※モトリーフール米国本社、2020年11月19日投稿記事より

 今年はいろいろな面で異例づくしとなっていますが、バークシャー・ハサウェイ(NYSE:BRK-A)(NYSE:BRK-B)の最高経営責任者(CEO)で稀代の投資家でもあるウォーレン・バフェット氏にとっても異例の年となっています。

 過去55年にわたり、一時的感情に左右されないバフェット氏の長期的な投資スタンスは偉大な成功を収めています。

 同期間のS&P500指数の年率リターン(配当を含む複利)が10%なのに対し、バークシャーは2倍以上の20.3%であり、株価は2019年12月31日までの55年間で2,700,000%以上上昇しています。

 ところが、そのバフェット氏も2020年はこれまでと大きく異なる動きを見せています。

保有株式を大量に売却

 バークシャーが過去に米証券取引委員会(SEC)に提出したフォーム13F(保有株式に関する四半期報告書)では、新規購入、買い増し、ポジション削減、全売却といった保有株式の売買についての記載はそれほど多くありませんでした。

 ところが、9月30日時点のフォーム13Fを見ると、これまでの流れから大きく逸脱し、今年に入って既に35銘柄を売却(一部または全部)しています。

 過去9カ月間に全売却したのは以下の10銘柄です。

アメリカン航空グループ

サウスウエスト航空

デルタ航空

ユナイテッド航空

オキシデンタル・ペトロリアム

フィリップス66

ゴールドマン・サックス

トラベラーズ

レストラン・ブランズ・インターナショナル

コストコ・ホールセール

 このうちコストコだけが第3四半期に売却され、残りの9銘柄は全て上半期中に売却されました。

 また、以下の25銘柄は今年に入ってポジションが引き下げられ、その大部分は上半期に集中して売却されました。

アップル

チャーター・コミュニケーションズ

バリック・ゴールド

M&Tバンク

ウェルズ・ファーゴ

PNCファイナンシャル・サービシズ・グループ

JPモルガン・チェース

マスターカード

ビザ

バンク・オブ・ニューヨーク・メロン

シンクロニー・ファイナンシャル

USバンコープ

シリウスXMホールディングス

アマゾン・ドット・コム

ベリサイン

ゼネラル・モーターズ

バイオジェン

ダビータ

テバ・ファーマシューティカル・インダストリーズ

アクサルタ・コーティング・システムズ

サンコー・エナジー

リバティ・ラテンアメリカ

リバティ・グローバル(クラスA)

リバティ・シリウスXMグループ(クラスA)

リバティ・シリウスXMグループ(クラスC)

 このうち第3四半期に売却されたのはアップルとバリック・ゴールドで、特に後者は直前の第2四半期に新たに追加されたばかりの銘柄だったために売却されたのは意外でした。

コームズ氏とウェシュラー氏によって構成されたポートフォリオ

 こうした予想外の展開の説明として、バフェット氏が自身の後継者候補とされるトッド・コームズ氏とテッド・ウェシュラー氏に日々の投資判断を任せるようになっているということが考えられます。

 バフェット氏は明言していませんが、コームズ氏とウェシュラー氏が采配を振り始めていることを示す兆候は数多くあります。

 例えば、バフェット氏は以前のインタビューで、バークシャーが保有株式の売却に消極的なわけではないと表明しており、実際に保有企業が見込み薄と判断した場合、同氏は数四半期以内に保有株を全売却しています。

 ところが今年の動きを見ると、売却した10以上の銘柄で売却比率は9%未満と控えめな水準にとどまり、バフェット氏のいつものやり方とは異なるように見えます。

 一方で、バリック・ゴールドに関しては持ち分を40%以上減らしました。

 元々バフェット氏は金投資に対して批判的であったため、バリック・ゴールド株の購入は同氏ではなく、コームズ氏とウェシュラー氏の判断ではないかとみられていました。

 しかし、バフェット氏はやはり金を好きになれず、購入して数カ月後に40%以上を売ってしまったというのが実情かもしれません。

 さらに、バフェット氏が過去10年にわたって避けてきた大手製薬会社4社を第3四半期に新たに購入したことも、コームズ氏とウェシュラー氏の判断と考えられます。

 極め付きは今年9月、クラウドデータ管理会社のスノーフレーク(NYSE:SNOW)株を新規株式公開(IPO)前に610万株超購入したことです。

 失礼かもしれませんが、バフェット氏はスノーフレークの事業モデルを正確に説明できない可能性もあります。

 バフェット氏はコームズ氏とウェシュラー氏の投資を承認したでしょうが、バークシャー・ハサウェイのポートフォリオがバフェット氏によるものではなくなってきていることは明らかです。

転載元:モトリーフール

 本資料は、掲載されているいかなる銘柄についても、その売買に関する勧誘を意図して作成したものではありません。本資料に掲載されているアナリストの見解は、各投資家の状況、目標、あるいはニーズを考慮したものではなく、また特定の投資家に対し特定の銘柄、投資戦略を勧めるものではありません。また掲載されている投資戦略は、すべての投資家に適合するとは限りません。銘柄の選択、売買、売買価格等の投資の最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようにお願いいたします。本資料で提供されている情報については、当社が情報の完全性、確実性を保証するものではありません。本資料にてバリュエーション、レーティング、推奨の根拠、リスクなどが言及されている場合、それらについて十分ご検討ください。また、過去のパフォーマンスは、将来における結果を示唆するものではありません。アナリストの見解や評価、予測は本資料作成時点での判断であり、予告なしに変更されることがあります。当社は、本資料に掲載されている銘柄について自己勘定取引を行ったことがあるか、今後行う場合があり得ます。また、引受人、アドバイザー、資金の貸手等となる場合があり得ます。当社の親・子・関係会社は本資料に掲載されている銘柄について取引を行ったことがあるか、今後取引を行う場合があり得ます。掲載されているレポート等は、アナリストが独自に銘柄等を選択し作成したものであり、対象会社から対価を得て、又は取引を獲得し若しくは維持するために作成するものではありません。この資料の著作権は楽天証券に帰属しており、事前の承諾なく本資料の全部または一部を引用、複製、転送などにより使用することを禁じます。本資料の記載内容に関するご質間・ご照会等には一切お答えいたしかねますので予めご了承お願いいたします。