【今日のまとめ】

  • クラッカー・バレル・オールド・カントリー・ストアの業績は安定的に推移している
  • ジャック・イン・ザ・ボックスは2018年にフランチャイジーの契約更新がある
  • ウイング・ストップは高い成長率と既存店売上比較を誇っている
  • ゾーイズ・キッチンは向こう4年間で店舗数を倍増する計画である
  • チポトレ・メキシカン・グリルは経営改革に乗り出している

毎年恒例のコンシュマー・セクターのカンファレンスがフロリダで開催された

1月10日と11日の両日、フロリダ州オーランドでICR消費セクター・カンファレンスが開催されました。ICRはインベスター・リレーションズやPRを担当するコンサルティング会社です。

今回のカンファレンスには、専門店やレストランなどの、公開企業、ならびに未公開企業、約150社が参加しました。

今日はその中で、レストラン株に絞って、そこで議論されたディスカッションの一部を報告します。

クラッカー・バレル・オールド・カントリー・ストア

クラッカー・バレル・オールド・カントリー・ストア(ティッカーシンボル:CBRL)は1969年に創業された、主にインターステート・ハイウエーに沿って出店しているファミリー・レストランです。

同社の来店客の40%は旅行者です。長いドライブの休憩をかねて食事をする旅行者を相手にしているため、レストランに土産物屋を併設しています。

同社はリーズナブルな値段で自動車旅行している家族全員が楽しめる、アットホームでフレンドリーな雰囲気のレストランを目指しています。

旅行者は昼夜を問わずインターステート・ハイウエーを走っている関係で、クラッカー・バレル・オールド・カントリー・ストアに来店する時間も、特に決まっていません。

このため同社の売上高は朝食が24%、昼食が39%、夕食が37%と分散されています。実際、一日のうちで4時間だけ閉店し、その間に清掃します。

同社は43州で641店舗を展開しています。

来店客にはリピート客が多いです。1店舗1日当りの来店客数は950人です。1店舗で働くスタッフは約100名です。料理は店舗内のキッチンで全て調理します。

メニューは家庭料理(ホームスタイル・クッキング)をイメージしており、幅広いです。メニュー単価は低く抑えており、朝食セットは$4.99から、昼食セットは$5.99から、夕食セットは$7.99からとなっています。

1店舗当たりの年間売上高は平均460万ドルです。このうち2割が土産物屋の売上です。

同社は主にビルボード(高速道路脇の看板)に宣伝を依存しています。全部で1,600カ所のビルボードを使っています。

業績に関してですが、かねてから2017年度の営業マージンとして9%というガイダンスを出してきました。しかし予定より早く、2016年に9.6%の営業マージンを達成しました。なお同社の営業マージンは2011年の6.9%から毎年着実に拡大してきました。

既存店売上比較は10期連続でプラスでした。カジュアル・レストラン全体の平均既存店売上比較を20期連続でアウトパフォームしました。特に2015年・2016年という、レストラン業界にとってかなり厳しい年にも、楽々業界平均をアウトパフォームしました。

同社は株主への利益還元にも積極的です。2015年と2016年には通常の年間配当に加えて特別配当を出しました。

ジャック・イン・ザ・ボックス

ジャック・イン・ザ・ボックス(ティッカーシンボル:JACK)はハンバーガー・チェーンのジャック・イン・ザ・ボックス(自社店舗417、フランチャイズ1,838)と、ファースト・カジュアル・メキシカン・レストランのキュードバ(自社店舗367、フランチャイズ332)を展開しています。

同社は5年連続+20%の一株当たり利益(EPS)成長を記録しています。特に2016年は+25%成長でした。

2016年はスローなスタートでハラハラさせましたが、年後半にかけて尻上がりに業績が改善しました。

2016年中、ファースト・カジュアル・レストランは値引き競争が激しかったですが、その中でジャック・イン・ザ・ボックスの成績は良かった方だと言えると思います。

レストラン営業マージンは20%以上を確保できました。同社の場合、自社店舗よりもフランチャイズが多いので、フランチャイジーにとって魅力ある利幅を実現することがとても重要です。その点、合格と言えると思います。

同社は2016年の利益のうち3.3億ドルを自社株買戻しと配当で株主に還元しました。

2017年度の見通しとしては+15%前後のオペレーティングEPS成長を見込んでいます。

少し先の話になりますが、2018年にフランチャイジーの契約更新が控えています。2016年は良い感じで終えることが出来たので、経営陣はこの契約交渉に楽観的です。

加えて今年、キュードバの本社をコロラド州デンバーから、ジャック・イン・ザ・ボックスの本社のあるカリフォルニア州サンディエゴに移します。これに絡んで一時費用がある程度発生すると思われます。

この他、同社はメニューのリフレッシュやレストランのリニューアルにも取り組んでゆきます。

最近、行った消費者意識調査で「ジャック・イン・ザ・ボックスはハンバーガーとフレンチフライの品質で他社に劣っている」という結果が出ました。そこでこれらの品目のイメージ向上に特に力を入れる考えです。

ウイング・ストップ

ウイング・ストップ(ティッカーシンボル:WING)はチキン・ウイングだけを売っているカジュアル・レストランです。

同社はフランチャイズ方式を採用しており、店舗の98%はフランチャイジーが所有しています。

同社のフランチャイズはとりわけ投資収益率が高いことで知られています。

現在、テキサス、カリフォルニアを中心に40州で882店舗を展開しています。最終的には2,500店舗まで拡張できると考えています。

同社のメニューは極めてシンプルで、チキン・ウイングだけを扱っています。また注文を受けてから揚げるというシステムを採用しています。ソースの種類は11種類あり、顧客の好みに合わせて調理します。

このようなシステムはユニークであり、いままでに無い切り口なので、競合他社と言える企業はありません。

同社の店舗は1,700平方フィートという小さい店舗を基本としており、顧客の75%はテイクアウト注文します。同社は大都市を中心に展開しており、ターゲット顧客はミレニアル世代です。

注文の50%は電話で、50%はスマホのアプリ経由で受注します。アプリ経由の注文は電話注文よりサイズが$4近く大きいです。

最近、ウイング・ストップはアマゾン・アレクサを経由して注文することが出来るようになりました。これはレストランとしては初めてのことで、デジタル戦略に力を入れているスターバックスなどより先行していると言えます。

またウイング・ストップはフェイスブック・メッセンジャーやツイッター経由でも注文できるようになります。

過去3年間の実績をみると売上高は年率平均+16%、修正EBITDAは年率平均+20%で成長してきました。

2016年は第3四半期までに104の新しい店舗を追加しました。店舗数成長率は+18%です。同期間の既存店売上比較成長率は+3.9%でした。同社の既存店売上比較は13年連続でプラスを続けています。また過去4年間の既存店売上比較の成長率はレストラン株の中で最も高かったです。

同社は2016年7月に一株当たり$2.9の特別配当を出しました。このように大胆な株主還元が出来る背景には、同社は自社店舗を持たない、身軽な経営をしていることによります。

同社は長期の経営目標として修正EBITDA+13~15%成長、EPS年率+18~20%成長を掲げています。

ゾーイズ・キッチン

ゾーイズ・キッチン(ティッカーシンボル:ZOES)は地中海料理のファースト・カジュアル・レストランです。ハムス、ケバブなどがメニューの中心となっています。

同社はヘルシーなイメージを大切にしており、来店客の7割は女性です。同社はフレッシュな食材を店舗のキッチンで調理し、サーブします。

昼食が売上高の6割、夕食が4割を占めています。昼食の顧客単価は14ドル、夕食は16ドルです。

2016年の店舗数はテキサス、フロリダなどを中心に204店舗となっています。

2020年までに400店舗を目標としています。

同社の既存店売上比較は、27期連続でプラスを記録しています。

ゾーイズ・キッチンはデリバリー、テイクアウト、ロイヤリティー・プログラムを強化するためにデジタル戦略に力を入れています。今後はデータ・ドリブンなマーケティングへと移行してゆく計画です。

同社の売上高は下のグラフのように推移してきました。

修正EBITDAは下のグラフのように推移してきました。

中期経営計画によれば、まず向こう4年間で店舗数を2倍にする計画です。その間、既存店売上比較は+2~4%を維持する計画です。また年率+20%のEBITDA成長を見込んでいます。

チポトレ・メキシカン・グリル

チポトレ・メキシカン・グリル(ティッカーシンボル:CMG)はメキシコ料理のファースト・カジュアル・レストランです。

同社は1年ほど前に食中毒事件を起こし、来店客が激減しました。

同社は元々、フレッシュで、美味しい料理を、来店客の好みに合わせて、サーブするというコンセプトでした。しかし事業規模が大きくなるにつれて、この原点を忘れ、経営指標の達成にばかり気を取られてしまいました。

一例として新しいスタッフを採用するとき、そのテンポのスタッフ全員が候補者をインタビューするということをやっていました。このため一人を採用するのに、のべ17回も面接を繰り返すなどの非効率が生まれていたのです。

このような形式ばかりに気を取られる経営により、接客や従業員のトレーニングがおろそかになりました。

同社は食中毒事件を教訓として、原点に立ち戻り、全てをシンプル化し、従業員のトレーニングと接客への集中を最優先することにしました。

またデジタル戦略に注力し、待ち時間の短縮などの効率UPを狙う方針です。