これからバイデン政権で起きること

 1月20日(水)に民主党のジョー・バイデンが第46代米大統領に就任します。

 今回の大統領就任式はコロナ禍の関係で一部省略されたものになる予定です。通常なら参加者20万人分のチケットが販売されるのですが、今年は1,000人に限定されます。

ブルーウェーブ

 1月5日(火)のジョージア州上院議員決選投票で民主党のラファエル・ワーノック氏とジョン・オソフ氏が相次いで共和党の現職上院議員を破り、当選しました。

 これで上院における議席数は民主・共和50:50となり、副大統領カマラ・ハリス氏が最後の1票を投ずることで上院も民主党が多数政党になりました。

 これで下院、上院、大統領府のすべてを民主党が支配する、いわゆるブルーウェーブになったわけです。

株式市場への影響

 これが株式市場にどう影響するか? ということですが、まずジョージア州での決選投票が民主党有利と報道された途端に米国財務省証券(米国債)が売られ、金利が上昇しました。10年債利回りは心理的に重要な1.00%を超えました。

 市中金利と株式バリュエーションはシーソーの関係にあります。つまり、一方が上ると他方は下がるのです。すると、今回のような長期金利の上昇は、株式にとって歓迎せざる展開といえます。

 ただ巨視的に見た場合、今回の上昇幅はまだ小さいので、投資戦略を大きく変更しなければいけないほどの影響はないと思います。

米国10年債利回りの推移

単位:%
出所:セントルイス連銀

 今後もし10年債利回りがズンズン上昇するようなら、株式に対する考え方も変えないといけません。つまりもっと弱気にならざるを得ないということです。

 でも、今のところは前回のレポートでお伝えした2021年の投資戦略に変更はありません。

なぜ長期金利が上がっている?

 なぜ10年債利回りは1.00%を超えたのでしょうか? それに対する一番簡単な説明は、ブルーウェーブになることで民主党が思う通りに法案を成立させやすくなり、結果として米国の財政規律が損なわれるのではないか? という懸念を投資家が抱いているからです。

 しかし、実際には米国連邦政府の予算収支を大幅に悪化させるような立法に関して、上院では今回達成された51%の過半数だけでは不足で、議事打ち切り動議が行える60%前後の得票が必要です。従って実際にはポコポコ法案が成立して政府の財政規律がむちゃくちゃになるシナリオは考えにくいです。

 株式市場の投資家は「今度こそ国民一人一人に一律2,000ドルの新型コロナ見舞金をふるまってほしい!」とか「大規模なインフラストラクチャ法案を成立させてほしい!」とか、「グリーン・ニューディールのような環境保全にかかわる大型法案を成立させてほしい!」という夢を抱き始めています。それらに関連する銘柄も人気化しています。

 しかしそれらの法案は、そうやすやすとは成立しないと思います。後で投資家が落胆させられるリスクが大きいです。

新型コロナウイルス、終息の目安は?

米国の動き

 一方、昨年の暮れに新型コロナウイルスのワクチンが相次いでEUA(緊急使用承認)を取りつけた件ですが、既にワクチンの投与は始まっています。

 残念ながら「2020年のうちに2,000万人に投与する」という計画の4分の1に相当する500万人しか、いまだワクチンを注射されていません。

 当初計画よりずっと出遅れた理由は、各州の受け入れ態勢が予算の関係で十分に整わなかったことなどによるといわれています。

 今後、注射は徐々にスピードアップしていくと考えられています。その一方で、新型コロナは現在、猛威をふるっており、一刻たりとも無駄にはできません。

欧州の動き

 欧州に目を転じると、米国に輪をかけてグズグズしたスタートになっています。

 このようなペースでは、当初言われていた「2021年の後半に集団免疫が成立するだろう」という観測は、どんどん実現可能性が遠のいてしまいます。

 それは何を意味するか? といえば、皆がワクチンを打ち、マスクを外して、普通の生活に戻れるシナリオが望み薄になるかもしれないということです。

 ひょっとすると今年中に新型コロナを終息させることはムリで、今後数年にわたって新型コロナと背中合わせで生きていくシナリオも、想定しておかなければいけないかもしれないのです。

 すべてはここ数カ月の医療関係者の頑張り、ならびに国民の協力にかかっています。

バイデン政権は暗い船出か?

 上記のような状況を考え合わせるとバイデン政権の船出は晴れ晴れしいものになるというより、うつむき加減でストイックなものにならざるを得ないと思います。

 1月6日(水)にトランプ氏支持者が選挙結果に納得できず、ワシントンDCの米議会の建物に乱入するという事件がありました。この珍事件に象徴されるように米国民は新型コロナや、それがもたらしている経済の低迷にイライラし、我慢の限界にきています。

バイデン氏の中国政策

 ところで、バイデン氏が大統領になって、まず取りかからないといけないのは中国政策をどうするか? という問題です。

 トランプ氏は米国の単独行動で一人、中国に対じするアプローチを好みましたがバイデン氏は世界の民主主義国に呼びかけ、中国の包囲網を構築していく考えだと伝えられています。

 現在、中国からの輸入品に課している関税も、当分の間、そのままにするとみられています。

 さらに、トランプ氏が打ち出した、中国軍と商売している中国企業を米国から締め出す政策に関してもバイデン氏がそれを継続するのか? それとも譲歩するのか注目されます。

 いずれにせよ、当面のフォーカスが中国であることは間違いありません。

2月相場は楽観しないほうがいい

 1月に入って、二つの新展開がありました。

 一つは民主党が上院も過半数を占め、ブルーウェーブになったということ。これは金利上昇を招くという意味で株式市場にマイナスです。次に新型コロナワクチンの接種が予定より大幅に遅れているということ。これは今年後半までに集団免疫が成立する希望を砕く、ガッカリさせられるニュースです。

 バイデン大統領の就任式の終わった後、2月相場は楽観しないほうがいいでしょう。