日本で流行る「鬼滅の刃」、米国で流行る「FIREムーブメント」
2020年、日本の国内最大の流行(はや)り、ヒット作品といえば、やはり「鬼滅の刃」でしょう。2019年放送のアニメ版がじわじわと人気を高め、劇場版は史上最高の興行収入を記録しました。そして、多くのグッズがちまたにあふれています。
わが家の子ども二人も、学校や保育園でのブームがあって、一緒に動画配信サービスで視聴しましたが、見事にハマっていました(刺激的な表現があるので、視聴時は親同伴でフォローしつつ見せました)。劇場版も初日に連れていきました。
さて、劇場版では炎柱の煉獄杏寿郎(れんごく・きょうじゅろう)さんが活躍し話題となりましたが、実は米国でも「炎」に注目が集まっています。
それは「FIREムーブメント」と呼ばれるものです。
「Financial Independence, Retire Early」の略で「FIRE」というわけです。日本語にそのまま訳せば、「経済的独立の獲得と、それにもとづく早期リタイア」ということになります。
このFIREムーブメント、個人投資家目線で少しひも解いてみましょう。
自己啓発系かと思って油断したら、主張は実はとってもまとも?
早期リタイアを目指して経済的独立を若いうちから獲得しよう、というのは自己啓発系の書籍でよくあるような話です。そこに不動産投資などを混ぜ込むと怪しさは、いや増します。
実際、いくつかのFIRE指南本を読んでみると「この本に書かれていることを実行できる人はごくわずかである」とか、いきなり挑発的に書かれていて、「意識高い系」かと驚かされます。
新聞記事などでは、FIRE実現のために励まし合うサークルなどがあったり、メンターとなるような人が応援しサポートしたりする、なんて書かれていることもあります。
また、仕事の生きがいより年収を意識しろ、とか、日常生活費にかかるコストは削れるだけ削るほうがいい、なんて書かれていると、ストイック過ぎて敬遠したくなります。
しかし、「収入の最大化への努力」「支出の最小化への取り組み」「余剰資金の蓄積と投資」によって経済的安定を一般的なリタイア年齢より早く獲得しようというのは、そうおかしくない理屈です。むしろまっとうなロジックだと思います。
そして、この「投資」パートは意外にも、まっとうな主張であったりします。
FIREの軸は「長期・積み立て・分散投資」にあり
米国のFIREの指南本はいくつかあるようですが、私が手に取ってみた書籍では、長期積み立て分散投資を勧める章がありました。
そもそもFIREは、貯蓄を最大化する項目がありますので、それを定期的に継続するようアドバイスする、つまり「積み立て」が要素に入っています。
そして、ただ貯蓄するだけではなく「投資」をするように紹介されているのですが、
・インデックス投資をすれば紙くずにはならない(投資に失敗すると紙くずになるという誤解を解く)
・インデックス投資で十分な収益は確保でき、アクティブ運用の成績を上回ることがしばしばである(インデックス投資で十分な収益確保が期待できる)
・インデックス投資は、運用コストもアクティブファンドと比べて低い(高い手数料はしばしば金融機関の収益増でしかないことの指摘)
ということを紹介し、分散投資を継続することを紹介しています。
これもまた、まっとうなアドバイスです。「米国版・煉獄の炎」は、長期積立分散を推奨していたというわけです(なおFIREのメソッドはいくつかあるので全部がインデックス投資推奨とは限りません)。
これは、日本人も素直に見習ってもいいようです。
日本人は「炎柱」を目指してみよう
日本人としてはFIREムーブメントから、いくつか学べることもありそうです。
・収入増へのこだわり
・支出減へのこだわり
の2点については投資家も見習う余地があるように思います。資産形成のベースとなる「掛金の拠出」をもっと増やす方法は、この2つにより最大化を図れます。
しばしば、転職活動(少なくとも自分の年収増の可能性のリサーチ)をまったくせずに、投資するお金がないと嘆く人がいます。あるいは、節約はケチくさいことであって投資とは関係ないことと位置づけている人もいます。
実は豊かな財産を築く、1歩目は「より多く稼ぐこと」、2歩目は「節約して少しでも残すこと」です。これは私も過去のコラムで何度か指摘したことがあります。
2021年には「年収増」と「支出減」をぜひ意識してみてください。そして、毎月の積立額を増やせないか考えてみてはどうでしょうか。また、
・長期・積み立て・分散投資の活用
のコンセプトは普通にそのまま活用できます。
私の考えでも、仕事やプライベートの充実にリソースを割こうと考えれば、投資に割く時間を減らすことを考慮すべきだと思います。かつ投資効率はなるべく落とさないようにするべきです。
そう考えれば、投資の選択肢はインデックス投資に帰着すると思います。
「国内外の株だけに投資をするインデックスファンドか」「国内外の株式、債券、REIT(リート:不動産投資信託)などのアセットクラスに投資するインデックスファンドか」は検討の余地があるでしょうが、長期・積み立て・分散投資を行うことは重要です。
米国のFIREムーブメントを参考にしつつ、あなたの「炎柱」(日本版なので炎柱、と呼びたい)を作る取り組みを始めてみてはいかがでしょうか。
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