信用取引について説明する際、よく、「包丁の使い方」がその例えとして使われます。
包丁は料理に欠かせない道具ですが、安全な使い方や危険性を知っていなければ怪我をしてしまいますし、犯罪などの凶器にもなり得ます。何かと危険なイメージを持たれがちな信用取引についても包丁と同様に、「信用取引そのものが悪いのではなく、そのリスクをきちんと把握していないことや利用の仕方に問題がある」というのが大体の話の流れです。そして、信用取引の危ない取引例として、ほぼトップバッターに挙がるのが「二階建て」取引になります。
二階建て取引とは、「同じ銘柄を現物と信用取引で買う」ことです。保有している現物株を信用取引の担保にしつつ、同じ銘柄をさらに信用取引で買い建てるわけですが、この二階建てによって、「レバレッジが高まる」という効果があります。
例えば、ある銘柄Aを現物株で100万円保有していたとします。そして、この銘柄Aを担保に信用取引で銘柄Aの買い建てを行うと、100万円×80%(代用有価証券の掛け目)÷30%(委託保証金率)で、約266万円の建玉を保有することができ、現物(100万円)と合わせて、銘柄Aに対して約366万円の投資額になります。レバレッジは約3.6倍となり、単純に銘柄Aを現物だけで保有(レバレッジ1倍)、もしくは信用だけ(レバレッジ約3倍)よりも高くなります。
ただし、レバレッジが高くなった分だけ、株価が下がった際のダメージも大きくなります。現物株と信用建玉の評価損が増えるだけでなく、担保として利用している現物株の評価も下がって維持率が悪化し、追証が発生しやすくなります。維持率は、保有建玉の損失が増える、もしくは、保証金額が減少することで悪化しますが、二階建ての状態で株価が下がると、評価損が増えると同時に保証金の評価も下がります。つまり、ダブルパンチで維持率が悪化する構造であることが、「リスクが高く、しない方が良い」と言われている理由です。
そのため、証券会社側では二階建て取引に対して独自の制限を設けているところが多いです。楽天証券では市場の状態やそれぞれの銘柄の値動き等から判断し、独自に『二階建て制限銘柄』というのを選定することがあります。選定された場合、建玉株数分の現物株に対して代用有価証券としての評価を行わないルールを定めています。
<参考>信用取引の基本ルール
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