米国企業、決算発表シーズンの幕開け
米国企業は1年に4回、決算発表します。先週から2020年第4四半期の決算発表シーズンが始まりました。
今期は新型コロナウイルスの影響で前年比▲10.8%程度が予想されています。
S&P500四半期EPS成長率(前年比、ボトムアップ方式)
注目の銀行株決算
私が銀行株の決算に注目している理由は、企業向け融資や個人のクレジットカード債務の焦げ付きの状況を知ることができるからです。
その点、今回の決算では各行とも貸し付けの内容は至って健全でした。
FRB(米連邦準備制度理事会)が政策金利を0~0.25%という低い水準に据え置いている影響で、企業は安いコストで、どれだけでも借金の借り換えを行うことができています。法人融資の焦げ付きは新型コロナで大打撃を受けた一部サービス業を除き、ほとんど発生していません。
このため、例えばJPモルガン・チェース(JPM)は焦げ付きに対する引当金を取っていたのですが、それを大部分、解除しました。
個人の家計の内容も驚くほど健全です。
新型コロナで、消費者は支出を切り詰め、借金を返済し、貯蓄を進めています。普通、不況になるとクレジットカード債務の焦げ付きが多くなるのですが、今回は全然そういう兆候はありません。
むしろ、銀行各行の貸借対照表を見ると、預金がどんどん増えていることが分かります。つまり消費者はとても保守的で、手堅いお金のやりくりをしているのです。
年末に第2回目の新型コロナ景気支援策として、富裕層を除く米国民全員に600ドルの見舞金が送られました。多くの消費者はそれを貯蓄に回すとみられています。
このことからも、消費者向け融資は低水準の焦げ付きを今後も維持すると思われます。
各行の決算の結果をまとめておきます。
銘柄 (コード) |
EPS予想 | EPS結果 | 売上高予想 (ドル) |
売上高結果 (ドル) |
---|---|---|---|---|
JPモルガンチェース(JPM) | $2.65 | $3.79 | 287.4億 | 292.2億 |
ウエルズファーゴ(WFC) | 63¢ | 64¢ | 180億 | 179.3億 |
シティグループ(C) | $1.31 | $2.08 | 167.1億 | 165億 |
バンクオブアメリカ(BAC) | 54¢ | 59¢ | 207.6億 | 201億 |
トゥルーイスト(TFC) | 96¢ | $1.18 | 53.9億 | 56.5億 |
ネット企業の決算
ネットフリックス(NFLX)
ネット企業の決算では、いち早くネットフリックス(NFLX)が第4四半期の決算を発表しています。
EPS(1株当たり利益)は予想1.41ドルに対し1.19ドルでした。なお、この1.19ドルにはユーロ建て社債の為替含み損2.58億ドルのノン・キャッシュ・チャージが含まれています。ですからこの数字は「未達」ではありません。
売上高は予想66.2億ドルに対し66.4億ドル、売上高成長率は前年同期比+21.5%でした。
グローバル新規加入者は851万人でした。ガイダンスは600万人でした。第3四半期の実績は220万人でした。つまり新規加入者は順調に増えているのです。
競合他社ではYouTube、TikTok、ディスカバリー、ディズニープラス、パラマウントプラス、アップルTVプラス、HBO Max、NBCユニバーサル・ピーコックなど、たくさんの企業が動画サービスを提供、もしくは今後提供を予定しています。
とりわけ、ディズニープラスは初年度に課金サブスクライバー8,700万人という大きな成功を収めました。それにもかかわらず今回、ネットフリックスが851万人新規加入者を増やすことができたのは、同社のコンテンツの強さを物語っていると思います。
なお、第1四半期の新規加入者ガイダンスは600万人が提示されました。
ネットフリックスがよい決算を出したことで来週以降に決算発表するマイクロソフト(MSFT)、アップル(AAPL)、フェイスブック(FB)、アマゾン(AMZN)、アルファベット(GOOG)などに対しても期待が高まっています。
決算 発表日 |
銘柄 | コンセンサス EPS |
コンセンサス 売上高 (ドル) |
---|---|---|---|
1月26日(火)引け後 | マイクロソフト(MSFT) | $1.41 | 402.3億 |
1月27日(水)引け後 | アップル(AAPL) | $1.40 | 1025.6億 |
1月27日(水)引け後 | フェイスブック(FB) | $3.15 | 263.1億 |
2月2日(火)引け後 | アマゾン(AMZN) | $6.96 | 1195.8億 |
2月2日(火)引け後 | アルファベット(GOOG) | $15.95 | 527.2億 |
GAFAMは昨年9月に高値を付けた後、4カ月近く株価が横ばいを続けています。したがって休養十分とみてよいでしょう。
ネットは新型コロナの影響を受けにくいこともあり、これらの銘柄はよい決算を出しやすいポジションにあると考えられます。
決算発表、今シーズンの全体感は?
第4四半期の決算発表シーズンが始まりました。まだシーズンが始まったばかりなので、全体的によいとか悪いとか、コメントするのは時期尚早だと思います。
銀行株の決算を見る限り企業や個人のバランスシートは傷んでいません。ネット企業は全般的に無難な決算を発表すると予想されます。
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