつか保有しているので、それらも今後、株価がどう推移するか、楽しみにしています。

──2020年はコロナ禍で上場を取り止めた企業もありますが、それでも90社以上、上場しました。それらの株価の動きを追ってみるのもいいかもしれませんね。

 そうですね。ぜひチェックしてみるといいと思います。

2029年までに資産5億円を目指す

──2億円稼いだら会社を辞めて悠々自適の暮らしをしようと思っていた、と伺いましたが、今も会社にお勤めなのですか。

 はい、いざ2億円稼いだら考えが変わりました(笑)。僕は投資家と会社員という2つの顔をもっているわけですが、それがとても心地いいんです。

 毎月安定した給与がもらえるから、多少投資で失敗しても大丈夫という安心感があります。その一方で投資で稼いだ資産があるから、お金に縛られず、思い切った仕事ができるという良さもあります。だから、しばらくは二足のわらじを履き続けます。

──会社の同僚などには投資のことを話しているんですか。

 いえ、誰にも言ってません。もし知れたら、絶対、稼ぎのことを聞かれますよね。それで2億円とかいったら不穏な空気が漂うでしょう(笑)。かといってウソをつくのも嫌ですし。だから、話さないと決めています。

──今は新たな目標を設けているんですか。

 はい、2億円を達成したとき、2024年までに3億円、2029年までに5億円という目標を立てました。

──年率+30%を達成する、という計算でしょうか。

 いいえ、2億円あって年率+30%を達成し続けると、もっとスゴイ金額になります。今はもう年率+30%も稼ぐ必要はないので、+10%に変更しました。それでも3年後には3億円、8年後には5億円に届きます。

──たぶん今、投資をやめても一生困らないと思うのですが、投資は続けるのですか。

 そうですね。うちは夫婦2人で子供がいませんし、毎月の給与や賞与を貯めた貯金もあるので生活には困らないと思います。

 でも、投資をやめようとはまったく思いません。

──やっぱり投資が好きなんでしょうか。

 それは間違いありません。どこが好きかと改めて聞かれると困りますが、自分の予想が的中して大金を手にしたときはうれしいです。それにお金がどんどん増えていくというのはいいものです(笑)。

──最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

 もし投資を始めるのをちゅうちょしている人がいたら、一歩踏み出してほしいと思います。

 それから、始めてもなかなか結果が出ないかもしれませんが、最初は勝てなくて当たり前です。

 負けが込んで自分には才能がないと思うこともあるでしょう。でも、そこで諦めないでほしいと思います。なぜなら、勝てないのは才能のせいでなく、投資とはそういうものだからです。

 そして、真剣に向き合っていればいずれ結果を出せるようになります。だから、あきらめずに続けてほしいと思います。

──今日はありがとうございました。

>>前編:会社に勤めながら2億円稼いだ投資術を公開!
>>中編:兼業投資家におススメの割安成長株投資
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