CRO各社が医療エクイティ投資を積極化、収益増とシナジー効果に期待

 中国のCRO(医薬品開発業務受託機関)銘柄の過去2-3年間の業績を見ると、エクイティ投資収益の利益貢献度が大きい。BOCIはCROセクターのカバー銘柄3社の投資戦略などを分析し、無錫薬明康徳新薬開発(02359)と杭州泰格医薬科技(03347)が特に、医療関連企業(公開・未公開企業)へのエクイティ投資に積極的であると指摘。半面、康龍化成(03759)は相対的に慎重だと報告した。BOCIはCRO各社と投資対象企業との潜在的なシナジー効果に疑う余地はないと強調する一方、エクイティ投資の公正価値の変動が業績面の不確実性につながる可能性を指摘している。

 CRO3社のうち無錫薬明康徳新薬開発は傘下の上場企業や医療ベンチャーファンドを通じ、世界規模で投資を進める。投資先は先端技術を持つ有望企業が主体で、分野はバイオテック、医療機器、AI、診断、医療サービスなど。世界規模の投資を通じて最先端技術にアクセスし、初期ステージにある投資対象と潜在的なパートナーシップを築くことも可能となる。同社の場合、20年上期の純利益に占める投資収益の割合は36%(15年時点では10%)。また、上期の総資産簿価の19%をエクイティ投資が占めた。

 一方、杭州泰格医薬科技は無錫薬明康徳新薬開発とは異なり、中国企業を主な投資対象とする。対象業種は多角的ながらも、医療機器の比重が高く、BOCIが把握している投資先187社のうち3分の1が機器関連(心血管や整形外科関連、対外診断薬、手術器具など)。同社の先進的な医療機器投資は、傘下企業を通じて展開する医療機器CRO事業に新たなビジネスチャンスをもたらす可能性があり、新薬臨床CROに続く第2の成長エンジンを生む可能性にもつながるという。なお、同社は17-19年に医療機器臨床CROプロジェクト60件、91件、58件を完了し、20年上期時点では210件が進行中。20年上期の純利益に占める投資収益の割合は62%で(17年時点では18%)、上期の総資産簿価に占めるエクイティ投資の割合は35%に達した。

 カバー銘柄3社のうち、残る康龍化成は医療関連投資を19-20年にスタートしたばかりであり、医療全般に投資するほかの2社に比べて慎重。20年上期の総資産簿価に占めるエクイティ投資の割合はわずか2%だった。

 BOCIはDCF(ディスカウントキャッシュフロー)方式を用いて目標株価を設定し、3社の株価の先行きに対していずれも強気見通しを付与した。無錫薬明康徳、杭州泰格、康龍化成の現在株価の22年予想PEGレシオはそれぞれ4.1倍、3.2倍、1.8倍に当たるとしている(22-24年の年平均予想増益率に基づく)。

 一方、レーティング見直しにつながる可能性がある潜在リスク要因としては、製薬会社のR&D支出が予想を下回る可能性、米中対立が予想外に激化する可能性、欧米のパンデミックが予想以上に長期化する可能性――を挙げている。