30年半ぶりに日経平均3万円を回復

 直近1カ月(1月18日~2月12日)の日経平均株価は3.5%の上昇となり、1990年8月以来の2万9,000円台回復となりました。いったん崩れる場面もありましたが、25日移動平均線割れ水準では押し目買いに下げ渋り、2月8日には1月14日に付けた高値を更新する展開となっています。

 2月に入って、海外投資家とみられるTOPIX(東証株価指数)先物買いの動きが目立ち、指数の上昇をけん引する形になりました。なお、2月15日にはついに3万円の大台にまで到達しています。

 1月後半には一時、米金融市場混乱に対する不安感が強まる場面もありました。投機的な取引によって一部銘柄の株価が急騰し、こうした銘柄にショートポジションをとっていたファンドが損失確定の買い戻しを余儀なくされ、それに伴い、ロングポジションの解消も迫られるとの見方が強まりました。

 これにより、ここまで上昇してきた主力株への需給懸念につながりました。ただ、大きな市場の混乱にはつながらず、早々に市場には安心感が強まり、一転して買い戻しが優勢となりました。

 全般的には、米国追加景気刺激策への期待感、金融緩和政策の長期観測の高まり、主要企業の好決算発表が相次ぐなど、良好な市場環境は継続する形となっています。

 個別では、本格化する主要企業の10-12月期決算発表が主な焦点となりました。半導体関連や電子部品の一角などでは、好決算が好材料出尽くしと捉えられるものが目立ちましたが、ソニー(6758)トヨタ(7203)富士フイルム(4901)日本製鉄(5401)日立(6501)NEC(6701)など、決算が好感されて急伸する銘柄が非常に多かった印象です。ソフトバンクグループ(9984)が決算を受けて21年ぶりの1万円大台を回復したことも話題になりました。一方、TOB(株式公開買付け)を実施する銘柄なども多く散見されました。

3万円水準では踊り場入りの可能性も。出尽くし感が先行した好決算銘柄など見直しへ

 世界的な金融緩和政策の継続に変化が見られない限り、中期的に株式市場の堅調推移は継続していく可能性が高いとみられます。新型コロナウイルスの新規感染者数増加ペースが足元で急速に沈静化していることも安心感へとつながります。

 ただ、日経平均3万円の大台を一気に回復する状況となり、短期的には、達成感も生じて上値追いには慎重な姿勢が強まっていく可能性もあるでしょう。足元の株高の一因となった決算発表が一巡したことで、買い手掛かり材料はやや減少することにもなります。目先は踊り場的な状況となることが予想されます。

 決算発表一巡のタイミングでは、あらためて好決算銘柄を選別物色する動きも強まりやすいですが、今回の決算発表においては、主力の大型株でも決算発表後に大きく株価が水準訂正するものが目立ちました。

 どちらかといえば、好決算が出尽くし感につながって調整している銘柄の見直しなどに注目したいところで、代表格が半導体関連などといえるでしょう。また、こうした押し目買いの動きの波及が期待できるものとしては、巣ごもり消費関連、DX関連、再生エネルギー関連なども挙げられます。

 コロナ禍における生活様式の変化が長期化する可能性もあり、巣ごもり関連では選別の動きも強まりそうです。中では、住宅取得ニーズの強まり、テレワークなどはプラスの影響が見込めると考えられます。

 警戒材料となるのは米国長期金利の上昇であり、10年債利回りは1.2%の水準にまで上昇してきています。当面の金融緩和政策継続が積極的にアナウンスされている中、大きな影響が生じる可能性は低いとみられますが、グロース株の手控え材料にはつながっていく可能性もあります。

 3月末が接近していることもあって、高配当利回り銘柄などのバリュー株に資金をシフトすることも、リスク回避策の一つといえるでしょう。

バリュー株への関心も強まる中、3月は株主優待の権利取りも妙味に

 3月は多くの上場企業の配当権利月となるため、今後は3月中旬にかけて配当権利取りの動きが活発化していくことも期待されます。

 また、配当と同様に、株主優待の権利取り基準日を3月に設定している銘柄も多くなっており、今回は3月に株主優待の権利取得日を迎える高配当利回り銘柄に着目しています。

 なお、3月期本決算企業において、株主優待を実施している銘柄はほぼ3分の1程度となっています。

 下表は、時価総額1,000億円以上で配当利回り4.0%以上の銘柄の中から、3月に株主優待権利確定日を迎える銘柄群となります。リストでは銀行株が多くなっていますが、金利の上乗せサービスや、地銀では地元名産品の贈呈などが主な株主優待内容となっています。

3月の株主優待権利付き配当利回りランキング(2021年2月12日時点)

コード 銘柄名 会社予想
配当利回り
株価 時価総額 PER
8304 あおぞら銀行 5.52 2,209.0 2,613 9.05
7327 第四北越FG 5.21 2,305.0 1,059 10.02
6417 SANKYO 5.08 2,953.0 2,055 29.14
6412 平和 5.08 1,575.0 1,572 -
1808 長谷工コーポレーション 5.03 1,392.0 4,187 8.04
7167 めぶきFG 5.02 219.0 2,582 7.70
8308 りそなHD 5.02 418.6 9,640 8.01
9101 日本郵船 4.65 2,796.0 4,755 5.25
8591 オリックス 4.32 1,757.5 23,093 -
8354 ふくおかFG 4.27 1,989.0 3,802 8.59
7186 コンコルディアFG 4.27 398.0 4,814 12.01
9832 オートバックスセブン 4.24 1,416.0 1,190 20.56
4928 ノエビアHD 4.11 4,985.0 1,703 27.03
8418 山口FG 4.08 637.0 1,684 6.94
注:会社予想配当利回りの単位は%、時価総額の単位は億円、PERの単位は倍。株価は2021年2月12日終値、単位は円。

選定要件

  1. 予想配当利回りが4.0%以上(2021年2月12日終値ベース)
  2. 時価総額が1,000億円以上(同)
  3. 3月が株主優待の権利月

あおぞら銀行(8304・東証1部)

どんな銘柄?

 経営破綻して公的資金による救済を受けた日本債券信用銀行が前身です。中堅・中小企業との取引、不動産や事業再生案件といった専門性の高い融資を扱う「スペシャルティファイナンス業務」が特徴です。

 コンパクトな規模で全国・海外において事業展開を行っています。インターネット銀行ではGMOと提携しています。配当は四半期ごとに実施しており、個人投資家の保有比率が高いことも特徴です。

業績見通し

 2021年3月期第3四半期累計純利益は220億円で前年同期比26.0%減となりましたが、通期計画の285億円、前期比1.3%増に対する進捗率は77.2%となっています。

 緊急事態宣言による営業活動低迷の影響で、役務取引等利益、特定取引利益など非資金利益が減少しましたが、第1四半期の落ち込みからは徐々に持ち直しています。

 12月末不良債権比率は0.94%と落ち着いており、貸し倒れ引当率も1.71%と高水準で、財務体質の健全性は保たれる状況になっています。

ここがポイント

 配当と同様に、株主優待も年間に4度実施しています。対象商品となるのは自行で取扱う、円定期預金、投資信託、金融商品仲介業務取扱商品となり、これらを取引することで、商品券を提供する形になっています。

 新規資金で円定期預金(期間3カ月以上)に500万円以上預け入れた場合は一律3,000円分、公募株式投資信託を購入した際は購入金額100万円につき2,000円分、金融商品仲介業務取扱商品である仕組債等を購入した場合は購入金額100万円につき2,000円分の商品券をそれぞれ提供しています。

SANKYO(6417・東証1部)

どんな銘柄?

 パチンコ・パチスロ機の大手メーカーで、パチンコ機では販売台数シェア第2位となっています。フィーバー機の投入など、開発力の高さに定評があります。

 パチンコ機業界はヒット機種の有無によって業績変動リスクは大きくなりやすいですが、年間配当金150円の安定配当を続けています。自己資本比率は90%超の水準で、無借金経営など財務体質も極めて良好です。

業績見通し

 2021年3月期第3四半期累計営業利益は42.5億円で前年同期比59.7%の減益となっています。コロナ禍における遊技機需要の低調推移を受けて、パチンコ機、パチスロ機ともに販売台数が減少しました。

 ただ、新タイトルの投入がなかった7-9月期の営業損益27億円の赤字に対して、10-12月期は32億円の黒字に回復しています。

 1-3月期は10-12月期以上に新タイトルの投入が行われる予定であるため、会社側の通期計画80億円、前期比36.3%減の達成確度は高いものとみられます。

ここがポイント

 100株以上の株式を保有する株主に対して、群馬県高崎市のゴルフ場「吉井カントリークラブ」で利用できる優待券を3月末、9月末と年2回贈呈しています。

 100~999株の株主に対しては、平日は1万円、土日祝日は5,000円分の割引券、1,000株以上の株主に対しては1,000株につき1枚のプレーフィー無料券となっています。3月末株主にとっての有効期限は翌年の2月末までとなっています。

長谷工コーポレーション(1808・東証1部)

どんな銘柄?

 マンション建設の最大手企業で、累計施工数は66万戸を超え、現在ある国内マンションの約1割を施工している計算になります。国内トップの施工実績を背景としたトータルプロデュース、「土地持込による特命受注方式」などが強みとなっています。

 昨年2月に発表した中期計画では、2025年3月期経常利益1,000億円を数値目標としている他、株主還元強化方針も示しています。年間配当金の下限を70円とするとともに、今後5年間累計の総還元性向を40%程度と設定しました。

業績見通し

 2021年3月期第3四半期の累計営業利益は466億円で前年同期比23.7%減益となっています。完成工事高や不動産売上高が減少した他、完成工事総利益率も低下しています。

 受注高に関しても、新型コロナウイルスによる経済活動の停滞で用地調達や受注活動が停滞、累計では22%減少している他、10-12月期も41%の減少となっています。

 足元の受注低迷で2022年3月期業績も伸び悩みそうですが、受注自体は今後緩やかに回復に向かうとみられます。

ここがポイント

 3月末、9月末の株主に対して株主優待を行っています。2020年3月末の100株以上保有の株主に対しては、室内リフォーム工事代金の3%割引、不動産売買の仲介手数料5%割引、高齢者住宅・有料老人ホームの入居一時金の1%割引、このうちの一つのサービスを提供しています。

 ちなみに、2020年9月末の100株以上保有の株主に対しては、「たなかみ米」こしひかり5kgまたは10kgを通常価格より20%割引して販売しています。

日本郵船(9101・東証1部)

どんな銘柄?

 海運業界で国内トップとなっています。コンテナ船などの定期船、航空運送、物流といった一般貨物輸送事業、自動車やエネルギー輸送などの不定期専用船事業を手掛けています。

 ターミナル拠点は世界で21港、物流事業拠点は世界46カ国、保有船舶は784隻(2020年3月末)で展開しています。

 日本貨物航空、郵船ロジスティクス、共栄タンカーなどを傘下に持ちます。2017年7月に、商船三井、川崎汽船と定期コンテナ船事業を統合しています。

業績見通し

 2021年3月期第3四半期累計経常利益は1,221億円で前年同期比3.2倍となっています。また、通期予想は従来の700億円から1,600億円、前期比3.6倍にまで大幅に上方修正しています。

 コンテナ船事業の利益拡大が大きく寄与した他、自動車輸送の回復などで不定期専用船なども上振れているもようです。利益水準の高まりに伴って、年間配当金計画も前期の40円から130円までの引き上げを計画しています。

 なお、会社側の通期見通しは保守的で、一段の上振れが期待できるとの見方もあるようです。

ここがポイント

 3月末の100株以上の株主を対象に、「飛鳥クルーズ」の優待割引券を提供しています。100株以上500株未満の株主には3枚、500株以上1,000株未満の株主には6枚、1,000株以上の株主には10枚を贈呈。

 1枚につき10%の割引が受けられます。なお、優待期間は決算期後の7月1日から翌年9月30日までとなっています。飛鳥クルーズは、クルーズ専門誌において長期にわたり総合1位を獲得するなど高い評価を得ています。

オリックス(8591・東証1部)

どんな銘柄?

 リース事業からスタートした後は隣接分野に幅広く進出し、現在では法人金融、産業/ICT(情報通信技術)機器、環境エネルギー、自動車関連、不動産関連、事業投資・コンセッション、銀行、生命保険など多角的に事業を展開しています。

 2020年3月末現在、世界37カ国・地域に拠点を設けてグローバルに活動しています。農事業、コンセッション事業、バイオマス発電事業、旅館・ホテル運営事業などが近年新たに活発化させている事業になります。

業績見通し

 2021年3月期第3四半期純利益は1,420億円で前年同期比41.9%減となっています。通期計画1,900億円、前期比37.2%減に対する進捗率は75%となっています。

 新型コロナウイルスの影響によって、ホテルなどの運営事業、航空機リース事業、空港コンセッション事業などが大きな影響を受けています。

 一方で、保険事業、銀行・クレジット事業、環境エネルギー事業などが順調に推移し、下支え役となっています。コロナ禍のマイナス影響が低減する2022年3月期業績はV字型の回復が見込めそうです。

ここがポイント

 3月末の100株以上の株主に対して「ふるさと優待」、全株主に対して株主カードの発行を行っています。ふるさと優待は、グループの取引先が取り扱う商品を厳選してカタログギフトに仕立て、その中で好きな商品1点を選べる制度です。

 3年以上継続保有の株主には、ワンランク上のカタログギフトとなっています。また、株主カードを提示することで、グループが提供する各種サービスを割引価格で、有効期限内は何度でも利用することができます。