米国株式の堅調をリードするナスダック100指数

 米国株式は1月下旬の一時的下落を経て堅調を続けています。FRB(米連邦準備制度理事会)の大規模緩和を下支えに、バイデン政権による追加景気対策やワクチン接種の普及期待などで経済正常化を見込んだマネー(投資資金)が流入しています。米国市場の特徴は、幾度もの波乱を乗り越え、長期的な上昇トレンドを描いている点にあります。

 こうした視点で、S&P500指数(市場平均)の堅調を主導してきた株価指数としてナスダック総合指数やナスダック100指数の動きに注目したいと思います。

 ナスダック100指数は、ナスダック総合指数(構成銘柄:約3千社)のうち時価総額上位100社(金融を除く)で構成される時価総額加重平均指数です。コロナ禍でも比較的好調な決算や業績見通しを発表してきた大手DX(IT)関連、バイオ医薬、ニュービジネス関連を構成銘柄とする指数です。

 図表1は、過去5年にわたりナスダック100指数がS&P500指数やTOPIXよりも優勢であった市場実績を示しています。

 米国株式の堅調は、GAFAMに象徴されるナスダック主力銘柄の影響を軽視できず、常時言われてきた「高値警戒感」も、「成長証券」とも呼ばれる株式の特徴も踏まえて議論されるべきでしょう。ただ、米長期金利の上昇が加速する事態となれば、ナスダック相場もいったん調整場面を迎える可能性もあり注意は必要です。

図表1:ナスダック主力株の優勢が鮮明に

出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2016年初-2021年2月10日)

新陳代謝を繰り返しながらも成長が続いている

 2020年春に再起動した米国株式の上昇波動は、コロナ危機を起点にした大手DX関連株が主導してきた動きとも言えます。

 図表2は、ナスダック100指数の構成銘柄について「時価総額」の降順に上位10社を示した一覧です。2010年代後半に堅調となったGAFAM(アルファベット、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト)の巨人勢力にテスラが食い込んできました。

 プラットフォーマーと呼ばれる卓越した技術力、経営力、資本力、グローバル展開でGAFAMT(GAGAM+テスラ)の時価総額合計は邦貨換算で約912兆円に達し、東証1部上場企業の時価総額合計(約715兆円)を大きく凌いでいます。

 2020年代をリードする投資テーマはDX(IoT)やAIとされ、コロナ禍は経済・産業・社会のデジタル化を加速させるカタリスト(契機)となりました。

「1年前比騰落率」でみると、エヌビディア(NVDA)やペイパル・ホールディングス(PYPL)の上昇率が100%超となっており、ナスダック主力株の順位も変化する可能性があります。

 なお、ナスダック100指数の1年前比騰落率は+43.5%とS&P500指数(同+16.6%)よりもパフォーマンスが良好です(10日)。

図表2:ナスダック100指数の上位構成銘柄と騰落率

出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2021年2月10日)

ナスダック100を支える業績の安心感

 2月初旬、ナスダック主力株の2020年4Q(10-12月期)決算と業績ガイダンスが出そろいました。GAFAMTは相次いで過去最高の売上高や営業利益を計上し、業績見通しの上方修正や一段の成長に向けた事業戦略を発表しました。

 職場や家庭でデジタル化が進むことで、アマゾン、マイクロソフト、アルファベット(グーグルの持ち株会社)はクラウドコンピューティング事業を拡大させ、アップルは自動運転EV分野に進出する構えです。

 図表3は、ナスダック100指数とS&P500指数をベースにした予想EPS(12カ月先予想EPS/市場予想平均)の推移を比較したグラフです。主力株の好決算と良好な業績ガイダンス(見通し)を映し、ナスダック100指数の予想EPSは過去最高を更新しています。

 短期的な需給変動による株価変動は別にして、イノベーションの集積地である米国で強い利益成長が見込めるナスダック100指数が優勢を維持している「業績面の安心感」を窺うことができます。

図表3:ナスダック100の業績見通しは過去最高を更新

出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2016年初-2021年2月10日)

ナスダック100指数に分散投資できる投資ツールは?

 米国市場の堅調をリードするナスダックの個別株に投資することは可能ですが、個別銘柄の好調・不調の波をピンポイントで見抜くことは専門家でも至難の技です。本稿では、ナスダック100指数をまるごと買う(分散投資する)ことができるツールを各種ご紹介したいと思います。

 図表4は、ナスダック100指数に連動する投資成果を目指すインデックス・ファンドを一覧にしたものです。

 米国上場ETF(上場投資信託)の「インベスコQQQトラスト・シリーズ1」(QQQ)は、米国市場で人気が高く(愛称は「トリプルQ」)、運用純資産は約1598億ドル(約16.7兆円)に達しています。

 その他、東証上場ETFや追加型投信にもナスダック100指数に連動する投資成果を目指すファンドがあります(円からみて為替リスクはあります)。

図表4:ナスダック100指数のインデックス・ファンド

ファンドの
種類
コード ファンド名 通貨 取引
価格
:基準
価額
1年前比
騰落率:%
米国上場ETF QQQ インベスコQQQトラスト・シリーズ1 ドル 332.75 43.4%
東証上場ETF 1545 NEXT FUNDS NASDAQ-100・連動型 14,540 39.1%
東証上場ETF 2568 上場インデックスファンド米国株式(NASDAQ100)H無 2,475 ――
追加型投信 04317188 iFreeNEXT NASDAQ100インデックス 16,936 38.7%
追加型投信 0331A211 eMAXIS NASDAQ100インデックス 10,569 ――
*上記は参考情報であり特定の投資商品を推奨するものではありません。*上記した騰落率には分配金を含めていません。*1年前比騰落率が表示されていないファンドは設定が1年以内であるため。
出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2021年2月10日)

 上記のうち、東証上場ETF「NEXT FUNDS NASDAQ-100連動型上場投信」(1545)は、2020年10月28日に売買単位が10口単位から1口単位に引き下げられました(運用会社:野村アセットマネジメント)。

 同ETFの最低売買金額は10分の1となり、比較的少額からでも投資できる利便性が向上しました。直近取引価格によれば、1万5千円足らずで投資を始めることができます(10日)。

 図表5は、2013年初を起点にして1545とTOPIXの価格推移を比較したものです。今後も長期目線でナスダック100指数(円)の優勢が続くと考えています。 

図表5:東証上場ETF(1545)の価格推移をTOPIXと比較する

出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2013年初-2021年2月10日)


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