日経平均3万円超え、年初予想より7カ月も早く大台に

 2月15日の日経平均株価終値は、前週末比564円高の3万84円でした。3万円の大台に乗せ、30年半ぶりの高値を更新しました。

 私が昨年末に出した予想では、日経平均は9月に3万円に到達するはずでした。それより7カ月も早く、目標に到達してしまいました。下がる時も想定外、上がる時も想定外に大きな動きをする「暴れ馬」日経平均の本領発揮というところでしょうか。

 私は、平成の構造改革を経て、日本企業は財務良好・収益基盤は堅固になったと判断しています。にもかかわらず、日本株は、配当利回りや買収価値から見て、割安に据え置かれていると考えています。日経平均インデックスファンドや、配当利回り4%を超える大型バリュー株に、コツコツと時間分散して投資していくことが、長期の資産形成に寄与すると思います。

 日経平均は、過去にそうであったように、これからも大荒れが予想されます。大荒れの中で上昇していく資産に投資する場合、威力を発揮するのが、「積立投資」です。いろいろ迷って投資に踏み切れない方には、積立投資が適していると考えます。

荒れる日経平均、NYダウより値動きが荒い

 日経平均は、昨年3月に一時1万6,358円まで下がりました。ところが、その直後から急反発し、ついに3万円を超えました。日経平均インデックスファンドに積立投資をしている人には、落ち着かない日々が続いているかもしれません。

 私は、日本株は今も割安で、積立で投資を続けることで、中長期で資産形成に寄与する資産と考えています。

 ただ、非常に値動きが荒く、投資タイミングをはかるのが難しいアセット(投資対象)です。アベノミクスがスタートした2013年以降の日経平均とNYダウ平均株価の値動きを比較したグラフをご覧ください。

日経平均とNYダウの値動き比較:2012年末~2021年2月15日

注:2012年末の値を100として指数化、楽天証券経済研究所が作成

 日経平均がNYダウより値動きが荒いことが、わかります。日経平均は、アベノミクスが始まった2013年を起点としてNYダウと比較すると、NYダウを上回る上昇率となっています。ところが、下げ局面(上のグラフで青矢印をつけた所)だけ見ると、日経平均はNYダウより大きく下落していることがわかります。

 日経平均は、上げる時も下げる時も、NYダウより値動きが大きく、それだけに、いつ買ったら良いのか、タイミング判断がむずかしいと思います。

値動きが荒いアセットへの投資では、積立投資が効力を発揮する

 これから資産形成を考えている個人投資家は、月々1万円とか2万円とか、金額を決めて、積み立てていくのが良いと思います。積立投資は、日経平均インデックスファンドなど、値動きの荒いアセットへの投資で効力を発揮します。

 積立投資の威力を理解いただくために、簡単な例を作りました。まず、以下のクイズを解いてみてください。

【クイズ】

 以下の投信A・投信Bに、1カ月後と2カ月後に1万円ずつ投資したとして、3カ月後の資産価値は、どちらが大きいでしょう?

 
◆値動きの乏しい投信A
1万円でスタート、1カ月後・2カ月後・3カ月後も1万円のまま。

◆値動きが激しい投信B
 1万円でスタート、1カ月後に12,000円(スタート時より+20%)に上昇、2カ月後に8,000円(スタート時より▲20%)に下落、3カ月後にスタート時の1万円に戻る。 

 どちらも、1万円でスタートして、3カ月後に1万円です。ところが、投信AとBに積立投資した場合、3カ月後の資産価値に差が生じます。

【答え】
 投信Bに投資した方が得です。投信Aでは、投資した2万円が、3カ月後に2万円のままですが、投信Bでは、投資した2万円が、3カ月後に2万800円に増加します。

【解説】
 投信Bに、1万円ずつ投資し続けると、価格が上がったときには少ない量しか買えませんが、価格が下がった時にたくさん買えます。高いときに少し買い、安いときにたくさん買う運用が、自然にできていることになります。

【さらに詳しい解説】
 投信Aは、1カ月後に1万円で1単位、2カ月後にも1万円で1単位、買えます。合わせて2単位、取得できます。その評価額は、3カ月後に2万円です。値動きがないので、損も得もしません。
 投信Bは、どうでしょう? 1カ月後、1万2,000円に上昇したときは、1万円で0.83単位(10,000÷12,000)しか買えません。ところが、8,000円に下がった2カ月後には1万円で、1.25単位(10,000÷8,000)買うことができます。合わせて2.08単位、取得できます。3カ月後に価格が1万円に戻れば、評価額は、2万800円となります。800円だけ、資産価値が増えています。

ファンドマネージャーにとっても嬉しかった「積立投資」

 私は、25年間、年金・投資信託などの日本株を運用するファンドマネージャーでした。ファンドマネージャー時代に、とても残念に思ったことと、嬉しかったことがあります。

 まず、残念なこと。私が運用していた公募投信(日本株のアクティブ運用ファンド)では、日経平均の高値圏で設定(買い付け)が増えるのに、日経平均の安値圏では、ほとんど設定がありませんでした。株は安い時に買って、高くなった時に売ると利益が得られるわけですが、公募投信では、残念ながら、その逆の動きが見られました。

 次に、とても嬉しかったこと。私が運用していたファンドが、DC(確定拠出年金)の運用対象となったことです。多数の企業に採用していただけました。DCでは、毎月、一定額の設定が入り続けます。加入者の方に、定時定額で積立していただいたことになります。そうすると、日経平均の高値でも、安値でも、淡々と設定が入ってきます。

 日経平均が大暴落して世の中が総悲観になっている時、往々にして、絶好の投資チャンスとなっています。ファンドマネージャーとしては、そんな時こそ、しっかりと投資を増やしてほしいと思います。ところが、公募投信では、そういう時に、設定が入ってきません。

 私が運用していたDCファンドでは、定時定額の積立投資が入ってきますので、リーマン・ショックで日経平均が大暴落し、世の中が総悲観になっている時でも、淡々と積立が入ってきました。今年のコロナ危機でも、積立投資では安いところでも、投資が続けられています。

 誰でも、株は安い時に買って、高い時に売りたいと思うのでしょうが、言うのは簡単で、やるのはとても難しいことです。そうするためには、世の中総悲観になっている時に、株を買い、みんなが明るくなって強気になっている時に、株を売らなければなりません。それは、少しひねくれた人にしかできないことです。普通の素直な人は、みんなが明るくなっている時に、株を買いたくなり、暗くなっている時に、株を売りたくなるでしょう。

 普通の素直な人は、変に、いいタイミングで株を買い、いいタイミングで売ろうとしない方がいいと思います。それでは、どうするべきか?私は、定時定額(たとえば毎月1万円)の積立投資をしていくべきと思います。

積立投資のもう1つの効果、支出を収入の範囲に収める習慣が身につく

 毎月1万円の投資を行うためには、その分、支出を絞らなければなりません。収入を上回る支出を行っていると、積立投資はできません。

 積立投資をする習慣を身に付ければ、自動的に、支出が収入を下回るようにコントロールする習慣を身につけることになります。