コンピューターゲーム、ビデオゲームを使った競技を指す「eスポーツ」。海外では、ヘッジファンドやマイケル・ジョーダンなどの有名人がeスポーツに投資し、一部のゲームで多額の賞金が設定されるなど、盛り上がりを見せてきました。2020年はコロナ禍のなかで競技が制限されましたが、チャンスも見出しており、プロスポーツ選手が参戦する試合が衛星放送で放映されるなど、スポーツ系チャネルがeスポーツを積極的に放映しました。また、eスポーツのトーナメントやライブゲーム動画を配信するYouTube Gamingでは、2020年の総視聴時間が1,000億時間に達するなど、自宅で視聴する流れが加速したようです。

 在宅時間が長くなり、オンライン上のライブコンテンツに親しむ機会が増えたことは、今後のeスポーツの裾野の広がりに寄与するでしょう。Newzooの「2020 Global Esports Market Report」によると、eスポーツの視聴者数は拡大傾向で、2023年には6.46億人まで増加すると予想されています(2020年は推定4.95億人。2020年比31%増)。参加人数が拡大すれば、広告としての効果が高まるほか、有料視聴料の収入、ゲーム関連グッズの増加が期待できます。

 この環境を利用できる代表的な企業は、ゲーム開発大手のアクティビジョン・ブリザード(ATVI)エレクトロニックアーツ(EA)です。開発したゲームをeスポーツ化すると、広告料やストリーミングプラットフォーム向けの放映権を獲得できる可能性があるほか、eスポーツへの参加・視聴を通じてファンを獲得・育成し、ゲームの寿命を長引かせることができます。

 アクティビジョン・ブリザードは、2020年に、代表作の「Call of Duty」でモバイル版を含めた無料体験版や、eスポーツイベント「Call of Duty League」の展開などに注力し、同ゲームのプレーヤー数を大きく伸ばしました。2020年は2.5億人となり、2018年比で約3倍以上に拡大しました。同社は、無料体験版で裾野を広げるモデルを他のゲームでも展開し、同社の総ユーザー数を2020年の4億人から10億人に到達させる目標を掲げています。

 エレクトロニックアーツは、ライセンスで「FIFA」「MFL」のゲームを展開するなど、スポーツ系のゲームに強みがあります。デジタル化が進んでおり、2020年度はデジタルライブサービス経由の純収益が全体の半分を超えました。寄与しているのは、オリジナルのドリームチームを作ることができる「FIFA Ultimate Team」の追加コンテンツなどです。2020年は、「EA SPORTS FIFA 20 Stay and Play Cup」を立ち上げ、ヨーロッパのプロ選手が参加する試合が衛星放送等で放映されるなど注目を浴びました。

 また、ゲームのストリーミングプラットフォームを運営する企業も恩恵を受けるでしょう。代表的な上場企業は、フヤ(HUYA)です。

 フヤ(HUYA)は、ゲームのライブストリーミングプラットフォームを2014年に中国で立ち上げた企業で、同国内ではシェアトップです。直近の決算である2020年3QにおけるHuya LiveのMAU(マンスリーアクティブユーザー)は前年同期比18%増の1.73億人に拡大。有料会員数は同13%増の600万人となりました。

 中国以外のストリーミングプラットフォームでは、アマゾン・ドット・コム(AMZN)のTwitchや、冒頭で述べたアルファベット(GOOGL)のYouTube Gamingなどがありますが、人気eスポーツの放映権を巡るプラットフォーム間の競争は激化しているもようです。今のところ、人気コンテンツを開発するゲーム企業がより有利なポジションと言えるでしょう。