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株主総会における「株価を上げろ」という発言

 株主総会において、経営陣に対して「株価を上げろ」といった投資家の声があがっていることを耳にします。ほとんどの方が資産を増やすことを目的に株式投資をしていますので、その声自体、株主の意見として悪くないのですが、なにかモヤモヤしたものを感じます。なぜかというと、私は、何事も自我が強すぎるとうまくいかないという考えを持っていて、株主の「株価を上げろ」という発言の根底に「自分がもうかれば」という自我が見え隠れするからです。

 より具体的にみていきましょう。

 株価を上げるために株主が発言しそうな代表例は、次の2つでしょう。

「自社株買いをしろ」
「配当を増やせ」

 さらに踏み込んだ要求をする株主は、次のような発言をするかもしれません。

「社員の給料を減らせ」
「福利厚生費を抑えろ」
「もっと経費を減らせ」

 実際にその要求を経営陣が聞き入れ、自社株買いを行い、配当を増やし、社員の給料を減らして、福利厚生費などの経費を抑えた結果、株価が上昇したとしましょう。そのとき、要求した株主はどのような行動に出るでしょうか? おそらく、株価が上昇したところを売却して、さようならでしょう。

自分がもうかるため?会社の発展のため?

 ここでお伝えしたいのは、このような発言自体が悪いということではありません。善しあしではなく、発言の根底にある思いがどのようなものかで、器の大きさがわかるということをお伝えしたいのです。「自分がもうかれば」という立場で発するのと、「会社の発展のために」という立場で発するのとでは、同じ言葉でも意味合いは全く違ってくるのです。

 なぜ、そのような発言をしたのかと聞いたときに、「自分がもうかれば」と考えている人は、次のような答えになるでしょう。

「自社株買いをして配当を増やせば、株価が上がってもうかるから」
「従業員の給料を減らして福利厚生費を抑え、経費を削減したら利益が増え、株価が上がってもうかるから」

 会社の発展を考えている人は、次のようなものになるでしょう。

「自社株買いをして社員にストックオプションを付与したら、より前向きに社員は働くのでは?」
「株主にとって配当は楽しみなので、毎年、配当を増やしていけば長期で保有しようという人も増えるのでは?」
「場合によっては、配当を増やすよりも伸びている事業に資金を回したほうがよいかも」
「保養所を自前で抱えるのではなくて、福利厚生サービス会社を利用したほうが経費が抑えられて、社員もいろいろなサービスを利用できて良いのでは?」
「自前の保養所を手放して、それにかかっていた費用を社員の給与に回したほうが、社員も喜ぶのでは?」

 自我が悪いということではありません。人間であれば少なからずありますし、当然ながら株式投資をする上では、株価が上がって自らの資産が増えていくのが望ましいことは事実です。一方で、会社には株主の他、役員、従業員、その家族、取引先など多くの人が関わっています。自分だけではなく、より多くの人の幸せを考えることができたときに、大きな共感が生まれます。このことは、株主としての発言だけでなく、人生においても同じです。

 発言には品格が表れます。皆さんが心の中に持っている「人のために役に立ちたい」という思い。その思いを株主という立場で考えたとき、自分にとってどのようなものになるのか、この機会に考えてみてはいかがでしょうか?

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