「コロナに負けない家計づくり」。できることは何でも!

深田晶恵
株式会社生活設計塾クルー取締役、ファイナンシャルプランナー

 2021年の前半は、まだまだ新型コロナウイルス感染の心配が残る「ウィズコロナ」、そして後半は、ワクチン接種が進み、緩やかに「アフターコロナ」の生活への移行が予想されます。新型コロナウイルスの感染拡大が終息に向かったとしても、短期間での経済回復は見込めないでしょうから、来年は1年を通じてコロナの影響を受ける生活になりそうです。

家計防衛はじめの一歩は2021年を前もって「知ること」

 今年2020年は、コロナ禍で収入が大幅ダウンした人が多数います。一方、支出は新型コロナ感染防止のための衛生用品購入代や、在宅ワークによる食事代と光熱費のアップなど予想外の出費があった年となりました。家計の収支が悪化した人は少なくないでしょう。

「コロナに負けない家計づくり」を実現するためには、できることは何でもやることが大事。そのためには、家計の見直しに取り組むのはもちろんのこと、税制・社会保障などの改正を知り、自分や家族に影響を及ぼすものがあれば事前に対策を講じることにチャレンジしましょう。

 私は「知ることもアクションの一つ」だと思っています。読者のみなさんに影響がありそうな「2021年のマネー10大ニュース」をピックアップしましたので、一緒に見ていきましょう。

2021年のマネー10大ニュース
1 法改正により今の会社で70歳まで働けるようになる!?
2 2021年もボーナスが大幅ダウンすると、ボーナス依存家計は致命的
3 13年間の住宅ローン減税がコロナ禍で延長に
4 住宅ローン減税対象物件が、50㎡から40㎡に要件緩和
5 2021年3月までの住宅資金贈与特例の非課税額を12月末まで延長
6 シッター代の補助が、課税から非課税に
7 児童手当、高所得層は除外となりゼロに
8 春以降、携帯電話の低価格の新料金プランが発表
9 2022年改正に先がけ、55歳以上もiDeCoを始めよ
10 パートタイマーは2022年改正に備え、社会保険に加入できる会社に転職を

1:法改正により今の会社で70歳まで働けるようになる!?

 2021年4月に「改正高年齢者雇用安定法」が施行されます。これにより事業主は従業員に対し、「70歳までの就業確保措置」が努力義務となります。

 新聞などの見出しだけを見て「70歳まで仕事と収入が得られるなら老後資金がなくても何とかなる」と考える人もいるようですが、それは大きな勘違いです。

 あくまで「努力義務」であり、企業が措置をとらなくとも罰則規定はありません。さらに賃金に対する規定も設けられていません。

 つまり、60歳、65歳以降も同じ会社で働けるかもしれませんが、現状では定年以降の給与収入は大幅にダウンします。働く場があり、収入が見込まれるのは老後に向けての大きな助けになりますが、完全リタイア後の年金生活になると、年金だけでは暮らしていけないため老後資金作りはやはり必要です。

 勤務先の再雇用制度の詳細に目を通しておくといいでしょう。

2:2021年もボーナスが大幅ダウンすると、ボーナス依存家計は致命的

 2020年は、コロナ禍で業績アップとなった一部を除いて、多くの企業で夏、冬ともに例年に比べてボーナス支給額がダウンしました。

 今年は、「コロナに負けない家計づくり」と題したセミナーを何度か行いました。その中で「ボーナス依存から脱却しましょう」と提唱すると、ドキッとした表情の参加者が数多くいたことが印象的です。

 ボーナス支出を洗い出してみると、固定資産税や自動車税など税金納付、子どもの塾の夏期講習や冬期講習費用、家電製品の買い替え、旅行費用、帰省費用、夫婦の小遣いなど多岐の項目があります。コロナ禍では、帰省費用、旅行費用はかからないかもしれませんが、それらを除いてもボーナスをあてにしている支出は50万円を超える家庭が多数です。コロナ禍で、ボーナス支給額がダウンすると、予定するボーナス支出を賄えない事態に陥るかもしれません。

 2021年の経済は、まだまだ新型コロナの影響が残りそうです。企業が経費削減など見直しを行うように、個人も支出の見直しに取り組み、「ボーナス依存」を改めるようにしましょう。

3:13年間の住宅ローン減税がコロナ禍で延長に

 12月10日に「2021年度税制改正大綱」が発表になりました。これをもとに作られる税制改正法案が年明けの国会で審議され、可決されると4月から改正法が実施されます。

 今回の大綱では、マイホーム購入者への減税延長措置が複数あります。

 まず住宅ローン控除ですが、本来「毎年末の住宅ローン残高の1%を10年間にわたり所得税や住民税から控除する」仕組みですが、現在は消費増税対策として控除期間を13年間にする特例が設けられています。この特例は2020年末までの入居が条件だったのですが、2年間延長し、2022年末までの入居となります。

 注意したいのは契約期限です。新築注文住宅は2021年9月末、マンションや中古住宅は同年11月までに契約することが条件となります。実質1年程度の延長です。

4:住宅ローン減税対象物件が、50㎡から40㎡に要件緩和

 13年間の住宅ローン控除の特例を受ける際の床面積要件がこれまでの50平方メートル以上から40平方メートル以上に緩和されます。背景には、シングルや夫婦だけの2人世帯の増加により小規模の住宅が増えていることがあります。

 高所得者が小規模物件を投資用に購入することは望ましくないとして、40平方メートル以上50平方メートル未満の物件については、年間所得1,000万円以下とする所得制限がかけられています。

5:2021年3月までの住宅資金贈与特例の非課税額を12月末まで延長

 子どもや孫への住宅資金の贈与にかかる贈与税の特例は、2021年3月末までの契約であれば、最大1,500万円まで非課税で、4月以降は1,200万円に縮小予定でした。それを住宅需要の下支えのためとして縮小せずに、最大1,500万円が継続されます。

 非課税枠が1,500万円となるのは、消費税率10%の住宅で耐震や省エネなど性能に優れた住宅で、一般住宅は1,000万円です。注意したいのは中古住宅の非課税枠です。消費税がかからない中古住宅の場合は、高性能住宅が1,000万円で、一般住宅は500万円と少なめであることを知っておきましょう。

6:シッター代の補助が、課税から非課税に

 税制改正大綱には子育て支援の減税もありました。

 現在、保護者がベビーシッターや認可外保育所の費用の一部を自治体などから助成されたお金は「雑所得」として課税対象となっています。所得税、住民税の納税額が増える問題があったために、せっかく自治体が子育て支援を目的として助成しても課税により効果が薄れてしまう問題がありました。今回の改正案が国会で可決されると、国や自治体からの助成金は非課税となります。

7:児童手当、高所得層は除外となりゼロに

 現在、中学生以下の子どもがいる世帯に支給する児童手当は、すべての世帯に支給されていますが、今回、政府と与党の合意により高年収層をカットすることが決まりました。

 実施されるのは少し先で2022年10月支給分からとなります。現在は世帯主の年収が960万円未満の場合は子ども1人当たり月1万~1万5,000円(学齢により異なる)で、年収960万円以上でも特例として1人月5,000円を受けています。

 縮小案は、世帯主の年収が960万~1,200万円未満は子ども1人月5,000円の特例支給が継続し、1,200万円以上は特例給付なしというものです。

 子育て支援と逆行するようなやや残念な改正です。

8:春以降、携帯電話の低価格の新料金プランが発表

 私を含め、ほとんどのFP(ファイナンシャルプランナー)は「家計の見直しは固定費から着手し、中でも携帯電話の料金プランの見直しはマスト」とアドバイスします。これまでの通信費の見直しは、大手キャリアの契約を格安スマホに変えるのが王道プランでしたが、2021年は大手キャリアのまま通信料の削減ができそうです。

 先日、NTTドコモやソフトバンクなどがデータ利用量20ギガバイトで月2,980円という格安新プランを発表しました。ただし、オンラインでの手続きに限定されそうです。携帯ショップでのサービスに慣れた人は、オンラインだけの手続きはハードルが高く感じるかもしれませんが、仮に携帯料金が1人月5,000円安くなったら、4人家族だと月2万円の支出減となります。
 4月から携帯電話事業に参入した楽天モバイルは、東京など大都市を中心とした自社回線エリアでは国内通話とデータの利用が無制限、それ以外の提携エリアではデータ利用量は2ギガバイトで月2,980円というプランを出しています。

 2021年は真剣に料金プランの見直しに取り組むタイミングと言えるでしょう。

9:2022年改正に先がけ、55歳以上もiDeCoを始めよ

 今年5月に年金制度改正法が成立しました。これにより、2022年5月からiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)に加入できる年齢が現在の60歳未満から65歳未満に引き上げられます。

 現状のルールでは、60歳になるまでの加入期間が10年に満たない場合、最長で65歳になるまで受け取ることができない上に、60歳以降は新たに積み立てをすることができず「掛金の節税メリット」を受けられませんでした。

 ですから、これまで私は55歳以上の人にiDeCoを積極的に勧めてきませんでしたが、改正になると55歳以上の人にもメリットがでてきます。

 来年は、2022年の改正に先がけ、50代も積極的にiDeCoを始めてみてはどうでしょうか。

10:パートタイマーは2022年改正に備え、社会保険に加入できる会社に転職を

 現在、パートタイマーを厚生年金に加入させる義務を負うのは、従業員「501人以上」という大企業のみです。

 年金制度改正法により、この基準が変わります。2022年10月からは「101人以上」の企業、2024年10月からは「51人」以上の企業も、パートタイマーを厚生年金に加入させる義務が生じます。

 厚生年金に加入して働くと、健康保険も含めて社会保険料の負担が発生しますが、将来の年金額が増えたり、傷病手当金などの社会保障の恩恵を受けるメリットもあります。パートタイマーとして社会保険加入を目指すなら、2022年の改正法施行時期を待たずに「入れてくれそうな規模の勤務先」探しを始めるといいでしょう。

深田晶恵(ふかた・あきえ)プロフィール
株式会社生活設計塾クルー取締役、ファイナンシャルプランナー
外資系電機メーカーを退職後、1996年にFP(ファイナンシャルプランナー)に転身。特定の金融商品、保険商品の販売を行わない独立系FP会社「生活設計塾クルー」を立ち上げ、個人向けのコンサルティングを行うほか、メディアや講演などでマネー情報を発信する。すぐに実行できるアドバイスをするのがモットー。
近著に『まだ間に合う!50代からの老後のお金のつくり方』(日経BP刊)『知識ゼロの私でも!日本一わかりやすいお金の教科書』(講談社刊)などがある。