投資信託で投資を始めてみたけれど、どんな銘柄(ファンド)を選べばよいか、基準が分からないというのは、投資初心者によくある悩みです。

 よく分からないから「人気ランキングで選んでみた」「手堅く運用コストの安いファンドを選んでみた」という方もいますが、本音は「よりよい成績のファンドを選びたい」と考えているのではないでしょうか。

 そこで今回は、運用成績の観点からファンドを選ぶときに必ず役立つ、投資信託評価のプロであるファンドアナリストの着目点を、初心者にも分かりやすく解説します。

初心者とプロでは違う、よいファンド選びの条件

 まず初めに、みなさんが考える「よいファンド」とは、どのようなファンドでしょうか。

 投資初心者の方とお話ししていると「米国株に投資するAファンドと、海外REIT(リート:不動産投資信託)に投資するBファンドはどちらがおすすめですか?」といった質問を受けることがあります。

 この質問の真意は、米国株と海外REITの「どちらがすぐに値上がりするか」ですね。つまり「ファンド選び」ではなく、「市場選び(相場の見通し)」であることに気づいている方は、意外と少ないようです。

出所:筆者作成

 プロのファンドアナリストは、全く異なる市場のファンドを横並びで比較することはしません。なぜならば、異なる市場のファンドを比較しても、その差は「市場の要因」が多くを占め、「運用力」や「運用コストの差」を測ることはできないからです。

 そこで、ファンドアナリストが考える「よいファンド」が、「同じ市場で比較して、よりよい運用成果が期待されるファンド」であることをまず押さえておきましょう。

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運用成績からよいファンドを選ぶ3つのポイント

 運用成績からファンドを選ぶポイントは3つあります。

1:同じ投資先(同じ分類)で比べる
2:運用実績(騰落率)とファンドスコアで比べる
3:個別ファンドの詳細ページで特徴や傾向を把握する

1:同じ投資先(同じ分類)で比べる

 上記のとおり、まず同じ投資先で比較しなければ、運用力や運用コストの差を測ることはできません。

 ところで、楽天証券では「楽天証券分類」という評価体系を使い投資先を細かく分けているので、より精緻に運用成績を比較することができます。これをもとに運用成績を比較するには「投信スーパーサーチ」が便利です。その活用法を具体的にご紹介します。

投信スーパーサーチでカンタン比較

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 たとえば、先進国の株式市場に広く投資するファンドを比較したい場合は、投信スーパーサーチの左側メニューの下方にある「楽天証券分類」の中から、「先進国株式(広域)-為替ヘッジなし」を選択します。

2:運用実績(騰落率)とファンドスコアで比べる

 先ほどのファンド選びのポイントの一つ、運用実績(騰落率)とファンドスコアで比べるには、まず中長期(たとえば3年)の「騰落率」で並べ替え、併せて、運用効率の高さを示す「ファンドスコア」も見ながら、上位のファンドを絞り込みます。

「騰落率」で並び替えるのは、ファンドの「運用力の優劣」や「運用コストの差」などが騰落率に全て含まれているからです。

 騰落率は、あくまでも過去の実績であり、将来も良好な成績が続くとはかぎりません。

 一方でファンドには、それぞれ運用方針や運用哲学といったものがあり、それらに一貫性や継続性があるとすれば、その優位性や有効性を全く確認しないわけにはいきません。騰落率を確認する際には、中長期的に成績上位のファンドを絞り込むと同時に、成績下位のファンドも確認しておくとよいでしょう。

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 たとえば、上の図のように騰落率3年で並び替えると、上位にはテーマ株ファンドと呼ばれるファンドがズラリと並んでいます。テーマ株とは、世間の話題や、成長が期待できるような事柄関連の業種や企業などをひとまとめに分類した株式群のことを指します。それらにまとめて投資することができるのが、テーマ株型ファンドです。

 通常、運用力に優れたファンドを探すときには、テーマ株型ファンドは、業種に偏りがあり、市場の影響が大きいため除外し、次点に並ぶ(幅広い業種に分散投資する)ファンドに注目します(例:大和住銀DC海外株式アクティブファンド)。

3:個別ファンドの詳細ページで特徴や傾向を把握する

 騰落率やファンドスコアから興味のあるファンドを見つけたら、3つめのポイントである個別ファンドの詳細ページで特徴や傾向を把握するため、確認しましょう。個別ファンドのページで確認するチェックポイントは次の3つです。

・「チャート」で分類平均と比較する
・「ファンドスコア推移」で、スコアの推移(安定性や方向)を確認する
・「リスクリターン(税引前)詳細」でリターン、リスク、トラッキングエラーを確認する

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「チャート」で分類平均と比較する

「チャート」では、オレンジのチャート(基準価額+分配金)と赤いチャート(分類平均)で比較します。中長期(3年、5年、設定来)で分類平均を大きく上回っているかを確認しながら、短期(3カ月、6カ月、1年)でも良好な成績が継続しているか確認しましょう。また、チャート下にある年月の目盛りをスライドさせて、上昇局面や下落局面に区切り、それぞれの局面で分類平均に対して、どのような値動きの差が出ているか(上昇局面では分類平均を上回り、下落局面では下回る傾向にある)など、値動きの特徴や傾向をつかむことが大切です。

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「ファンドスコア推移」で、スコアの推移(安定性や方向)を確認する

 個別ファンドページ中段にある「ファンドスコア推移」では、5年(赤いグラフ)や10年(黄緑のグラフ)といった長期のファンドスコアの推移を確認すると同時に、1年(青いグラフ)の動きにも注目しましょう。1年スコアは意外と動きやすいので、上下どちらの方向に向かっているかを確認するとよいでしょう。

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「リスクリターン(税引前)詳細」でリターン、リスク、トラッキングエラーを確認する

 個別ファンドページ下段にある「リスクリターン(税引前)詳細」では、リターンやリスクの数値を楽天証券分類の数値と比較しましょう。また、トラッキングエラー(TE)という数値が意外と重要です。

 この数値は、ファンドのリターンが分類平均からどれくらいかい離するか(分類平均から上下にどれくらい振れるか)を表す数値です。

 数値の捉え方としては、分類平均のリターンと比較して、1年間の成績がよいときと悪いときでこの数値の2倍くらい上下に振れると考えるとよいでしょう。

 トラッキングエラーの数値が高いということは分類平均に対してしっかりとアクティブな運用が行われていることを意味しています。この数値が高ければ、運用コストの差がパフォーマンスに与える影響は小さく、数値が低ければ運用コストの差が非常に重要であることを覚えておきましょう。もちろん、トラッキングエラーの数値だけで運用の優劣が決まるわけではなく、分類平均を上回るリターンが出せているかを確認することが大切です。

 今回は運用成績からファンドを選ぶ際の着目点についてご紹介しました。人気ランキングや運用コストだけでなく、運用成績からご自分で探してみると新たな発見があるかもしれません。今後のファンド選びの参考にしていただければ幸いです。