外国株式に投資していますか?

 突然ですが、皆さんは外国の株式に投資していますか。一昔前は、外国の株式に投資するのは結構手間がかかりましたが、今では楽天証券でも数多くの外国株式に簡単に投資することができるようになりました。

 筆者の周りでも外国株式、特に米国株式に投資している方がかなり多いです。

 今回は、すっかりメジャーな存在になった外国株式の税金の取り扱いについて、最も投資している方が多いと思われる米国株式を例にとって解説したいと思います。

 なお、本コラムで説明するのは、日本国内の証券会社を通じて外国株式へ投資している場合の税金の取り扱いです。外国の証券会社と直接取引をしている場合は、本コラムに記載したものとは異なる取り扱いになりますのでご注意ください。

外国株式を売却した場合

 まず、外国株式を売却した場合です。これは国内株式と同様、20.315%の分離課税となります。

 米国株式の場合は、売却益に対して米国国内での課税はありません。日本国内分のみ、20.315%の税率で課税されます。源泉徴収ありの特定口座であれば、国内株式と同様、売却益に対し上記税率で源泉徴収がなされます。

 損失が生じた場合は他の株式などの利益と損益通算をすることができ、確定申告により残った損失を3年間繰り越すこともできます。

 なお、外国株式を売却した場合、現地通貨ベースでの損益の他、為替変動に伴う損益(為替差損益)が発生します。これについては、為替差損益も含め、円ベースでの損益を株式の売却益とすることになっています。特定口座であれば、証券会社が円ベースで損益を計算してくれます。

外国株式の配当を受け取った場合

 売却損益については国内株式と外国株式とでほぼ差はないといってよいですが、配当金については異なる点がいくつかあります。

米株利益は10%の米国源泉徴収後の残額に、日本の20.315%の源泉徴収

 米国株のケースで考えると、まず米国内で10%の源泉徴収がされます。そして源泉徴収後の残額につき、日本国内で20.315%の源泉徴収がなされます。つまり、米国と日本の両方で、約3割の源泉徴収がされ、残りが手元に残ることになります。

10%分は外国税額控除で取り戻すことも

 この源泉徴収のみで課税を終了させることもできますし、総合課税もしくは申告分離課税で確定申告をすることもできます。

 源泉徴収のみだと、外国税額である10%が取られたままですが、確定申告することで、その全部または一部を取り戻すことができます。この仕組みを「外国税額控除」とよびます。

外国株式は確定申告しても配当控除はなし

 国内株式と外国株式のもう一つの大きな違い、それは外国株式の配当金は確定申告しても配当控除を受けることができないという点です。

総合課税?それとも申告分離課税?

 上記の点を踏まえて、源泉徴収のみで終わらせるのが良いのか、総合課税で確定申告すべきなのか、はたまた申告分離課税で確定申告すべきなのかを判断する必要があります。

確定申告で外国税額控除適用なら税率は低くなる

 もし源泉徴収のみで済ますのであれば、約30%の税率となります。確定申告をして外国税額控除の適用を受けることができれば、これよりも低い税率にすることができますので、一般的には確定申告をした方が有利になると思います。

配当金の確定申告は総合課税と申告分離課税のどちらがいい?

 次に、総合課税と申告分離課税のどちらで配当金の確定申告をすべきかを検討する必要があります。

申告分離課税が有利な場合

 所得の額が大きい方であれば、申告分離課税による確定申告の方が有利になります。外国税額控除がどれだけ認められるかによりますが、申告分離課税の税率は約20%。総合課税で配当金を申告するとこれより税率が大きくなるのであれば、申告分離課税を選択すべきです。

総合課税が有利な場合

 逆に、配当金以外の所得の額が小さく、総合課税での税率が申告分離課税を選択するよりも小さくなる方は、総合課税による確定申告の方が有利になります。

 なお、住民税部分については、源泉徴収のみで済ませるのが最も有利になります。

 国内外の配当金とも、確定申告するか源泉徴収で済ませるかは受け取る配当金ごとに選択することができます。ただ、確定申告することを選択した配当金については、総合課税もしくは申告分離課税のどちらかに統一する必要があります。

 事前のシミュレーションを行い、ご自身がどの方法を選ぶのが最も税額が少なくなるのかを把握した上で確定申告するようにしましょう。