ついに400万円に到達したビットコイン

 個人投資家の中には、株式投資やFX(外国為替証拠金取引)取引の他、暗号資産(仮想通貨)に投資している方も数多くいらっしゃると思います。

 少額ではありますが、筆者も暗号資産に投資していて、2020年3月の価格急落時にちょっとだけ買ったビットコインの価格が1年足らずで6倍となりました。

 個別株への投資、特に中小型の成長株もかなり値動きが激しいですが、暗号資産の比ではありませんね。先日もビットコインが400万円を突破したと思ったら、その後1日で80万円も値下がりするなど、かなり心臓に良くない動きをしています。

 ところで、暗号資産に投資している個人投資家は多いものの、暗号資産の税金については「あまりよく知らない」という方もかなりいらっしゃると思います。

 特に2020年は、ビットコインをはじめ暗号資産が大きく値上がりしましたので、税金の取り扱いはしっかりと押さえておきたいところです。

暗号資産のもうけは「総合課税の雑所得」

 本コラムでは原則、個人で暗号資産への投資をしている場合について説明をしていきます。法人の場合はまた別の規定となっていますので、ご注意ください。

 上場株式の売却益は「分離課税の譲渡所得」で税率は20.315%、先物・オプション取引やFX取引での利益は「分離課税の雑所得」で税率は同じく20.315%です。

 実は、暗号資産の税金はこれらとは大きく扱いが異なります。個人が得た利益(所得)には所得税・住民税が課税されますが、暗号資産の売却で得た利益は「総合課税の雑所得」となります。

 総合課税ということは、給与所得や事業所得、不動産所得など他の所得と合算の上、所得が多くなればなるほど税率が高くなる「累進課税」の扱いとなります。

 上述のように、上場株式や先物・オプション、FX取引はどんなに儲(もう)けても20.315%の税率ですが、暗号資産では利益額が大きいと50%を超える税率となることもあるのです。

暗号資産の取引で損失が生じた場合は?

 2020年は、コロナ・ショック以降は暗号資産の価格が大きく上昇しましたが、逆にコロナ・ショック中は暗号資産も急落し、その時の売買で損失が生じている方もいると思います。

 暗号資産の取引により、年間トータルで損失となった場合は、残念ながらその損失を翌年以降に繰り越すことができません。

 他に総合課税の雑所得(例えば副業の収入)がある場合は、それと暗号資産の損失を相殺することはできますが、該当する方は少ないと思います。

 上場株式や先物・オプション取引であれば、損失を翌年以降3年間繰り越し、将来の利益と相殺することができるのですが、現時点で暗号資産についてはそのような恩恵はありません。

上場株式や先物・オプション取引、FX取引の損益と損益通算はできない

 そしてもう一つ、暗号資産の損益と、上場株式や先物・オプション取引、FX取引の損益とを損益通算することもできません。

 なぜなら、上場株式は「分離課税の譲渡所得」、先物・オプション・FXは「分離課税の雑所得」であり、「総合課税の雑所得」である暗号資産とは所得区分が異なるからです。

 ですから、暗号資産で利益が出て、上場株式の売買で損失が出ていても、両者を損益通算して税額を減らすことはできないのです。

 このケースであれば、上場株式の損失については確定申告により3年間繰り越すことができますが、逆に暗号資産で損失、上場株式で利益という場合は、暗号資産の損失は繰り越すことができず切り捨てとなりますから、税金の扱いとしてはかなり厳しいものになってしまいます。

まずは暗号資産の利益の金額を計算することからはじめよう

 何はともあれ、まずは暗号資産の取引で生じた利益の金額を計算することからはじめましょう。

 実は、この利益の金額の計算においても、注意すべき点がいくつかあります。それ以外にも、暗号資産で商品を購入した場合や、他の暗号資産に買い替えた場合も税金が生じることがあります。

 これらについては、次回のコラムでお伝えすることとします。

 暗号資産の税金の取り扱いについてもっと詳しく知りたい、という方は、2020年12月に国税庁から出された暗号資産に関する税務上の取扱いについて(FAQ)にも目を通してみてくださいね。