悲喜こもごもの2021年3月期第3四半期決算発表

 3月決算企業の第3四半期決算がいよいよ本格化。毎日、多くの企業の決算が発表され、その内容に、つい一喜一憂してしまう方も多いのではないでしょうか。

 新型コロナウイルスの影響で、業績が伸びた銘柄も少なくありませんが、その一方で、やはりコロナが業績に悪影響だった銘柄の決算は、軒並み厳しいものになっています。

 ANAホールディングス(9202)は、過去最大となる3,095億円の赤字を計上、JR東日本(東日本旅客鉄道、9020)もこれまた2,945億円と過去最大の赤字となっています。そして、これらの「コロナデメリット銘柄」は、株価も低迷していて、なかなか底打ちして浮上に転じることができずにいます。

そろそろ下げ止まる?コロナで暴落した銘柄は買い? 

 こんなとき、個人投資家がついやってしまいがちなのが、株価が大きく下がった銘柄に対して「いくらなんでもそろそろ下げ止まるだろう」という気持ちで買ってしまう「値惚(ぼ)れ買い」です。

 でもこの値惚れ買い、コロナデメリット銘柄に対して安易に実行するのは危険だと筆者は思います。その理由は、これらの銘柄の業績のボトム(一番下)がいつかを予測することは難しいからです。

 仮に、新型コロナのまん延があと数年続き、コロナデメリット銘柄の業績も長い間低迷し続けるとすると、赤字続きで財務体質は悪化し、最悪の場合、倒産して株が紙くずになってしまうかもしれません。それほどまでに、今までの常識で「ここから下がっても高が知れている。そろそろ買っても大丈夫」と考えることはリスクが高いと感じています。

株価のトレンドに従った行動が個人投資家には向いている

 では、筆者ならどうするかといえば、やはり株価のトレンドに忠実に従って動きます。

 新型コロナの悪影響がピークアウトしたことを個人投資家が知るよりもかなり前に、プロ投資家が最悪期を脱したと判断して買い始めることで、株価は底打ちをするはずです。

 したがって、個人投資家がコロナデメリット銘柄の底打ち反転を察知するためには、業績ではなく、株価チャートの動きをしっかりと確認しておく必要があります。

 例えば、株価が下げ止まって25日移動平均線を超えたところで買うようにして、その反発が底打ちした直後だとすれば、かなり安い価格でその株を買えることになります。

 もし、反発が下落途中の一時的なもので、再び25日移動平均線を割り込んだなら、一度売却して仕切り直しすればよいのです。

 こうすれば、比較的低リスクかつ安値圏で買うことが可能です。

 もう少し安全策を取るのであれば、業績が最悪期を脱した、つまり大赤字だった赤字額が縮小してきたことを確認できてから買う、という作戦も悪くありません。

ファンダメンタルズの明確な変化を待つのは遅い

 ただし、大赤字が黒字に転換し、コロナ前の業績に戻りつつある状況まで待ってから買うのは遅すぎます。おそらく、その頃には株価もコロナ前とそれほど変わらない水準にまで戻ってしまっているはずだからです。

 新型コロナ感染拡大が終息すれば、業績がぐんぐん伸びていくと期待できるのであれば別ですが、コロナ前の株価に戻るのがやっと、という銘柄については、できるだけ安く買うことを心掛けなければ利益に結びつきません。ですから、「大赤字→黒字転換」など、ファンダメンタルズが明らかに好転したことを確認してから買うのは得策ではありません。

 景気に業績が連動する、いわゆる「景気敏感株」もそうなのですが、業績が最悪でファンダメンタルズでは到底買えない、というときに株価はいち早く底打ちするものです。

 業績が最悪で株価も下がり続けているならば、まだ手を出すのは危険ですが、業績が最悪なのに株価が上昇トレンドに転じているのであれば、買ってみることは一つの有望な選択肢だと筆者は思っています。

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