基礎控除が38万円から48万円に、ただし給与所得控除は10万円減少

 2月も半ばすぎとなり、毎年恒例の確定申告シーズンがやってきました。自営業者の方は確定申告が必須ですし、会社勤めの方も、医療費控除やふるさと納税など、そして上場株式の譲渡損失の繰り越し控除などのために確定申告される方は多いと思います。

 今回は、令和2年分の確定申告につき、これまでとは変更があった点を中心にお話していきます。

 今までずっと確定申告をしてきた方の多くは、「基礎控除=38万円」と頭にインプットされているのではないでしょうか。これが令和2年分の確定申告から、基礎控除の額が48万円に変更となりました。

 ただ、会社勤めの方の給与所得につき、給与所得控除の額が一律10万円減額されていますので、給与をもらっている方の場合は実質的には影響はありません。

 一方、給与所得のない自営業者の方などは、給与所得控除減額の影響はないため、純粋に基礎控除額が10万円増加し、減税となります。

 なお、所得金額が大きい方については、合計所得金額2,400万円超から段階的に基礎控除額が減っていき、2,500万円超の方は基礎控除がゼロとなります。これらの方にとっては実質増税となります。

 また、基礎控除の10万円引き上げに伴い、配偶者控除や扶養控除、障害者控除の対象となる方の所得金額も10万円緩和されています。

チケット払い戻し辞退で減税?でも手続きは結構複雑

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、予定されていたイベントなどの多くが中止になりました。それらのチケットをすでに購入していた方もいらっしゃるでしょう。

 文部科学大臣が指定した文化芸術・スポーツのイベントのチケット代金を、指定された期日(令和2年2月1日~令和3年12月31日)内に払い戻しせずに放棄した場合、放棄した翌年の所得税の申告において、寄付金控除もしくは寄附金税額控除が受けられます。

 チケット代金が全額戻ってくるのであれば払い戻した方が金銭的には有利です。それを払い戻さないことによりイベントがキャンセルとなり苦しい思いをしている主催者に少しでも力になろうという方に対し、税制上の恩恵を受けられることにしたのです。

 したがって、必ずしもチケット代金を放棄した方がお得、というわけではないので注意してください。あくまでも、放棄したチケット代金の一部が、減税という形で還元されるという制度です。

 実際に適用を受けるためには、主催者から証明書を発行してもらう必要があるなどやや複雑なので、詳しい適用要件などにつきましては、以下の国税庁ホームページをご覧ください。

国税庁ホームページ・タックスアンサー(よくある税の質問)

ひとり親控除の創設と寡婦控除の改定

 従来は、配偶者と離婚もしくは死別した方に対し、「寡婦控除」と「寡夫控除」が設けられていました。これが、令和2年分より改正され、「ひとり親控除」と「寡婦控除」に整理されました。

 まず、婚姻歴の有無や性別にかかわらず、生計を一にする子を有する合計所得金額500万円以下の単身者について、「ひとり親控除」(控除額35万円)が創設されました。

 上記以外の寡婦については、引き続き寡婦控除として、控除額27万円を適用することとし、所得制限(合計所得金額500万円以下)が設けられました。

 従来は、女性であれば、合計所得金額が500万円を超えていても寡婦控除が受けられるケースがありましたが、令和2年分以降は、合計所得金額が500万円超の方は、ひとり親控除も寡婦控除も受けられなくなっていますので注意してください。

65万円の青色申告特別控除を受けるには電子帳簿保存もしくは電子申告が必須に!

 事業所得や不動産所得などがある方は、一定の手続きを踏んだ上で青色申告特別控除を受けることができます。青色申告特別控除は、もともと10万円と65万円の2種類がありました。65万円の方はきちんと仕訳を切って総勘定元帳や損益計算書、貸借対照表といった帳簿を作ることなどを条件に認められています。

 令和2年分より、この65万円の青色申告特別控除を受けるためには電子帳簿保存もしくはe-Taxによる電子申告が必須になりました。もしこの要件を満たさない場合は、65万円ではなく55万円の控除額になってしまいますので注意してください。

 電子帳簿保存は、今から準備しても令和2年分には間に合わないので、事実上電子申告が必要となります。

 電子申告のやり方は「マイナンバーカード方式」と「ID・パスワード方式」の2つです。

 マイナンバーカード方式ではマイナンバーカードと、ICカードリーダライタもしくはマイナンバーカードの読み取りに対応しているスマートフォンが必要です。

 ID・パスワード方式ではそれらは不要ですが、自ら税務署に出向いてID・パスワードを発行してもらう必要があります。

(参考:国税庁ホームページ・e-Tax事前準備のご案内

所得税の確定申告・納税の期限が1カ月延長になりました

 所得税の確定申告および納税は、通常は3月15日までとなっています。ただ、昨年に引き続き、新型コロナウイルスのまん延が収まっておらず、感染拡大防止の観点から、申告・納税の期日が4月15日まで延長となりました。

 筆者もつい先日用事があり税務署に行きましたが、多くの方が来場されていました。

 新型コロナウイルスがまん延していたり、緊急事態宣言が発出されていたとしても、税務署に出向いて確定申告にからむ税金の相談をしたいという方がたくさんいらっしゃいます。その点からみても、期限延長は賢明な判断だと思います。

 なお、税務署に確定申告の相談に行く場合は、入場整理券が必要となりますのでご注意ください。入場整理券は当日税務署で配布されるほか、国税庁のLINEアプリで事前に入手ができます。

 上記以外にも、令和2年分の改正点があります。下記の国税庁ホームページも参考にしていただき、誤りのないようにしてくださいね。

国税庁ホームページ・令和2年分確定申告特集