「なんとなく」売買していませんか?

 突然ですが、このコラムをご覧の個人投資家の皆さんは、売買のルールをお持ちですか。筆者はこれまで数百人の個人投資家にヒアリングしてきましたが、明確な売買のルールを持っていないという方が大多数でした。

 では、多くの方はどのように売買しているかといえば、特に何もタイミングを気にせず買ったり、もしくは株価が下がったときに「そろそろ下げ止まるから買おう」というように、なんとなく買っているようです。売るときも同様で、「そろそろ株価も下がりそうだから売っておこう」「買った値段より株価が下がったからそのまま持っていよう」という感じです。

 筆者のコラムやブログ、書籍、セミナーなどをご覧いただいている方はご存じと思いますが、筆者は25日移動平均線を基準に買い時・売り時を決めています。一言で言えば、25日移動平均線を超えたら買い、割ったら売るという方法です。

ファンダメンタルズにこだわったルールは逆に危険

 筆者の周りの個人投資家を見る限り、売買のルールを明確に持っていない人は、株式投資で成功できていないことが多いです。逆に、いわゆる「億り人」と呼ばれる成功者は、例外なく売買のルールを持っています。

 なぜ売買のルールが必要かといえば、仮にルールがないと、その時々のマーケットの状況に流されてしまい、買うべき局面でないのに買ってしまったり、売るべき局面でないのに売ってしまう、もしくは売るべき局面にもかかわらず持ち続けてしまうことになるからです。その結果、利益を伸ばすことができない、含み損をかかえた塩漬け株を生じさせてしまう、という状態につながってしまいます。

 では、ルールであれば何でもよいかといえば、筆者はそうは思いません。特に個人投資家であれば、ファンダメンタルズにこだわったルールではなく、テクニカルに沿ったルールが望ましいと強く感じます。

 例えば、ファンダメンタルズによるルールの一つとして、「買った時の根拠が崩れたら売る」というものがあります。「この株は今後も増収増益が続く見込みが高い」として買うような場合です。この根拠が崩れるようなとき、具体的には企業から業績予想の下方修正が発表され、増収増益が続かないと明らかになったときに売ればよい、というものです。

 ところが、実際にこの方法でやってみると、大きな損失につながる可能性が少なくありません。企業側から増収増益が続かないと発表があったときには、すでに株価は大きく値下がりしていることが多いからです。企業側が正式に業績の下方修正を発表する前から、プロの投資家たちは業績が伸び悩むことを分かっていて、株を売り始めているのです。

 もし、25日移動平均線を割り込んだら売却、というように株価チャートを用いたテクニカルでの売買ルールを用いれば、仮にプロ投資家が業績悪化を察知して売り始めたのであれば、下落の初期段階で25日移動平均線を割り込み、早期に売却することができるのです。

 もちろん、常にこうなるわけではありませんが、筆者の経験上、業績の下方修正が出される銘柄は、それより前に株価が下がり始めていることが多いのです。

実は25日移動平均線でなくとも構わない?

 このように、筆者は25日移動平均線を用いて買い時、売り時を判断しています。でも実は、25日移動平均線を用いなければいけないというわけではありません。

 筆者は25日移動平均線を用いることでそれなりの成果は出せていますが、もしかしたら、例えば19日移動平均線や31日移動平均線の方が、より高いパフォーマンスを出せるかもしれません。パソコンに詳しい人であれば、自ら株価チャートを描画し、任意の期間の移動平均線を記すこともできるでしょう。

 でも、仮にそうであったとしても筆者はこれからも25日移動平均線を用います。それは、「どの株価チャートにも通常描かれている」からなのです。

 例えば、外出先で売買注文を出すようなときは、スマートフォンから証券会社のサイトにログインし、株価チャートを確認したのちに注文を出します。

 このとき、19日移動平均線や31日移動平均線は、当然ながら表示されていません。でも25日移動平均線は必ずといってよいほど表示されています。

 19日移動平均線や31日移動平均線を株価が超えているか、割っているかは分からないものの、25日移動平均線を株価が超えているか、割っているかはすぐに分かります。

 ですから株価チャートを一目見ただけで、買うべきか売るべきかを即座に判断することができるのです。

 最大の効果を求めるより、それなりの効果でかつ利便性の高いものを用いることにした結果が、25日移動平均線なのです。

筆者が5日移動平均線や75日移動平均線より25日移動平均線を好む理由

 日足チャートであれば、25日移動平均線だけでなく5日移動平均線や75日移動平均線も表示されていることが多いのです。実際、5日移動平均線や75日移動平均線を売買の判断に用いている方もいます。

 ただ、5日移動平均線を用いると買ったり売ったりと売買の回数が膨らみますし、余計な売買が増えることにより投資成果がダウンしてしまいます。

 75日移動平均線であれば、25日移動平均線より期間が長いので売買の回数は減ります。ただ、移動平均線を超えたり割ったりする時期が25日移動平均線よりもかなり遅れるので、その間の株価の変動により、利益の減少や損失の拡大につながるおそれがあります。

 もちろん、日足ではなく週足のチャートを用い、13週移動平均線や26週移動平均線を用いて同様のことを行っても全く構いません。しかしこの場合、上記の75日移動平均線のケースと同様、移動平均線を超えたり割ったりする時期が遅くなるため、利益の減少や損失の拡大の可能性が高まります。

 ですから筆者は、25日移動平均線を使うのがちょうどよいと考えているのです。

 売買は適当に行っている、という方や、いつ株を買ったり売ったりしたらよいのか分からない、と悩んでいる方は、筆者が実際に使っている「25日移動平均線ルール」も参考に、効果的なルールを設けて実践するように心掛けてみてください。

【新刊のお知らせ】

筆者・足立武志の最新刊の新書『お金偏差値30からの株式投資』(扶桑社)が2020年12月25日発売されます。

 この本は、楽天証券ウェブサイトや「トウシル」にて筆者が11年間、550回超にわたり連載したコラムから、株式投資で成功するための知識やエッセンスをまとめ、必要に応じて加筆修正した上で1冊にまとめたものです。

 550回ものコラムをひっくり返して読むのはさすがに大変…でもこの新書をご覧いただければ、筆者が株式投資で重要だと感じていることがきっと伝わると自信を持っています。

 11年にわたる連載を続けてこられましたのも、そしてこの本を発売することができますのも、ご覧いただいている読者の皆さんと関係者の皆さんのおかげです。この場を借りて厚く御礼申し上げます(足立武志)。