米国の株式市場は世界最大の時価総額を持ち、建国当初から株価は右肩上がりの成長を続けています。その理由の一つとして、常に企業の新陳代謝が起こり、時代ごとに革新的な企業を生み出しています。

 米国株式の代表的な株式指数は、鉄道・公共事業以外の工業株30銘柄で構成される「NYダウ平均株価」、NASDAQ(ナスダック)に上場している全銘柄を対象とした「ナスダック総合株価指数」、NYSE(ニューヨーク証券取引所)とNASDAQに上場している大型株500銘柄を対象とした「S&P500種株価指数」があります。

 これらに採用されている企業は長期間にわたり利益を出し続け、株価も上昇し、配当を増配し続けている銘柄も珍しくはありません。

 そこで2021年3月権利落ちの米国株高配当5銘柄について解説します。

 その前に、日本と米国の高配当銘柄への投資で、特に重要な3つの違いについて、お伝えします。

(1)米国株の配当金は、通常米国で10%、日本で20.315%の2段階、約30%の課税がされます。しかし確定申告で還付を受けることにより、日本株と同じように20.315%の税率と同じになります。ただし、NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)口座で購入した場合は、日本での利益・配当金はもともと非課税のため、還付を受けることはできません。この場合は米国で10%の課税のみとなります。

(2)米国株は日本株と異なり、権利落ち日が月末に集中していません。そのため、銘柄ごとに権利落ち日を確認する必要がありますので注意が必要です。

(3)米国株は日本円で買う円貨決済と、米ドルで買う外貨決済を選べます。日本円から外貨に替える為替手数料も積もれば大きな金額になるので、米国株を買い続けるなら売却時にも外貨決済で米ドルにしなければ無駄に手数料を支払うことになります。

米国高配当株1:レゲット・アンド・プラット(LEG)

 マットレススプリングや、調節可能なベッドなどのベッド関連事業を中心に展開しています。S&P500採用銘柄であり、49年連続増配中の企業でもあります。時価総額は56.8億ドルで、日本円で約5,960億円となっています。

事業の注目ポイント

 事業の中心はBedding Products事業で売り上げの約46%。続いてFurniture, Flooring &Textile Productsが31%、Specialized Products23%と続きます。125年以上にわたり、寝具のパイオニアとしてベッドに関連する事業を手掛けてきました。

 特に同社の販売する、「プロディジーコンフォートエリート」はモバイルアプリと連携したベッドで、枕の傾きを調節し、腰の位置を調整することで負担を軽減し、完全なリラクゼーションをベッド上で得ることができる、というのがウリです。

株式の注目ポイント

 株価はまだ昨年の高値を超えていません。しかし、安定した配当と自社株買いを継続して行っており、株価もコロナの影響が大きかった時期を除けば、ここ5年間一定のレンジで推移しています。

 また、コロナの影響によりオンラインの購入が増えたことで売り上げも順調に回復してきており、それに伴い株価も回復してきています。冒頭でも述べたように、49年連続増配中の企業でもあります。

業績動向

 2021年2月8日開示の四半期決算は1株利益・売上高ともに市場予想を上回りました。

 1株利益・売上高はコロナ発生前の水準を超えており、会社側も2021年は業績が拡大すると予想しています。次回は5月3日に四半期決算の開示予定ですが、今回同様市場予想を上回る数字を出せるか注目です。

注意点

 大きく拡大していく事業ではないため、M&A(買収や合併)や海外進出などの積極投資を今後も拡大していけるか注目です。

株価動向、配当利回り紹介

配当:1.60ドル
配当利回り:3.77%
株価:42.35ドル(約4,450円)

権利落ち日は3月12日(権利実施は4月15日)です。
配当は1.60ドル、配当利回りは3.77%、株価は42.35ドルで約4,450円から購入できます(2021年2月15日時点)。2018年以降の株価最高値は55.18ドル、最安値は22.47ドルです(終値ベース)。

米国高配当株2:フランクリン・リソーシズ(BEN)

 世界有数の資産運用会社を傘下に抱える企業です。フランクリン・テンプルトン、レッグ・メイソン、およびグループ運用子会社の運用資産の総額は約1兆4,000億ドルです。時価総額は137億ドルで、日本円で約1兆4,390億円。

事業の注目ポイント

 独自色の強い専門性の高い運用チームを多数擁することで、株や債券などの伝統的資産から、プライベート・エクイティや不動産などのオルタナティブまで幅広い投資対象をカバーしています。

 また、2020年7月31日にレッグ・メイソンの買収手続きを完了。それに伴い、フランクリン・テンプルトンが不足していた分野のファンドマネージャーの確保ができました。

株式の注目ポイント

 株価は2020年年初の水準まで回復しており、1981年から毎年増配を行っています。コロナ発生以降、一時期株価は下落しましたがマーケットの回復やレッグ・メイソン買収などの材料により株価は回復しています。

業績動向

 2021年2月2日に発表した四半期決算では、1株利益、売上ともに市場予想を上回りましたが、株価にはあまり影響がありませんでした。次回決算は4月23日開示予定ですが、売上・1株利益ともに市場予想をどの程度上回る決算を出せるか注目です。

注意点

 日本などでも事業を展開していますが、売上の中心はアメリカで、フランクリン・リソーシズの売上の大半を占めています。そのため、フランクリン・リソーシズの株価もアメリカの政治経済情勢などに大きく影響を受ける可能性があり注意が必要です。

株価動向、配当利回り紹介

配当:1.12ドル
配当利回り:4.05%
株価:27.62ドル(約2,900円)

権利落ち日は3月30日(権利実施は4月15日)です。
配当は1.12ドル、配当利回りは4.05%、株価は27.62ドルで約2,900円から購入できます(2021年2月15日時点)。2018年以降の株価最高値は45.86ドル、最安値は15.30ドルです(終値ベース)。

米国高配当株3:U.S.バンコープ(USB)

 米国で5番目に大きい商業銀行です。筆頭株主は米国著名投資家のバフェット氏が率いるバークシャーハサウェイで、続いてバンガード、ブラックロック、ステートストリートなどの運用会社が続きます。

 時価総額は712億ドルで、日本円で約7兆4,760億円。

事業の注目ポイント

 銀行に共通することですが、従来の銀行サービスでは生き残りが難しくなってきており、U.S.バンコープでも小売や企業決済システムなどのネットでのペイメントサービスに軸足を移しています。

 他にも、資金調達の際の信用スコアを電子化し、支払いまでの期日を従来3日程度かかっていたものを、即日支払可能にするなどさまざまな改善を実施。よりユーザーにとって利便性の高いサービスを今後も提供していくことが期待されています。

株式の注目ポイント

 株価は、昨年の年初の水準までは戻していません。コロナの影響による貸倒引当金の増加や、長期金利の低下などU.S.バンコープを含めた金融機関にとっては厳しい状況でした。

 しかし、四半期配当は維持し、2021年の第1四半期には自社株買いも行う予定であり、長期金利が緩やかに上昇していくことで株価もつれ高となる可能性もあります。リーマンショックの時にも無配にしていません。

業績動向

 2021年1月20日開示の四半期決算で1株利益は市場予想を上回りましたが、売上は市場予想を下回りました。決算を受けて株価は下落し、その後は停滞したまま推移しています。

 次回は2021年4月15日に開示予定ですが、市場予想を上回る決算を発表できるか注目です。

注意点

 日本同様、米国でも銀行再編の可能性が出てきており、そういった際にはU.S.バンコープも対象となる可能性があり、注意が必要です。

株価動向、配当利回り紹介

配当:1.68ドル
配当利回り:3.52%
株価:47.64ドル(約5,000円)

権利落ち日は3月下旬予定(権利実施は4月中旬予定)です(2021年2月15日時点で未確定。昨年を参照)。配当は1.68ドル、配当利回りは3.52%、株価は47.64ドルで約5,000円から購入できます(2021年2月15日時点)。2018年以降の株価最高値は60.68ドル、最安値は28.93ドルです(終値ベース)。

米国高配当株4:パブリック・サービス・エンタープライズ・グループ(PEG)

 米国の大手電力会社10社のうちの1つであり、全世界で323社のみ選ばれている、ダウジョーンズサステナビリティインデックスにも選出されている企業です。

 時価総額は296億ドルで、日本円で約3兆1,100億円。

事業の注目ポイント

 子会社にはPublic Service Electric&Gas Company、PSEG Powerなどがあり、売上の大半をPublic Service Electric&Gas Companyが上げています。Public Service Electric&Gas Companyはニュージャージー州で最大の電気および天然ガスサービス供給企業で、人口を多く抱えるニュージャージー州で事業展開している点が強みです。

 また、PSEG Powerは米国全土に太陽エネルギー発電施設を保有しており、同エネルギーはこれからのESG投資には外せないテーマとなっています。

株式の注目ポイント

 株価は昨年の高値近辺まで回復しています。

 コロナの影響により株価の下落もありましたが、世界的なESG投資への流れや、採用されているS&P500の上昇とともに株価も回復してきました。また、現在17年連続増配中で今後も継続した配当の引き上げが期待されます。

業績動向

 2020年10月30日開示の四半期決算では、売上・1株利益ともに市場予想を下回りました。

 しかし、決算を受けての大きな株価の変動はなくその後も堅調に推移しています。

 売上、営業利益ともにコロナの最悪期からは脱して順調に回復しており、次回2021年2月26日に開示予定の四半期決算において、市場予想を上回ることができるか注目です。

注意点

 コロナの影響による、電力・ガスの需要減には注意が必要です。

株価動向、配当利回り紹介

配当:1.96ドル
配当利回り:3.36%
株価:58.27ドル(約6,100円)

権利落ち日は3月初旬予定(権利実施は3月下旬予定)です(2021年2月15日時点で未確定。昨年を参照)。配当は1.96ドル、配当利回りは3.36%、株価は58.27ドルで約6,100円から購入できます(2021年2月15日時点)。2018年以降の株価最高値は63.31ドル、最安値は36.86ドルです(終値ベース)。

米国高配当株5:リージョンズ・ファイナンシャル(RF)

 傘下に銀行を抱え、アメリカ中西部で事業展開していて、S&P500採用銘柄でもあります。

 時価総額は185億ドルで、日本円で約1兆9,430億円。

事業の注目ポイント

 consumer bankが事業の中心で、売上の約6割、続いてcorporate bankが約3割と続きます。

 リージョンズ・ファイナンシャルも、日本の銀行同様、従来の銀行サービス以外にもアメリカの個人年金制度であるIRA(Individual Retirement Account)を用いた資産運用提案など幅広く事業展開をしています。

 また、デジタルバンキングユーザーが増加しており、それらに対してニーズに合ったサービスを提供していけるか注目です。

株式の注目ポイント

 株価は昨年の高値を超えています。また、配当はリーマンショックの時にも無配にしていません。

 人材・テクノロジー・デジタル機能への投資によるサービスの向上に伴い、預金量は堅調に増加しています。

 また、M&Aの増加による収益の拡大など、それらが2021年も引き続き業績に貢献すると会社は予想しています。既にコロナ発生前を超える利益をあげており、それに伴い株価も上昇しています。

業績動向

 2021年1月22日開示の四半期決算では、1株利益・売上ともに市場予想を上回りました。

 2四半期連続で市場予想を上回っています。好調な業績を背景に、金融機関の中でも株価の回復が比較的はやくなっています。

注意点

 米国の長期金利が下がった際には、業績に悪影響が出る可能性が高く注意が必要です。

株価動向、配当利回り紹介

配当:0.62ドル
配当利回り:3.16%
株価:19.56ドル(約2,000円)

権利落ち日は3月4日(権利実施日は4月1日)です。
配当は0.62ドル、配当利回りは3.16%、株価は19.56ドルで約2,000円から購入できます(2021年2月15日時点)。2018年以降の株価最高値は20.11ドル、最安値は7.36ドルです(終値ベース)。

※株価は2021年2月15日現在。為替は1ドル=105円で計算。

【要チェック】
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