資産形成の正解は人それぞれですが、一方で、多くの人が失敗してしまう考え方や、やり方があるようです。このシリーズでは、資産形成を始める人が陥りがちな失敗事例を取り上げ、やってはいけない行動をわかりやすく解説します。
お悩み
マンション投資は資産形成をしながら、万が一の備えになるのか?
鈴木圭さん(仮名)会社員・30歳(独身)
鈴木さんは大学から東京で暮らし、そのまま就職して日々仕事に勤しんでいました。
そんなある日、不動産投資でマンションを購入している職場の先輩から、資産形成に詳しい人の話を一度聞いてみないかと誘われました。
先輩が懇意にしている取引先の人に会うと、「ワンルームマンション投資なら、将来の資産形成と、万が一の備えもできる! 低金利の時代で、若い今のうちだからこそできる投資だよ」と強く勧められました。
実は、その先輩だけでなく、すでに他の同僚もワンルームマンション投資をしていて、深くは理解していなかったものの、みんなが投資しているなら、まずは始めてみようと契約を進めることにしました。
投資は「習うより慣れろ」とも言いますが、本当にこのまま気軽に始めてもいいのでしょうか。
マンション投資のウソホント(1)不動産投資の実態は?
NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)やiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)で投資を始める場合、まずは月々5,000円や1万円くらいの投資資金で試してみる人も多いでしょう。株式や投資信託なら、思い立ったとき簡単に始めることができますし、やめることも簡単です。また、投資した金額以上に損をすることもありませんし、投資をいったん一定期間ストップすることもできます。
一方、実物の不動産投資の場合、ほとんどの人は不動産ローンを組んで投資用不動産を購入し、その家賃収入でローン返済しながら、資産を作ろうとするものです。
当然ながら借りたお金は返済する義務があり、しかも、不動産投資をやめようとしたとき、ローンは全額返済する必要があり、不動産もすぐに売れるわけでも、購入金額で売れるわけでもありません。通常は10〜30%の損失を覚悟する必要はあるでしょう。特に新築物件は購入金額と市場価値の差が大きいので要注意といえます。
マンション投資のウソホント(2)REITにはない魅力が不動産投資にはある?
では、不動産投資には全く魅力がないのでしょうか。まずは、同じ不動産を投資対象としているREIT(リート:不動産投資信託)と比較した、実物不動産投資、特にワンルームマンション投資の代表的な魅力といえることを3つ紹介します。
マンション投資のホント1:少額の資金でも、家賃収入でローン返済しながら資産を残せる
REITに投資しようとすると手持ちのお金を使う必要があります。しかし不動産投資の場合は、不動産投資ローン(アパートローン)を利用することで、銀行からお金を借りて投資をすることができます。
借りたお金を返済するにも、不動産を賃貸に出して家賃収入を返済に回すことで、投資をすることが可能になります。ただし、家賃の金額がそのまま収入になるわけではなく、保有中の費用を差し引いて考える必要があります。
マンション投資のホント2:価格変動が少なく、安定した収入が期待できる
コロナ・ショック以降、物件によって差はあれど、REITの配当収入は比較的安定しているといえるでしょう。しかしREITの投資口価格は時価で日々変動しており、場合によっては大きく下落することもあります。
しかし、不動産投資の場合は、ある日、物件価格が急落するというよりは経年劣化や環境変化によって下落することが主な要因で、徐々に価格が下落していく傾向にあります。また家賃も周辺地域を見ればおおよその相場が分かり、賃貸なら通常2年以上は一定の収入が入ることが想定されます。
ただし、物件の購入価格と時価には違いがあることは注意が必要です。
マンション投資のホント3:節税効果を得られる場合もある
REITにかかわる税金は、特定口座を利用していれば源泉分離課税で特に申告も不要ですが、給与や他の所得と損益通算することができません。
一方、不動産投資の場合は、所得が赤字となったときは、他の所得と損益通算が適用されます。減価償却をすると、キャッシュフローは黒字のままでも帳簿上では赤字になることがあるので、結果的に節税となることもあります。
マンション投資のウソホント(3)マンション投資のよくある誤解とは?
不動産投資の中でもワンルームマンション投資は、金額が低めで比較的手が出しやすいことから、広告でもよく見かけます。しかし、メリットばかりが強調されてデメリットに気付かないまま投資している人もいるので、注意が必要です。特に要注意の事例を4つご紹介します。
マンション投資のウソ1:生命保険、死亡保険の代わりとして活用できる
ワンルームマンション投資の広告を見ると「生命保険の代わりになる」と表現されていることがあります。
不動産投資には、基本的に団体信用生命保険への加入が必要で、これによってローン返済中に投資家本人が死亡・高度障害などになった場合、ローンの残債が免除されます。結果的に、残債0のマンションが残るので、相続人はそのまま家賃収入を得ても、売却して現金化しても良いので死亡保険の代わりになるという考え方です。
しかし、生命保険のようにライフプランに合わせて掛けることはできませんし、途中でやめることも容易ではありません。死亡保険として必要な金額が残るかどうかも不明です。似たようなキャッシュフローが生まれるからといって、同じ用途に利用していいわけではありませんので、要注意です。
マンション投資のウソ2:サブリースや家賃滞納保証で家賃収入も安心
家賃滞納保証やサブリースなどの契約を不動産業者としていたとしても、契約は賃借人ごと、または定期的に更新されるため、契約内容の変更や契約解除がないとも限りません。
家賃を保証した場合に、不動産業者側にとって負担が大きいのではないのか? という目線で考えたら、そんな甘い話はないと分かるでしょう。
マンション投資のウソ3:赤字でも税還付が期待できるので問題ない
不動産投資では節税を魅力に投資する人もいますが、本当に節税の恩恵を受けることができるのは、設備を短期で経費にできる最初の数年だけの場合がほとんどです。
節税のつもりが管理費・修繕積立金、固定資産税や都市計画税など実際にかかる経費の負担のほうが大きくなり、単に投資で損をしているだけになっている場合もあります。
そのため、節税効果をメリットとして説明された場合は要注意です。しっかり数値をシミュレーションして、投資としてプラスなのかを確認しておきましょう。
マンション投資のウソ4:長期投資なので若いうちから始めるべき
ローンを組む場合は、長期契約の方が毎月の支払い負担は減るので基本的に35年ローンで提案されることが多いでしょう。ただし、不動産投資ローンを組んだ場合は、住宅ローンの枠が減ってしまう可能性があります。
もし住宅購入の可能性があるなら、慌てて不動産投資ローンを組むことはやめた方がいいでしょう。
家計の救済策
自分が理解できる投資を少しずつ長期にわたって実行する
世の中にはたくさんの資産運用の方法があります。どんな投資であってもメリットデメリットがありますが、大切なことは自分の考え方や投資目的にあった資産運用を選択することです。
逆にやってはいけないことは、きちんと投資内容を理解していないうちに大きな金額で投資を始めてしまうことです。少額の投資であれば、もし失敗しても十分取り返しも利きます。
投資は最終的には自己責任です。誰かがやっているからではなく、自分が理解できる範ちゅうで、少しずつ長期にわたって実行するものだということを忘れないようにしましょう。
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