原油需要の戻りは「段階的」、トランプ米政権の追加制裁も警戒

 新型コロナワクチンに関する朗報が最初に伝わった11月9日以来、北海ブレント原油価格は23%上昇した。BOCIはワクチンの実用化による石油需要の回復を見込む半面、需要の戻りはあくまで段階的に進むとの見方。長期の原油相場を楽観しつつも、一段の価格上昇余地は当面限られる見通しを示した。一方、最近の原油相場の急伸を受け、21年、22年の平均価格予想を1バレル=49米ドル(修正前45米ドル)、50米ドル(同48米ドル)に上方修正。石油セクターに対する強気のレーティングを維持し、個別ではシノペック(H株00386、A株600028)を短期的なトップピック銘柄としている。

 ワクチンの接種開始は追い風だが、石油需要は段階的に回復する見通しであり、IEA(国際エネルギー機関)は21年下期まで、需要刺激効果は期待しにくいとの見方。IATA(国際航空運送協会)は航空旅客需要がコロナ前の水準に戻るのは24年になるとの予測を示している。また、リモートワークやオンライン会議の普及を受け、石油需要の一部は消失し、この先も戻らない可能性がある。

「OPECプラス」(石油輸出国機構の加盟国と非加盟産油国で構成)は4日間にわたる協議の末、減産計画の緩和に合意。21年1月に日量50万バレル増やし、1カ月ごとに検討を加えつつ段階的に200万バレル増やす方針を決めた。市場はOPECプラスの減産緩和方針を歓迎しているが、一部産油国の前のめりの増産志向も明らかになった。

 最近の原油高が米シェールオイル事業者の投資を後押しすれば、米国の原油日産量は1,100万バレルで底打ちし、再び上向く可能性がある。また、米国に対して2カ月以内の制裁停止を求めているイランの動向が、原油供給サイドの大きな変動要因。ただ、BOCIは基本シナリオに、イランによる増産の可能性を織り込んでいない。

 一方、輸入時期のずれにより、最近の原油高は短期的に石油精製マージンの拡大を後押しするとみられ、この点は中国の石油精製最大手であるシノペックに有利。世界的なパンデミックに伴うサプライチェーンの分断で、結果的に受け皿となった中国の輸出は伸びており、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)といった川下の石化製品需要は旺盛。実際、最近では主要石化製品と原油とのスプレッド(価格差)が急拡大している。

 トランプ政権が中国人民解放軍との関係を理由に中国海洋石油集団をブラックリストに載せ、傘下のCNOOC(00883)の株価は急落。現時点で禁止されたのは米国人投資家による証券投資だけだが、追加制裁がCNOOCの海外事業に影響する可能性もあり、BOCIは中国石油メジャー3社の中で、CNOOCの投資優先順位を最下位としている。

 メジャー3社のトップピックはシノペック。石油生産部門の赤字縮小見通しと、精製部門の短期的な利益率の改善見通しが背景。ただ、残る2社のペトロチャイナ(H株00857、A株601857)とCNOOCの株価の先行きに対しても、強気見通しを付与している。